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コンテンツビジネス法務(知的財産権、著作権) 人工知能(AI)、ビッグデータ法務

画像生成AIを利用して生成したコンテンツを自社サービスで利用する際に注意すべき事項

柿沼太一 柿沼太一

1 画像生成AIを含む生成系AIとビジネス

 ビジネス領域において、画像生成AIを含む生成系AI技術が利用される場面は大きく分けると2つあるように思います。
 1つはユーザー側で利用する場面、つまり「生成系AIを利用して生成したコンテンツを自社プロダクトで用いる場合」、もう1つはベンダ側で提供する場面、つまり「生成系AIのモデルそのものや当該モデルをベースとするアプリケーションを開発・提供する場合」の2つです。
 もちろん、企業によっては「自社で生成系AIツールを開発し、当該ツールを用いて生成したコンテンツを自社プロダクトで用いる」ということもあるでしょう。その場合は2つの領域双方にまたがった検討が必要です。

(1) 生成系AIのモデルそのものや当該モデルをベースとするアプリケーションを開発・提供する場合

 生成系AIのモデルそのものや、当該モデルをベースとするアプリケーションをベンダ・サービサーとして開発・提供する場合です1著名VCであるセコイアキャピタルによる、生成系AIに関する記事では、過去から現在までの生成系AIの簡単な歴史、各領域(テキスト、コード、画像、音声、ビデオ、3D等)におけるモデルの種類とアプリケーションの適用範囲、今後どのような領域で利用されるかの予想などがまとめられており参考になります。。画像生成AIでいうと、Imagen、DALL-E2、Midjourney、Stable Diffusionなどがベースとなるモデルであり、当該モデルをカスタマイズしたモデルや、それらのモデルをベースとしたアプリケーションが開発・販売されています。
 ベースとなるモデルそのものをフルスクラッチで開発するには、高度な技術力、大量の学習用データと計算資源が必要となるため、ごく一部のプレーヤーしか行えないでしょう。
 一方、公開されたモデルをベースに追加学習等を行ってモデルをカスタマイズしたり、第三者が公開したモデルをベースにしてアプリケーションを開発・提供するビジネスには既に多数のスタートアップが参入しています。
 そして、ベースモデルのカスタマイズやアプリケーションの開発・提供領域に関する法的な問題はざっくりいうと以下の4点です。

1 ベースモデルはOSSとして公開されているため、当該OSSに関するライセンス条件の的確な解釈
2 追加学習等に必要となるデータやデータベースの収集・利用をいかに適法に行うか
3 開発したモデルやアプリをユーザーに提供する際のサービス内容や利用規約の設計
4 公開したモデルやアプリを利用してユーザーが著作権侵害等の違法行為を行った際のサービス提供者の責任をどう考えるか

(2) 生成系AIを利用して生成したコンテンツを自社プロダクトで用いる場合

 プロのイラストレーターが創作にAIツールを利用したり、ゲーム企業などのエンタメ系企業がAIツールを利用して生成したAI生成物を自社プロダクト内で利用する場合です。要するに、これまで人間が制作してきたコンテンツの一部をAI生成物で代替する場合ですが、この場合に法的に注意すべき事項は以下の4点です2実際にはこれらの事項は、プロや企業に限らずAI生成物を利用する人全員に関係するのですが、プロ・企業の方がシビアな問題が発生する可能性があるので、より注意する必要があります。

1 画像生成AIを利用して生成したAI生成物に著作権が発生しているか
2 画像生成AIを利用して生成したAI生成物の利用に制限がないか
3 画像生成AIを利用して生成したAI生成物を第三者が無断利用した場合に権利行使(差止請求や損害賠償請求)ができるか
4 当該AI生成物の生成・利用行為が他者の権利(著作権等)を侵害しないか

