ブログ/ BLOG

  1. ホーム
  2. ブログ
  3. 法律顧問契約
  4. 2018年STORIA法律事務所ブログランキングベスト10 | STORIA法律事務所

法律顧問契約 人工知能(AI)、ビッグデータ法務 ベンチャー企業法務 コンテンツビジネス法務(知的財産権、著作権) IT企業法務

2018年STORIA法律事務所ブログランキングベスト10

杉浦健二

STORIA法律事務所が2018年に投稿したブログを閲覧数(PV数)ベスト10で振り返ります。
※集計期間は2018年1月1日~同年12月26日

2018年に投稿したブログを振り返ると、AI、仮想通貨、利用規約、資金決済法などのキーワードが浮かび上がり、これらは2018年の世相を反映するキーワードともいえます。

なお過去のランキングはこちらです。
2017年STORIAブログベスト10
2016年STORIAブログベスト10

第10位 「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」に学ぶAI開発契約の8つのポイント

執筆者の柿沼弁護士は、経済産業省が2018年6月に策定したAI・データの利用に関する契約ガイドラインのAI編の検討委員・作業部会委員を務めており、本稿は同ガイドラインをもとにAI開発契約の8つのポイントを整理したものです。

柿沼弁護士はAI関連企業の顧問先支援に力を入れており、2018年12月に開催したAIビジネスの最前線からお送りする「AIと契約・知財・法律」セミナーでは100名以上の方にご参加いただきました。

「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」に学ぶAI開発契約の8つのポイント

第9位 Zaifが70億円をハッキングされる前日に行っていた利用規約の変更は有効なのか

Zaifウェブサイトより https://zaif.jp/

2018年9月、不正アクセスにより仮想通貨取引所Zaif(運営:テックビューロ株式会社)から約70億円の仮想通貨が外部流出した事件が発生しましたが、Zaifは事件発生の前日に利用規約を改訂していました。利用規約の改定が有効になるためには適切な周知期間が必要であり、本事件には前日に変更される前の利用規約が適用される可能性が高いことについて触れました。

Zaifが70億円をハッキングされる前日に行っていた利用規約の変更は有効なのか

第8位 フリーランスに最低報酬額導入との政府方針。フリーランスと発注会社側、それぞれの注意点とは


2018年2月20日の日経新聞1面で、政府はフリーランスに支払われる報酬額に業務ごとに最低基準額を設ける検討に入ったとの記事が掲載されました。

フリーランス(個人事業主)は労働法規による保護の対象外である代わりに下請法で保護されているところ、多種多様であるフリーランスの業務に「業務ごとの最低額」を定めるのは相当にデリケートかつ困難な作業だと思われます。

また最低報酬額が導入されれば、相場より安い報酬額で仕事を受けるスタイルだったフリーランスは今後は低価格を強みとできず、かえって仕事を受注しづらくなるかもしれない一方で、発注する企業側に対しては「最低報酬額さえ払っていればよい」という免罪符を与えることにもなりかねず、最低報酬額が「委託料の相場価格」として独り歩きするリスクもある点等に言及しました。

フリーランスに最低報酬額導入との政府方針。フリーランスと発注会社側、それぞれの注意点とは

第7位 進化する機械学習パラダイス ~改正著作権法が日本のAI開発をさらに加速する~

日本の現行著作権法には47条の7という世界的に見ても希な条文があり、AI開発目的であれば、一定限度で著作権者の許諾なく著作物を利用できるという機械学習にとってはある意味パラダイス的な環境でした。

改正著作権法が2019年1月1日より施行され、この現行47条の7は新法では30条の4第2号として整理されます。今回の著作権法改正により、現行法では著作権侵害であった以下の行為
・自らモデル生成を行うのではなく、モデル生成を行う他人のために学習用データセットを作成して不特定多数の第三者に販売したりWEB上で公開する行為
・自らモデル生成をするために学習用データセットを作成し、これを用いてモデルを生成した事業者が、使用済みの当該学習用データセットを不特定多数の第三者に販売したりWEB上で無償公開する行為
・特定の事業者で構成されるコンソーシアム内で、学習用データセットを共有する行為
は、新30条の4第2号ではいずれも適法となります。
著作権法新30条の4第2号により、日本のAI開発はさらに加速することが期待されています。

進化する機械学習パラダイス ~改正著作権法が日本のAI開発をさらに加速する~

第6位 ファーストサーバ社のレンタルサーバ「Zenlogic」で大規模障害。利用者は返金や損害賠償を請求できるのか

https://zenlogic.jp/news/status/syogai/

ファーストサーバ社が提供するレンタルサーバーサービス「Zenlogic」で、2018年6月19日より大規模障害が発生した件について、Zonlogic利用者は損害賠償や返金を請求できるのかを検討しました。
サービス提供側にとっては、利用者の損害賠償請求等を制限する免責規定を定めておく重要性が浮き彫りになった事例であり、利用者側にとっては、サービス導入にあたって事前にSLAや免責規定を確認しておくことが肝要であるといえます。

ファーストサーバ社のレンタルサーバ「Zenlogic」で大規模障害。利用者は返金や損害賠償を請求できるのか

第5位 渋谷の牛タン屋で横にいたカップルとAI開発における演繹と帰納について

AI開発契約の締結に際して、ベンダあるいはユーザから非常に多く受ける質問として「AI開発契約においては『性能保証』『検収』『瑕疵担保』についてはどのように定めればいいのでしょうか。」というものがあります。
このような開発手法の差がら生じるベンダとユーザの溝を埋めるためには、
1 AI開発の特性をユーザとベンダが理解すること
2 開発プロセス及び契約の分割
3 契約内容の工夫
がそれぞれ必要であると考えることについて解説する内容でした。
それにしてもこの牛タンは美味そうです。

