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ヤフー知恵袋の法律相談は本当に嘘すぎるのであった。

杉浦健二 杉浦健二

「Yahoo知恵袋の法律情報が嘘すぎる」とのツイートが話題である。
本当だろうか?調べてみる。

■Yahoo知恵袋の法律情報は本当に嘘すぎるのか?

ピックアップしたYahoo知恵袋の質問はこちら
「法律、消費者問題>法律相談カテゴリ」である。


http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14156228584

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14156228584


質問者自身も認めるとおり言葉足らずな面はあるが、質問文を素直に読むと
・父がAさんの連帯保証人になった。
・父が連帯保証人になったときの「会社=債権者」は、全ての債権を「他社=新債権者」に譲渡した。
という意味であろう。図で表すと以下のとおりとなる。
ブログ記事 連帯保証ブログ記事 連帯保証1-2

債権者(会社)は他社に債権を譲渡したので、新たな債権者は他社となる。
債権が譲渡された場合でも、保証人であった父は変わらず保証人のままである。債権を譲渡したら保証人を抜けられるとなると、そんな債権誰も買ってくれないからだ(保証債務の随伴性という)。
そして債権譲渡が有効にされたとしても、新債権者が「今後は自分に支払え」と主張するためには、譲渡人たる旧債権者から主債務者宛に譲渡通知をしなければならない。*
本件では会社(旧債権者)からA(主債務者)宛に譲渡通知がなされたのかどうか不明であるが、この譲渡通知がなされているのならば父(保証人)は他社(新債権者)に支払わなければならなくなる(以下のとおり)

 

このYahoo知恵袋の質問に対する、ベストアンサーに選ばれた回答は以下のとおり。


http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14156228584

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14156228584

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14156228584


「連帯保証人はAさん又は会社の債務について連帯して責任を負うわけであり、会社の有する債権については関係ありません。」との回答は
債権譲渡自体を無効と捉えている可能性がある点に加えて、譲渡通知の有無について全く検討していない。主債務者に通知がなされている場合、父(保証人)は他社(新債権者)に支払わなければならないのでベストアンサーは明らかに間違いである。
質問者さんは「悩みが深かったので、大変安心いたしました」と誤解して安心している。。まずい。まず過ぎる。
Yahoo知恵袋の法律情報が嘘すぎるというのは本当であった。

■そもそもYahoo知恵袋の回答を「根拠」扱いするな

うちの事務所に相談に来られる方のなかには、ネットで下調べをした上でお越しになる方も多い。ただ、調べたのが官公庁サイトのデータや弁護士などの有資格者のサイトならまだしも、持ってきたのがヤフー知恵袋の印刷だった場合は、、、となる。

ヤフー知恵袋のみならず、回答者の本名を示さないQ&Aサイトの回答例には、でたらめなものも多いのが現状だ。回答自体が明らかに間違っているものもあるが、どちらかというと質問内容が舌足らずなせいで、内容を勘違いして回答しているのでは、というものも見られる(今回紹介した知恵袋の回答もその可能性が高い)。

ここでは間違った回答をした方を非難するつもりは毛頭ない。問題は、回答を利用する側にある。そもそも匿名の回答者が無料で行う回答に、信ぴょう性を求めること自体が間違っていると思うのだ。

■せめて一次情報まで遡ろう

どうせネットで調べるなら,検索でヒットしたものを鵜呑みにするのではなく、条文や判例、引用文献であれば引用元文献などの「一次情報」まで必ず遡るようにする。
そしてQ&Aサイトであれば、「回答者の意見」と「回答者が回答の根拠とした情報」を分ける。根拠がなく回答者の意見しか書かれていないものは価値ゼロである。

ちなみに一次情報まで遡るのは当然ながら膨大な時間がかかる。
特に裁判例の検索やレアな書籍などは、情報を得ること自体に高額な費用が必要だったりする。
弁護士などの専門家に相談するというのは,これらの調査時間や高額な費用を大幅にカットできるものだと理解すればよいと思う。

■専門家に相談するのは、お金で時間と知識を買うこと

有料で専門家に相談するってのは、要は「お金で時間を買う」「お金で正確な知識を買う」ことと同義である。丸一日調べて結局よく分からないことが,専門家なら10分で正確な答えを出せるケースも多い。

「俺は時間が余りまくってるからいくらでも調べられる」という人は自分で調べまくればよい。ただその調べた結果が正しいかは誰にもわからない。

自分が困ったときに確たる情報を提供してくれる各分野の専門家を押さえておくことは、人生の限られた時間をより有意義に過ごすために外せない秘訣だと思うのであった。
弁護士杉浦健二

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*主債務者宛に通知すれば、保証人への通知はなくても保証人に対抗可能(大判大6.7.2)
*主債務者に通知しないで保証人に通知しただけでは主たる債務者に対してはもちろん、保証人に対しても譲渡を対抗できない(大判大9.3.29)