 今回の記事はこの4つの留意点に関するものです。

2 画像生成AIを利用して生成したAI生成物に著作権が発生しているか

 仮に当該AI生成物に著作権が発生していないとすると、当該生成物は基本的に第三者にパクられ放題ということになりますので、プロや企業にとっては大きな問題となります。
 この論点については、以前の記事で解説をしたとおり、画像生成AIを利用しての創作活動に人間の「創作的寄与」があるか否かによって結論が分かれます。
 自分の意図通りに高画質の画像を生成するために、詳細かつ長い呪文を唱えて画像を生成した場合、呪文自体の長さや構成要素を複数回試行錯誤する場合、同じ呪文を何度も唱えて複数の画像を生成し、その中から好みの画像をピックアップする場合、自動生成された画像に人間がさらに加筆・修正をした場合などは「創作的寄与」があるとして、それらの行為を行った人間を著作者として著作権が発生することになるでしょう。
 そして、プロや企業が創作行為を行う場合、通常は試行錯誤や取捨選択、加筆を行うため「創作的寄与」があることが多く、ほとんどのケースで著作権は発生するのではないかと思います。
 以下、本記事では当該AI生成物に著作権が発生していることを前提とします。

3 画像生成AIを利用して生成したAI生成物の利用に制限がないか

 画像生成AIを利用して生成したAI生成物をビジネスで利用する場合、特に当該AI生成物を商用利用できるかが問題となります。
 AI生成物を商用利用含め自由に利用できるためには、当該AI生成物に著作権が発生していることを前提として、① ユーザー自身が著作権を持っているか、あるいは②他者(AIツール提供者の場合が多いです)が著作権を持っている場合は、当該権利者からユーザーがライセンスを受けており、当該ライセンス内容に制限がない、のどちらかが必要です。
 この論点は、利用するAIツールの利用規約により結論が大きく左右されるので、利用規約をよく読む必要があります。
 次の論点である「4 画像生成AIを利用して生成したAI生成物を第三者が無断利用した場合に権利行使(差止請求や損害賠償請求)ができるか」にもAIツールの利用規約が関連しますので、両論点を合わせて「5 主要なAIツールの利用規約の解説」にて説明します。 

4 画像生成AIを利用して生成したAI生成物を第三者が無断利用した場合に権利行使(差止請求や損害賠償請求)ができるか

 この論点については「2 画像生成AIを利用して生成したAI生成物に著作権が発生しているか」の論点とは区別する必要があります。
 つまり、AI生成物に著作権が発生しておりユーザーに著作権が帰属していても、利用したAIツールの利用規約によってはユーザーが権利行使できなくなる可能性があるのです。
 権利行使できない場合、著作権が発生していても結局パクられ放題ということになります。
 この論点も利用するAIツールの利用規約により結論が大きく左右されますので、「5 主要なAIツールの利用規約の解説」で説明します。

5 主要なAIツールの利用規約の解説

 先ほど紹介した「3 画像生成AIを利用して生成したAI生成物の利用に制限がないか」の論点と「4 画像生成AIを利用して生成したAI生成物を第三者が無断利用した場合に権利行使(差止請求や損害賠償請求)ができるか」の論点については利用するAIツールの利用規約の内容が大きく影響します。
 そこで、主要なAIツールの利用規約について簡単に解説します(利用規約の確認時点は2022年11月1日)。

(1) stable-diffusion

 ▼ 利用規約の内容
 
 stable-diffusionは画像生成AIモデルですが、その利用規約には、①モデル(「”Model”」)及び当該モデルをベースに開発されたカスタマイズモデル(「”Derivatives of the Model”」)のライセンス条件と、②当該モデルを利用して生成された出力(”Output”)のライセンス条件の双方が含まれています。
 このうち、「②当該モデルを利用して生成された出力(”Output”)」に関する権利についての言及部分は以下のとおりです。

6. The Output You Generate. Except as set forth herein, Licensor claims no rights in the Output You generate using the Model. You are accountable for the Output you generate and its subsequent uses. No use of the output can contravene any provision as stated in the License.
 (仮訳)
 6. ユーザーが生成する出力
 本契約に定める場合を除き、ライセンサーは、ユーザーがモデルを使用して生成した出力についていかなる権利も主張しません。ユーザーは、ユーザーが生成した出力およびその後の使用について説明責任を負うものとします。出力のいかなる使用も、本使用許諾に記載されたいかなる規定にも反することはできません。

