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キンコン西野さんは絵本をタダで公開したけどタダを強要すると下請法違反になるという話
タダで絵本配るのが社会貢献になるのかは分かりませんが、取引先からこういうムチャな発注受けた場合、相手会社の資本金が1千万1円以上であなたが個人事業主なら下請法違反になる可能性が高いので、公正取引委員会にこっそり相談してみるとよいですね。 https://t.co/HetRPk5nhn
— 杉浦健二@STORIA法律事務所 (@kenjisugiura01) 2017年1月20日
STORIA法律事務所の弁護士杉浦です。
芸人で絵本作家のキングコング西野さんが、23万部を突破した絵本「えんとつ町のプペル」をネット上で無料公開したことが話題です。
(外部リンク)お金の奴隷解放宣言。/ キングコング 西野 公式ブログ
一方で、今回の無料公開はさまざまな余波も招いている様子。
例の絵本騒動の余波
店に年配の女性が来店「この絵本、今インターネットで無料なんでしょ?でも私はコンピュータ持ってなくて読めないからこの本くださる?描いた人も無料でいいならこれももらってもいいわよね?」
……まじが_| ̄|○
— カオリ (@ASELLUS_sama) 2017年1月20日
西野さんがそれまで税込2160円で販売していた絵本をタダで公開したことに乗じて、クリエイターにタダで発注する業者も出てきたようです。
某吉本芸人が「タダで絵本」問題で某社から「お前もタダで仕事して社会に貢献する事を覚えような」って連呼しだして、いまタダで納期9時間後の発注が着て、朝から電話で「てめえクリエイターに払うデザイン費ダンピング目的で社会貢献振りかざしてんじゃねえよ!」と大喧嘩したアカウントはこちらです
— ぱんかれ(pumpCurry) (@pcb) 2017年1月20日
クリエイターに対して通常より著しく低い代金額で発注した場合、下請法に抵触する可能性があります。
■下請法の規制
下請法(下請代金支払遅延等防止法)は
(1)
資本金5千万1円以上の法人事業者が、資本金5千万円以下の法人または個人事業者に対して または
資本金1千万1円以上の法人事業者が、資本金1千万円以下の法人または個人事業者に対して
(2)
カタログやチラシ原稿,イラストポスター、映画アニメ、設計図など一定のコンテンツ作成を委託する場合(情報成果物作成委託)
について、買いたたきや代金減額を規制しています。
下請法については、中小企業庁・公正取引委員会作成のポイント解説下請法が大変良くまとまっています。
ポイント解説下請法P1図より https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.files/pointkaisetsu.pdf
※同じ情報成果物作成委託でも、プログラムの作成委託の場合は上記と異なる資本金要件が適用されます。上記PDFのP1参照
上記(1)(2)の条件にあてはまる場合、
通常支払われる対価より著しく低い代金額を不当に定めたり(買いたたき)、
発注時の代金額を正当な理由なく減額(代金減額)すると下請法違反となります。
冒頭のツイートのように代金額タダで情報成果物の制作委託を発注したような場合は、買いたたきとして下請法違反となる可能性が高いです。
キングコングの西野亮廣さんがタダで絵本を公開したんだからあなただってタダでできるよね?社会貢献したいよね?って要求するのはビジネス倫理上も人としてもアウトだし、下請法にも違反する可能性が高いわけです。
■平成27年度の下請法違反による指導件数は過去最多
下請法違反の事実が確認された場合は公正取引委員会の指導対象となり、より悪質な場合は勧告や会社名の公表、刑事罰の対象となります。
下請法違反による平成27年度の指導件数は過去最多の5,980件でした(公正取引委員会資料)。
当事務所が支援しているベンチャー企業やIT企業は、魅力的なコンテンツを持っている反面で、資金力や法律知識が不十分である等の理由により、発注先からの不当な買いたたきや代金減額のリスクに常にさらされています。下請法を十分に理解して、自社のコンテンツの買いたたき要請に負けない知識と体制を整えておきましょう(弁護士杉浦健二)
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