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CtoCサービスに激震。収納代行サービスが資金移動業として規制対象になる可能性(追記あり)

杉浦健二 杉浦健二

シェアリングエコノミーやフリマアプリ、クラウドファンディングや投げ銭ビジネスなど、多くのCtoCサービスにとってビジネスモデルの転換を迫られる可能性がある議論が、いま金融審議会において進められています。

2019年5月29日の金融審議会「金融制度スタディ・グループ」において議論された「『決済』法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫ (案)」において、現在多くのCtoCサービスが採用している収納代行スキームについて「資金移動業として規制の対象とすることが適当であると考えられる」との一文が含まれていました。

(外部リンク)金融庁資料にシェアリングエコノミー業界激震の文字
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/060700426

収納代行スキームが資金移動業として規制の対象になれば、シェアリングエコノミーをはじめとする多くのCtoCサービスはビジネスの継続が困難になる可能性が生じます。
そもそも収納代行スキームとは何か、収納代行スキームが資金移動業の規制対象になると具体的にどのような影響が生じるのかを整理します。

収納代行スキームとは何か

収納代行スキームとは、商品やサービスの対価を支払う際に、サービス事業者が買主から売主の代わって代金を受領するサービスのことで、フリマアプリやクラウドソーシングサービス、投げ銭サービスなど多くのウェブサービスで採用されているほか、公共料金のコンビニ払いなどもこれにあたります。

収納代行スキームの具体的な流れは
①売主がサービス事業者に対して代金の代理受領権限を付与
②買主がサービス事業者に代金を支払った時点で売買契約が成立
③代理受領した代金から手数料を控除して売主に支払う、というもの。

資金決済法では、一般事業者が顧客から依頼を受けて資金を移動するサービス(為替取引)を行う場合、資金移動業者として登録を要する旨を定めています(資金決済法第37条、第2条2項3項)。

収納代行スキームが為替取引にあたるか否かは資金決済法の立法当初から議論があったものの、買主が事業者に代金を支払った時点で売買契約等が成立する限りは、買主に二重払いのリスクが生じることはない等の理由で、規制を及ぼすかどうかは将来の課題とすることが適当とされました(金融審議会金融分科会第二部会報告『資金決済に関する制度整備について』2頁参照)。

以上のような経緯から、現在のところ収納代行スキームは資金移動業登録を要せずに行える状況にあり、シェアリングエコノミーに代表される多くのCtoCサービスにおいて大いに活用されている状況にあります。

収納代行に関するビジネスモデルについては以下の過去記事もご覧ください。
(過去記事)メルカリ事例で学ぶ、CtoCサービスにおける資金決済法の罠
(過去記事)SHOWROOMに学ぶ、資金決済法に抵触しない投げ銭サービスの作り方

CtoCの収納代行スキームが、資金移動業の規制対象となる可能性

ところが今回の「≪基本的な考え方≫ (案)」では、収納代行サービスについて以下のような指摘がされました。

「収納代行」が資金決済法上の資金移動業であることを明らかにした上で、以下の観点を踏まえつつ、必要な場合については規制を及ぼすことが考えられる。

● 例えば、大手コンビニエンス・ストアによる収納代行や、大手運送業者による代金引換など、①債権者が事業者であり、かつ、②支払人が「収納代行」業者に支払をした時点で債務の弁済が終了し、その後の「収納代行」業者の信用リスクは債権者である事業者が負担する(支払人に二重支払の危険がない)ことが確保されている場合には、既に一定の利用者保護は図られていると考えられる。加えて、こうしたサービスにはこれまで社会的・経済的に重大な被害は発生していないと考えられる。
こうしたことも踏まえれば、現時点では、このような、利用者保護の観点から適切な対応が図られているといえる「収納代行」については、これまでと同様の扱いとすることが適当であると考えられる。

他方、債権者が一般消費者である場合については、一般消費者が「収納代行」業者の信用リスクを負担することとなる。そのため、こうした「収納代行」については、利用者保護等の観点から、資金移動業として規制の対象とすることが適当であると考えられる。ただし、この場合においても、提供されている個々のサービスの実態を踏まえ、きめ細かな検討をすることが重要である。