 「ライセンサーはAI生成物の著作権についていかなる権利も主張しない」すなわち「AI生成物の著作権はユーザーに帰属する」という非常にシンプルな内容です。
 この規約の内容を前提とすると、stable-diffusionを利用した場合「画像生成AIを利用して生成したAI生成物の利用に制限がないか」と「画像生成AIを利用して生成したAI生成物を第三者が無断利用した場合に権利行使(差止請求や損害賠償請求)ができるか」についての結論は、それぞれ「制限なし」「可能」となります。

(2) Dream Studio

▼ 利用規約の内容

Copyright
(中略)
All users, by use of DreamStudio Beta and the Stable Diffusion beta Discord service hereby acknowledge having read and accepted the full CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication (available at https://creativecommons.org/publicdomain/zero/1.0/), which includes, but is not limited to, the foregoing waiver of intellectual property rights concerning any Content.
 User, by use of DreamStudio Beta and the Stable Diffusion beta Discord service, acknowledges understanding that such waiver also includes a waiver of any such user’s expectation and/or claim to any absolute, unconditional right to reproduce, copy, prepare derivate works, distribute, sell, perform, and/or display, as applicable, and further that any such user acknowledges no authority or right to deny permission to others to do the same concerning the Content. (後略)

(仮訳)
著作権
(中略)
 すべてのユーザーは、DreamStudio BetaおよびStable Diffusion beta Discordサービスを使用することにより、CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication (available at https://creativecommons.org/publicdomain/zero/1.0/) を読み、承諾したことを認めます。この内容は、いかなるコンテンツに関する知的財産権の放棄を含みますが、これに限るものではありません。
 ユーザーは、DreamStudioベータ版およびStable Diffusionベータ版のDiscordサービスを使用することにより、この権利放棄は、該当する場合、複製、コピー、派生物の準備、配布、販売、実行、および/または表示する絶対的、無条件の権利に対するユーザーの期待および/または主張の権利放棄も含むこと、さらにユーザーは、コンテンツに関して同じことを行う許可を他人に否定する権限または権利がないことを理解したものとみなします。

この利用規約は先ほどのstable-diffusionとはかなり異なります。
  AI生成物の著作権がユーザーに帰属する3利用規約中、AI生成物の著作権の帰属に関する言及がないので、法律上の原則に従ってユーザーがAI生成物の著作者になると思われます。 ことは共通なのですが、当該AI生成物について「CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication」でのライセンスがユーザーに義務づけられているのです
 この「CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication」は、要するに「全ての権利を放棄する」という内容ですので、結局Dream Studioを利用して生成されたAI生成物についてユーザーは「著作権を有しているが権利行使できない」という状態になります。すなわち著作権が発生していても、結果的には「著作権が発生してない」のとほぼ同じことになる、ということです。
 この規約の内容を前提とすると、Dream Studioを利用した場合「画像生成AIを利用して生成したAI生成物の利用に制限がないか」については「制限なし」となります。
 しかし「画像生成AIを利用して生成したAI生成物を第三者が無断利用した場合に権利行使(差止請求や損害賠償請求)ができるか」については「できない」ということになります。

 

(3) NovelAI

▼ 利用規約の内容

 1.3 Ownership. You, whether a legal or physical entity, retain all rights and ownership of your Content. We do not claim any ownership rights to your Content. Unless you agree and Anlatan agrees specifically to transfer your ownership to Anlatan.

 1.4 Content. Content refers to the generated material that you specifically create using our Services. Your content is wholly yours and is not representative or affiliated with Anlatan, we do not act as publisher or platform to publish your Content.

