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一宮市と落語家司馬龍鳳の騒動に思う、失敗できない炎上後のプレスリリース
愛知県一宮市と落語家の司馬龍鳳氏の問題で、平成28年7月4日、一宮市が公式サイトで「お知らせ」を掲載しました。
しかしその「お知らせ」が更なる炎上を招くことに。炎上の原因を分析します。
(これまでの経緯)落語家の司馬龍鳳 愛知県一宮市の職員が取った非礼を告発(livedoorNEWS)
Contents
■更なる炎上を招いた一宮市の「お知らせ」
今回の騒動を受けての一宮市が発表した「お知らせ」は以下のとおりです。
平成28年7月4日報道発表「司馬龍鳳様への講師依頼について」のお知らせ
三条公民館における司馬龍鳳様への講師依頼につきまして、ブログやツイッター等で問題となっておりますので、お知らせいたします。
まずもって、今般の司馬龍鳳様へのお手紙によりご気分を悪くされ、皆様をお騒がせしていることに対して、お詫び申し上げます。
これから二度とこのようなことを起こさないために、市役所職員はもとより、職員ではない公民館役員の方も含めまして、関係者から事実関係を確認しているところです。
司馬龍鳳様のお身体を慮りながら、私どもの真意が伝わりますように、意思の疎通を図っていきたいと考えています。
取り急ぎ、お知らせさせていただきます。
■誰にお詫びしているのか不明
まずもって、今般の司馬龍鳳様へのお手紙によりご気分を悪くされ、皆様をお騒がせしていることに対して、お詫び申し上げます。
お詫びの文章では「誰に対して」「何の件について」お詫びするかを明示することが求められますが,一宮市の文章では「誰に対して」が記載されておらず,冒頭から違和感を覚えます。
文脈からは,今回問題となった一宮市作成の書面(講師依頼のお詫びと報告について)を読んで気分を悪くした方に対するお詫びともとれますが,司馬龍鳳氏への文面を誤ったと感じているならば,まずは司馬龍鳳氏に対して謝罪するべきといえます。
■「このようなこと」が何か不明
これから二度とこのようなことを起こさないために、市役所職員はもとより、職員ではない公民館役員の方も含めまして、関係者から事実関係を確認しているところです。
二度と起こさないと決意している「このようなこと」が何か不明です。
おそらくは「一宮市が誤解を招くような内容の書面を送ったこと」を二度と起こさないと伝えたいのだと思われますが,この書き方だと「我々が送った手紙をわざわざツイッターで世間に公開するような落語家に講師依頼をしてしまった」ようなミスを二度と起こしたくないのでは,とすら読めてしまいます。
「このようなこと」などの指示語は,解釈の余地を与えないように明確に用いるべきといえます。
■「お身体」云々は不要
司馬龍鳳様のお身体を慮りながら、私どもの真意が伝わりますように、意思の疎通を図っていきたいと考えています。
司馬龍鳳氏自身がツイッターで言及されているとおり,たしかに司馬氏は病と闘っておられるとのこと。
しかし一宮市と司馬龍鳳氏は現在も緊張状態にあるわけで,紛争を抱えている相手方から「お身体を慮りながら」と言われても,とてもじゃないが言葉通りに受け容れられるはずもなく,ただただ上滑りしている印象を与えます。
この文言を入れたところで,一宮市が司馬氏の身体を真に労わっている印象は微塵も持つことができません(実際に一宮市が司馬氏の身体を慮っているかどうかは別として)。お身体に関する文言を入れるなら,すべてが解決した後の報告文のタイミングとすべきです。
■「私どもの真意」が何かわからない
司馬龍鳳様のお身体を慮りながら、私どもの真意が伝わりますように、意思の疎通を図っていきたいと考えています。
一宮市が司馬氏に伝わっていないと考える「私どもの真意」が全く不明です。
謝罪文において含みを持たせる言葉は一切不要であり,もし一宮市が,司馬氏側の見解と事実とが異なっていると考えてるならば,今回のリリースでは謝罪まで行わず「現在事実関係を調査しております」で留めるべきです。
逆に既に事実関係の調査が大方終了しており,一宮市側に落ち度があったと確認できているのならば,「私どもの真意」などという解釈の余地を与える文言は使わず,ただただ非礼を詫びる内容にするべきだったと言えます。
■炎上後のプレスリリースは失敗が許されない
以上より,何らかの不祥事でネット炎上を起こした後に行う発表では
・自身に落ち度があったならば,本人に対して真摯に謝罪する
・謝罪する場合,文言に「含み」や「解釈の余地」は一切不要
・まだ事実確認中で,自身の落ち度があったと確認できていないのならば「事実関係を早急に確認中,確認次第改めて発表する」にとどめる
のが得策と考えます。
炎上後のプレスリリースは世間から最大限の注目を集めるために,ここで成功するか失敗するかは極めて重要となります。今回の一宮市のリリースは,発表を焦るあまりか不十分な内容のものとなり,かえって火に油を注いでしまった印象です。(弁護士杉浦健二)