(『決済』法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫ (案)14頁

すなわち、収納代行スキームを利用するサービスのうち、BtoC取引(商品の売主等提供者が事業者である場合)はこれまでと同様の扱いとするが、CtoC取引(商品の売主等提供者が一般消費者である場合)は資金移動業として規制の対象にするとの記載が認められます。

資金移動業の規制対象となれば、サービス事業者には、送金サービスで受領した金額の100%以上の額を供託させる資産保全義務等が課されるほか(法43条2項3項)、利用者の本人確認義務も生じます(犯罪収益移転防止法4条)。
これらの要件は満たすことは簡単ではなく、現に2019年4月末時点における資金移動業者数は63に過ぎません(金融庁・資金移動業者登録一覧)。

国内ベンチャーの衰退につながりかねない危険

CtoCサービスにおける収納代行スキーム一般に対して資金移動業の規制が及ぶことになれば、資金力が豊富とはいえないスタートアップ企業がシェアリングエコノミーに代表されるCtoCサービスに参入することは困難となる可能性が高まります。
このような観点から、業界団体からは「CtoC収納代行への規制は、国内のプラットフォームビジネスの競争力低下とイノベーションの阻害を招く」一般社団法人新経済連盟「収納代行の規制によるプラットフォームビジネス等による社会発展への悪影響を回避すべき」一般社団法人Fintech協会 )などの反対意見が出されています。

資金移動業への登録要件を全く緩和することなく、CtoCにおける収納代行がすべて資金移動業にあたると指針変更すれば、多くの国内のCtoC、プラットフォームビジネスは立ちいかなくなり、その結果、資金力に勝る一部の大手企業のみがこの分野のプレイヤーとして残ることになりかねません。そのような状態は、政府が「未来投資戦略2018」において「シェアリングエコノミーの促進」が掲げられている方針に果たして適合するものといえるのでしょうか。

CtoCにおいて、一定の利用者保護(売主・代金債権者たる一般消費者の保護)の要請があることは否定できません。
そこで収納代行スキームに対して、資金移動業と同一の規制を及ぼすのではなく、たとえば
・売主がサービス事業者に売上金を預けておける期間を厳格に制限する
・収納代行スキームの定義を法文上明確にする(原因取引がないものや、サービス事業者が売主から代金の代理受領権限を与えられていないスキームを明確に除外する)
・そのうえで資金移動業のような登録制ではなく、届出制にする
などによっても、利用者保護は十分に図りうるものと考えます。

ほとんどのベンチャー企業は、資金面に制約のあるなかで世の中に価値あるサービスを提供しイノベーションを起こそうと、真正面から戦っています。法の潜脱を図ろうとする一部の事業者については、上記のような方策で適切な範囲で規制を及ぼせば足りるのであり、CtoCサービスに対して一律に資金決済法の規制を及ぼすような規制は明らかにやりすぎと感じます。
私は弁護士として、CtoCサービス事業者が法律やルールが許す範囲でビジネスを行えるよう支援しています。しかし今回のような、現状を無視した方向に法律やルールが変更されようとしている場合には、きちんと声を上げなければ、日頃支援している各企業にとっても、この国のベンチャービジネスの未来にとってもよくないと感じ、本稿を投稿させていただくに至った次第です(弁護士杉浦健二

【2019年6月12日追記】
本件については6月10日の金融審議会で報告書案が修正され、
「実質的に個人間送金に該当するようなものは資金移動業として規制対象とすることが適当」
と規制対象が限定される内容となりました。
CtoCサービスにおける収納代行について一律に資金移動業の規制をかける方向はひとまず回避されたように見えますが、今後の規制対象となるサービス、どのような規制内容となるかなど、本件はCtoC事業者にとって極めて影響が大きいため、引き続き議論を追い報告してまいります。

(外部リンク)金融庁資料に修正、新興企業の懸念、とりあえず回避
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/061000434

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