(仮訳)
1.3 所有権
 お客様は、法人または物理的実体にかかわらず、お客様のコンテンツのすべての権利と所有権を保持します。当社は、お客様のコンテンツに対するいかなる所有権も主張しません。ただし、お客様が同意し、 Anlatanがお客様の所有権をAnlatanに譲渡することに特に同意した場合は、この限りではありません。

1.4 コンテンツ
 コンテンツとは、お客様が当社のサービスを利用して具体的に作成した生成物を指します。お客様のコンテンツはすべてお客様のものであり、 Anlatanを代表したり提携したりするものではありません。またAnlatanはお客様のコンテンツを公開するための出版社またはプラットフォームとして機能するものではありません。

 この利用規約はstable-diffusionの利用規約と同様、「AI生成物の著作権はユーザーに帰属する」という非常にシンプルな内容です。
 この規約の内容を前提とすると、NovelAI を利用した場合「画像生成AIを利用して生成したAI生成物の利用に制限がないか」と「画像生成AIを利用して生成したAI生成物を第三者が無断利用した場合に権利行使(差止請求や損害賠償請求)ができるか」についての結論は、それぞれ「制限なし」「可能」となります。

(4) Midjourney

▼ 利用規約の内容
 Midjourneyはちょっとややこしいです。長いですが、以下利用規約のうち関連する部分の引用+仮訳です。

まず冒頭部分です。
ここでは「the “Assets”」の定義(=本サービスであなたが生成した画像、およびその他の資産)が重要です。

Thank you for using Midjourney’s image generation and chat services (the “Services”). These Terms of Service (the “Agreement”) spell out what rights you have with respect to the Service generated images, and other assets, which you generate (the “Assets”), your use of the Services, and other important topics like arbitration.

(仮訳)
Midjourneyの画像生成・チャットサービス(以下「本サービス」)をご利用いただき、ありがとうございます。このサービス規約(以下「本契約」)は、本サービスであなたが生成した画像、およびその他の資産(以下「資産」)、本サービスの使用、および仲裁などのその他の重要なトピックに関して、お客様が持つ権利について綴ったものです。

次に権利周りに関する部分です。

4. Copyright and Trademark
 In this section, Paid Member shall refer to a Customer who has subscribed to the latest Phase 3 payment plan, which became available as of 5/6/22.

(仮訳)
4.著作権及び商標権
 本項において、有料会員とは、22年5月6日付で利用可能となった最新の第3期支払プランに加入したお客様を指します。

Rights you give to Midjourney
By using the Services, you grant to Midjourney, its successors, and assigns a perpetual, worldwide, non-exclusive, sublicensable no-charge, royalty-free, irrevocable copyright license to reproduce, prepare Derivative Works of, publicly display, publicly perform, sublicense, and distribute text, and image prompts you input into the Services, or Assets produced by the service at your direction. This license survives termination of this Agreement by any party, for any reason.

(仮訳)
お客様がMidjourneyに与える権利
 本サービスを利用することにより、お客様は Midjourney、その後継者、および譲受人に、お客様が本サービスに入力したテキスト、および画像プロンプト、またはお客様の指示により本サービスが生成した資産の複製、派生物の作成、公開表示、公開実行、サブライセンス、および配布に関する永久、世界、非排他、サブライセンス可能、無償の取消不能著作権を許諾するものとします。このライセンスは、理由の如何を問わず、いかなる当事者による本契約の終了後も存続します。

Your Rights
Subject to the above license, you own all Assets you create with the Services. This does not apply if you fall under the exceptions below.
Please note: Midjourney is an open community which allows others to use and remix your images and prompts whenever they are posted in a public setting. By default, your images are publically viewable and remixable. As described above, you grant Midjourney a license to allow this. If you purchase a private plan, you may bypass some of these public sharing defaults.