渋谷の牛タン屋で横にいたカップルとAI開発における演繹と帰納について

第4位 Amazon EchoのAlexaは我々の会話をどこまで聞いているのか怖くなったのでAlexa利用規約を確認してみた

AIアシスタント・アレクサ(Alexa)を搭載するAmazon Echo。「アレクサ」と話しかけるだけで、音楽の再生、天気やニュースの読み上げ、アラームのセット、Kindle本の読み上げなどが簡単に音声操作できます。
2018年3月、柿沼家に初めてのAmazon Echoが到着したところ、セットアップしてすぐ、まだ未調整だったスピーカーの反応を見て、子どもが「アレクサってバカだね~」的なことを言いました。
すると、それまで音楽を奏でていたAlexaが突然音楽を止めて大声で「あなたが私を嫌いでも私はあなたを好きですよ」と言い放ち、家族一同凍り付いて顔を見合わせました。
この事件をきっかけに、Alexaはどこまでうちの会話を聞いて、何に使っているのだろうという命題を調査した記事。
Alexaは家庭内の全ての会話を聞いてはいるが、一部しか録音・クラウドへの送信をしていないこと。当該音声入力内容は、Alexaの性能向上目的及びAmazonの各種事業目的のために利用されていることを紹介しました。

Amazon EchoのAlexaは我々の会話をどこまで聞いているのか怖くなったのでAlexa利用規約を確認してみた

第3位 メルカリ事例で学ぶ、CtoCサービスにおける資金決済法の罠

2017年12月、メルカリは取引ルールを変更し、それまで出品者は販売で得られた売上金を1年間は引き出さずにメルカリに預けられていたところ、新ルールではこの預かり期間を90日間に短縮しました(後に180日間に変更)。また得られた売上金を別の商品購入のために直接使用できなくなりました(商品を購入できるポイントと交換したうえで、ポイントで商品を購入する手順に変更)。
このような変更が行われた理由としては
・資金決済法上の「資金移動業」に該当するリスクを回避しようとしたこと
・出資法上の「預り金」に該当するリスクを回避しようとしたこと
が考えられます。

CtoCウェブサービスでは、利用者同士の決済手段を実装する際に、いかに資金移動業に該当しないような仕組みとするか(その解決手段として、収納代行サービスとしたり前払式支払手段としたりすること)について言及しました。
2018年11月30日に犯罪収益移転防止法(犯収法)施行規則が改正され、ネット上ですべての手続きを完結させたい資金移動業等にとってネックとなっていた転送不要郵便による本人確認が今後はネットで完結できるようになる外部リンク)など、2019年もFinTech企業にはますます追い風が吹くことが予想されます。

メルカリ事例で学ぶ、CtoCサービスにおける資金決済法の罠

第2位 コインチェックの「当社は賠償責任を一切負わない」と定める利用規約は有効なのか

コインチェックウェブサイトより https://coincheck.com/ja/

2018年初頭、コインチェック社から約580億円分の仮想通貨NEM(ネム)が外部に不正送信される事故が発生。ウェブサイトの利用規約に「当社は賠償責任を一切負いません」と書かれていても有効なのかについて、コインチェックの利用規約を例に検討した投稿でした。
コインチェックショックに続き、本投稿第9位のZaifショックもあり、仮想通貨元年になると目論まれた2018年の仮想通貨ビジネスは、当初予想された盛り上がりを大きく下回る結果となっています。

仮想通貨に用いられているブロックチェーン技術は、世の中を大きく変えられる可能性がある技術ですが、一連の仮想通貨ショックにより、ブロックチェーン自体に対する信用性まで下がることが懸念されます。仮想通貨のみならず資金移動業を含めた顧客の資産を扱うサービスにおいては、セキュリティ体制の構築は極めて重要な責務であることは今後も変わらないものと考えます(セキュリティ次第でサービス自体が一発で吹き飛ぶことは一連の事件により証明されています)。

コインチェックの「当社は賠償責任を一切負わない」と定める利用規約は有効なのか

■第1位 なぜNTT東日本は旭川医科大学に逆転勝訴できたのか。判決文から分かる教訓

2018年の第1位は、ITに関わる方々が固唾を飲んで見守っていた「旭川医科大学・NTT東日本事件」判決についての解説記事でした。当初、地裁判決(旭川地方裁判所平成28年3月29日判決)は、ユーザ・ベンダの過失割合を2:8(ユーザ:ベンダ)としましたが、高裁判決(札幌高等裁判所平成29年8月31日判決)は一転、過失割合を10:0(ユーザ:ベンダ)と判断しました。このような「大逆転」劇が生じたのは何が原因だったのか、大きなポイントの1つとして「ベンダのプロジェクトマネジメント義務違反」の認定が旭川地裁と札幌高裁で大きく分かれたという点である点について解説しました。

なぜNTT東日本は旭川医科大学に逆転勝訴できたのか。判決文から分かる教訓

以上より2018年のランキングベスト10では、AIが4本、利用規約が3本、仮想通貨が2本ランクインするなど、当事務所のスタンスが色濃く反映された内容となりました。
2018年12月には新たな弁護士も加わり、弁護士7名体制となったSTORIA法律事務所(東京・神戸)を、2019年もどうぞよろしくお願いいたします(弁護士杉浦健二

・ブログ更新その他の最新情報はツイッターやFBページでお届けしております。