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ネット画像をうっかり無断使用した場合、常に著作権者の言い値を支払う必要があるのか

杉浦健二 杉浦健二

前回の記事(著作権フリーの写真だと思って使用したら20万円の損害賠償になった実例)について「ネットの画像検索で出てきた画像を自社用に使うとかあり得ない」という趣旨のコメントを複数頂きましたがそんなことありません。複数の地方自治体や企業が、ネット画像の無断使用で損害賠償や謝罪会見に至っています。謝罪会見

■ネット画像の無断使用で損害賠償やお詫びに追い込まれた実例

有料イラスト無断使用で請求30万円 滋賀・野洲市の機関誌(産経ウエスト)

“滋賀県野洲市が有料イラストをインターネットでダウンロードし、無断で使用していたことが、市への取材でわかった。””京都市内のイラストの管理会社が今年4月、市に不正を通知。市が当時の担当者に確認したところ、「ネット上で検索し、表示された画像に『サンプル』などの表示がなかったため、無料だと思った」などと説明したという。”
(http://www.sankei.com/west/news/140716/wst1407160035-n1.html)

高砂市がイラスト無断掲載 業者が40万円の賠償請求(神戸新聞NEXT)

“担当職員が業者のサイトの画像を無料と誤認し、使用方法などを確認しないまま掲載していたという。”
(http://www.kobe-np.co.jp/news/touban/201412/0007549181.shtml)

ネット上の写真を無断掲載 JR東新潟支社がおわび(朝日新聞DISITAL)

“支社によると、無断で掲載したのは「485系国鉄色車両」の写真。この車両を使用した特急「いなほ」(新潟―青森間)が5年ぶりに走ることを伝える際、担当の男性社員がネットで見つけた写真を無断で使用したという。”
(http://www.asahi.com/articles/ASH1S410WH1SUOHB00B.html)

ネット画像の無断使用は、ほとんどの場合、やっちゃいけないことを知らないのが原因で発生してます。他人が作成したイラストや他人が撮影した写真には他人の著作権が発生するので、自社サイトで利用する場合は作成者(撮影者)の許可をとるのが原則。この原則を自社の社員(特にサイト触ったりチラシ作成する担当者)に徹底周知しておかないと、自社が損害賠償や謝罪会見に追い込まれかねないわけです。

■無断使用した場合に支払う金額は、常に業者が設定する「正規料金」なのか?

アマナイメージズ社(以下アマナ社)事件では、アマナ社が自社サイト上で設定していた「正規料金」が損害額として認められました。
無断使用者がきちんとアマナ社から購入していたならば支払っていたはずの代金額が損害額と認められたということです(他に弁護士費用も数万円認められています)。冒頭の野洲市や高砂市の事例でも、画像販売業者側が自社で設定する正規料金額を請求したものと思われます。
※アマナ社事件における請求は、著作権法114条3項に基づく請求です。
著作権法114条3項 著作権者、出版権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権、出版権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。

ちなみに著作権の基礎をとりあえず押さえときたいならこの記事やこの入門書です。

ここで気になるのは、著作権を侵害されたと主張する業者側が設定した「正規料金」が、常に損害額として認められるのかということ。
たとえばある画像販売業者が、イラストの使用料金を100万円と高額に設定していたとします。このイラストを著作権フリーと誤認して無断使用した人は、常に「正規料金」である100万円を支払う義務があるのでしょうか。

ちなみにアマナ社事件では、アマナ社は1写真あたりの使用料を4万円(税抜)と設定していたようです(※)。実際に無断使用された写真はこちら(最高裁HPより)。果たして高いとみるか安いとみるか。

※無断使用された写真は、使用媒体・使用期間・エンドユーザーの履歴を管理するライツマネージドと呼ばれる作品。6か月超12か月以内の期間の1作品あたり使用料金が4万円(税抜)と設定されていた

■無断使用者側は、アマナ社の使用料金は他社と比べて高すぎると主張した

アマナ社事件で、無断使用した側である被告は

原告ら主張の使用料金は,他社と比べて高額であり,仮に,原告らの請求が認められるとしても,その半額程度が相当である

と主張していました。
この被告の反論に対して、裁判所は以下のように判断しています。

この点,被告は,原告アマナイメージズの使用料金が著作権法114条3項のその著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を上回る旨主張するようである。
しかし,…原告アマナイメージズは,原告ウェブサイト上で,写真,イラスト,映像素材など2500万点以上のコンテンツを揃えて,利用者がこれらのコンテンツを購入,ダウンロードできる本件サービスを提供するなど,相当な市場開発努力をしているばかりか,当該市場において相当程度の信頼を勝ち取っていることが認められるのであり,また,その使用料金が当該市場において特に高額なものとも認められない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。

つまり裁判所は
・アマナ社は相当な市場開発努力をしており、当該市場において相当程度の信頼を勝ち取っている
・アマナ社の設定する使用料金は、当該市場において特に高額なものとも認められない
ことを理由として、被告が言う「アマナ社の設定料金は高すぎる」との主張を退けているのです。

ということは、たとえば立ち上げたばかりでまだ市場の信頼も得るに至っていない画像販売業者が、他社と比べて法外な使用料金を設定していたところ、その業者の画像を無断使用してしまった場合などは、無断使用者側としても、業者が設定していた「正規の使用料金」全額を必ずしも支払う必要はないとの結論も導けるでは、と思われます。

■常に業者側の正規料金が損害額となるわけではない

他人の作成した著作物の無断使用が、著作権侵害となることは間違いありません。
しかしながらイラストや画像が無断使用されたケースで、常に販売業者側が設定する「正規料金」を請求できるのかというとそれはまた別問題で、市場の相場価格(他業者の販売価格との比較)や実際の販売実績なども考慮して判断されるものなのだと考えられるのでした。
弁護士杉浦健二

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