お客様の権利
 上記のライセンスに従い、お客様は本サービスを使用して作成したすべての資産を所有します。ただし、以下の例外に該当する場合は、この限りではありません。
注意:Midjourneyはオープンなコミュニティであり、あなたの画像やプロンプトが公共の場に投稿された場合、他の人がそれを使用し、リミックスすることを許可しています。デフォルトでは、あなたの画像は一般的に閲覧可能であり、リミックス可能です。上記のように、お客様はMidjourneyにこれを許可するライセンスを付与しています。プライベートプランを購入された場合、これらの公開共有のデフォルトの一部を回避することができます。

Exception 1: Non-Paid Members License Terms
If you are not a Paid Member, Midjourney grants you a license to the Assets under the Creative Commons Noncommercial 4.0 Attribution International License (the “Asset License”).
The full text is accessible as of the Effective Date here: .

例外1: 非有料メンバーライセンス条項
 あなたが有料会員でない場合、MidjourneyはあなたにCreative Commons Noncommercial 4.0 Attribution International Licenseの下、資産(訳注:本サービスで生成された画像、およびその他の資産)に対するライセンスを付与します。
(略)

Exception 2: Corporate-User License Terms
If you are an employee or owner of a company with more than $1,000,000 USD a year in gross revenue, and you are using the Services to benefit your Employer or company you must purchase a corporate membership plan to use the Services or copy the Assets for your company.
Corporate membership plans involve an upfront, non-refundable deposit for up to 12 months of service.

例外2:企業ユーザー・ライセンス条項
 お客様が年間総収入100万ドル以上の企業の従業員またはオーナーで、雇用主または企業のために本サービスを使用する場合、お客様の企業のために本サービスを使用または資産をコピーするには、法人メンバーシッププランを購入する必要があります。
コーポレート・メンバーシップ・プランには、最大12ヶ月分のサービスに対する前金(返金不可)が含まれます。

 Midjourneyの場合、利用規約(Terms of Service)以外に、有料プランを申し込んだ際に表示される画面にも利用条件が記載されており若干複雑なのですが、おそらく以下のような整理になるのだろうと思われます。

 この場合は、Paid Member(Corporate-User含む)にAI生成物の著作権が帰属します。
 これは、利用規約上、「the “Assets”」(本サービスでユーザが生成した画像、およびその他の資産)について、一定の例外を除いて「上記のライセンスに従い、お客様は本サービスを使用して作成したすべての資産を所有します。」と記載されているためです。
 ただし、この場合でも「お客様がMidjourneyに与える権利」として、ユーザーはMidjourneyに対して一定の権利をライセンスすることになっています。
 この「ユーザー→Midjourneyへのライセンス」には、「Midjourney→第三者への(サブ)ライセンス」権も含まれています。
 問題は、この「Midjourney→第三者への(サブ)ライセンス」の内容ですが、「生成画像やプロンプトが公共の場(public setting)に投稿された場合、他の人がそれを使用し、リミックスすること」が含まれるようです。一方、当該ライセンスに基づいて、あるMidjourneyユーザが生成した対象画像を第三者が商用利用可能かどうかは利用規約上明記されておらず不明です。
 もっとも、少なくともMidjourneyの非ユーザや、Non-Paid Memberについては、Non-Paid Memberが生成した画像について、自分自身ですら商用利用できないこととのバランスから考えると、他人が生成した画像については商用利用不可と思われます。
 図で示すとこんな構造ですね。
 

 この構造の下では、Paid Member(Corporate-User含む)が生成した画像に関しては、「生成ユーザー自らの利用(第三者への利用許諾含む)に何らかの制約がないか」については「制約なし」ということになります。
 一方「第三者が無許諾で利用したことに対して生成ユーザーが著作権侵害に基づく権利行使(差止請求・損害賠償請求等)できるか」については、「Midjourneyが第三者に付与しているライセンスの範囲外の行為に対してのみ権利行使可能」ということになります。

② Non-Paid Memberが生成した画像

 この場合は、いったんNon-Paid MemberにAI生成物の著作権が帰属した後、Midjourneyに当該著作権が移転します。
 この点については利用規約上明記されているわけではないのですが、利用規約上「例外1: 非有料メンバーライセンス条項」として「あなたが有料会員でない場合、MidjourneyはあなたにCreative Commons Noncommercial 4.0 Attribution International Licenseの下、資産に対するライセンスを付与します。」と記載されていることから導くことができます(Midjourneyに著作権が移転していなければ、Midjourney がCC4.0NCでユーザーにライセンスすることもできないため)。
 もっとも、Midjourneyは、当該AI生成物を創作したNon-Paid Memberに対して、CC4.0NCの下、ライセンスをすることになっています。
 図で示すとこんな構造です。先ほどの「Paid Member(Corporate-User含む)が生成した画像」とAI生成物の権利者やライセンス内容が異なります。

 この構造の下では、Non-Paid Memberが生成した画像に関しては「生成ユーザー自らの利用(第三者への利用許諾含む)に何らかの制約がないか」については「CC4.0NCの下でのみ利用可能」ということになります。つまりユーザーは自ら生成した画像の複製、改変は可能ですが、商用利用はできませんし、第三者に(サブ)ライセンスすることもできません。
 また、「第三者が無許諾で利用したことに対して生成ユーザーが著作権侵害に基づく権利行使(差止請求・損害賠償請求等)できるか」についても、「生成ユーザーは著作権を有しておらず、MJから付与されているCCNC4.0ライセンスしか有していないので、著作権侵害に基づく権利行使はできない」ということになります。

6 当該AI生成物の生成・利用行為が他者の権利(著作権等)を侵害しないか

(1) 論点の整理

 この点については、AI生成物をビジネス利用しようとする企業から特によく質問される論点です。
 たとえば「画像の生成指示に際して特定の作家の名前を入力して生成する行為は著作権侵害に該当するか」「画像生成AIを利用して生成した画像が、第三者が創作した既存画像と同一・類似していた場合、著作権侵害に該当するか。当該既存画像が学習用データセットに含まれていた場合はどうか。」などが典型的な質問です。
 この論点については、まず入力行為と出力行為、つまり① 画像の生成指示を入力する行為が著作権侵害に該当するかと、② 出力行為及び出力された画像の利用行為が著作権侵害に該当するか、に分けて考える必要があります。
 また、入力データ・出力データがそれぞれ「非著作物・非既存著作物4著作物性が発生しない短いプロンプトや著作権の保護期間が満了している画像などが該当します。」なのか「他人の既存著作物」なのかについても分けて検討する必要があります。

 つまり「入力×出力」と「非著作物・非既存著作物×他人の既存著作物」の組み合わせで考える必要があるのですが、組み合わせとしては以下の4つがあります。

この4つのパターンをもう少しわかりやすく図示したのが以下の図です。

 パターンAは「非著作物・非既存著作物」を入力したところ「非著作物・非既存著作物」が出力されるパターンです。
 たとえば、著作物に該当しないような呪文や、特定の作家の名前(非著作物です)を呪文として入力したところ、既存著作物とは非類似の画像が生成された場合や、既に著作権の保護期間が満了した画像を入力したところ、既存著作物とは非類似の画像が生成された場合などです。
 この場合は入力行為・出力行為いずれにも著作権侵害行為は存在しないため、特に問題となりません。
 一方、パターンBは、「非著作物・非既存著作物」を入力したところ「他人の既存著作物と同一・類似の画像」が出力されたパターン(出力行為と著作権侵害が問題となるパターン)、パターンCは「他人の既存著作物と同一・類似の著作物」を入力したところ「非著作物・非既存著作物」が出力されたパターン(入力行為と著作権侵害が問題となるパターン)、パターンDはパターンBとパターンCの組み合わせです。
 パターンB~Dにおいては他人の既存著作物が利用されているため著作権侵害の有無が問題となります。

(2) 出力行為と著作権侵害(パターンB)

 「非著作物・非既存著作物」を入力したところ「他人の既存著作物と同一・類似の画像」が出力されたパターンです。
 このパターンにおいては、著作権侵害の要件のうち、特に「依拠性」が問題となりますが、当該既存著作物が学習用データに含まれていない場合と、含まれている場合に分けて検討する必要があります。

① 既存著作物が学習用データに含まれていない場合

 

 このパターンは、ユーザにおいて、当該既存画像を知っていれば依拠性が肯定され、知らなければ依拠性が否定されて独自創作として著作権侵害が否定されます。
 その意味においては、このパターンは従来型の著作権侵害紛争と同じ問題状況です。
 もっとも、ユーザが、画像生成に際して、プロンプトとして、ある特定の作家の名称や既存画像を入力し、その結果、当該作家の既存著作物や当該既存画像と同一・類似の画像が出力された場合には依拠性が肯定されことになるでしょう。
 画像生成AIを利用して生成されたAI生成物に関する著作権侵害が裁判で争われた場合、著作権侵害を主張する側(原告)は、「これほどまでに類似している画像が『偶然』生成されるはずがない。生成者は原告の名称や原告が作成した既存画像を入力したに違いない」と主張することが考えられます。それに対して、訴えられた側(被告)は、そのような入力行為を行っていないことを証明できるよう、いわば自衛のために画像生成過程のログをとる必要が今後はあるかもしれません。

② 既存著作物が学習用データに含まれている場合

ⅰ 依拠性について

 このパターンにおいて依拠性が認められるかについて、既存著作物が学習用データセットに含まれていれば依拠性を認めるべきであるとする考え方(肯定説)と、パラメータ(機械学習により生成された係数)自体はアイデアであるから、既存著作物がパラメータ化されている場合には依拠性を認めるべきではないという考え方(否定説)があり、現時点では明確な結論が出ていないのは以前の記事で紹介したとおりです。
 なお、私が以前の記事を執筆した後に、否定説を唱える記事を見つけました。
 ABEJAに所属する古川直裕弁護士の執筆記事です(2022-12-17執筆)。ちなみに古川弁護士は、私が知る中で最もAIの技術面・法律面・ビジネス面に詳しい弁護士です。
 古川弁護士は同記事の中で以下のように述べて明確に否定説に立っておられます。

学習用データそのものがパラメータになっているわけではなく、学習用データやその類似物をそのまま出力するわけではないので、つまりは学習結果から学習用データの表現の本質的な部分が消えているので、依拠性は認められないと思っています。こう考えると、著作権侵害をした人が、嘘をついて「AIで作った」と抗弁することを心配する人もいますが、学習用データと類似するデータを生成する確率が低い以上、抗弁する側である程度主張を立証する必要があると思いますので、問題はなかろうと思います。
 つまりは、AIを使って画像なりを生成する側が適切に記録を取っておくべきだと思っています。
 なお、学習が上手く行っていない場合や変な学習をさせた場合(特定の作者の特定のキャラクターの画像のみ学習させた)は逆に依拠性が認められると思います。

ⅱ 過失について

 仮にこのパターンにおいて依拠性が認められ、著作権侵害が成立したとしてもユーザに故意過失がなければ、不法行為に基づく損害賠償責任は発生しません。
 画像生成AIを利用するユーザからすると、当該AIの学習用データの中に、出力された画像と同一・類似の既存著作物が含まれていることを知らない(故意はない)のが通常だと思われます。
 問題は、このような場合でも、ユーザに過失(注意義務違反)が認められるかどうかです。不法行為の文脈では、「過失」とは日常用語の「うっかりしていたこと」ではなく、簡単に言うと「ある注意義務に違反したこと」をいいます。
 「行為者にある注意義務(「・・・をしてはならない」あるいは「・・・をしなければならない」という義務)が課されていたのに、その注意義務を果たさずに行為を行ったこと」が「過失」となるのです。
 既存著作物が学習用データに含まれている場合におけるユーザの注意義務として考えられるのは「当該画像生成AIの学習用データとしてどのような既存著作物が利用されているかを確認し、自分が出力した著作物が当該既存著作物に類似しているかを照合する注意義務」です。
 このような注意義務がユーザーに課されるのであれば、「当該注意義務を怠ったこと(照合行為を行わなかったこと)」が過失になりますし、注意義務が課されなければ、そのような照合を行わなくとも過失はないことになります。
 このような注意義務については、一部の画像生成AIに限っていえば、技術的にはその履行は不可能ではありません。たとえば、 Stable Diffusion の学習に用いられている学習用データセットLAION-5Bに含まれる画像を検索できるウェブアプリ「Have I Been Trained?」などが公開されており、そのようなアプリを利用すれば照合は可能です 。
 しかし、安易にこの注意義務(照合義務)をユーザーに課してしまうと、ユーザーに過失が認められる範囲が極めて広くなり、画像生成AIの利用を萎縮することにもなりかねません。また、これまでの裁判例の傾向からすると、おそらく通常のユーザには、このようなアプリを利用してまでの高度な照合義務は課されず、仮に当該照合義務を履行しなかったとしても注意義務違反(過失)はないと思われます。
 一方、プロのクリエイターやコンテンツビジネスを生業としている事業者の場合、そのような照合義務があり、当該義務を怠った場合には過失ありとされる可能性があります。しかし、その場合でもそもそも技術的にそのような照合行為が不可能な場合(データセットとして何が利用されたか公開されていない画像生成AIモデルを利用した場合には照合は不可能です)には、不可能を強いることはできないので、照合義務は存在せず過失はないことになると思います。
③ まとめ
 以上、かなり細かく検討してきました。
 ただ、ちゃぶ台返しをするようですが、そもそも拡散生成モデルを利用した画像生成AIについては、特殊な学習をさせない限り、学習用データと同一・類似の画像が自動生成される可能性は極めて低いと思われます。
 したがって、この「出力行為と著作権侵害」の論点は、理論的には興味深いものの、実際には大きなリスクとして捉える必要はないのかもしれません5先ほど紹介した古川弁護士の記事も同様の指摘をしています。

(3) 入力行為と著作権侵害(パターンC)

 次に、画像生成AIを利用して画像を生成するに際して、既存著作物を入力する行為が著作権侵害に該当するかを検討します。
 このパターンは、たとえばText-to-Imageタイプの画像生成AIにおいて、他人の小説の一節(著作物に該当する程度の長さのもの)をプロンプトとして入力する行為や、Image -to-Imageタイプの画像生成AIにおいて他人の画像を入力する行為(ただし、いずれの場合でも、結果として出力された画像は非著作物・非既存著作物とする)が該当します。

 

 この問題については、まず個人が私的領域内(手元のローカルなモデルに入力する場合や、クラウド上のモデルにプライベートモードで入力する場合)で既存著作物を画像生成AIの「呪文」として入力する行為は、法的には「複製」に該当しますが、私的使用のための複製(法30条)ですので適法となります。
 一方、個人が「私的領域外」で入力行為を行う場合(クラウド上のモデルに、入力プロンプトが公開される形式で入力する場合等)、あるいは法人による入力行為については法30条の適用はありません。
 もっとも、当該入力行為は、入力対象となる既存著作物を、画像生成AIを利用して画像を生成するための「材料」として利用しているに過ぎないため、法第30条の4第3号あるいは同条柱書「その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」に該当する可能性があるように思われます。
 その解釈が正しいとすると、このパターンでの既存著作物の入力行為は適法となるのですが、この論点についてはまだほとんど議論がされていないため、さらに検討したいと思います。

7 まとめ

 以上、本記事では、ビジネス領域において、画像生成AIを含む生成系AI技術が利用される場面のうち「(2) 生成系AIを利用して生成したコンテンツを自社プロダクトで用いる場合」の法的留意点4点について解説をしました。
 特に、利用するAIツールによって、生成したコンテンツの利用範囲や権利行使可能範囲が異なる点については十分注意が必要です。
 ビジネス領域において、画像生成AIを含む生成系AI技術が利用されるもう1つの場面である「(2)生成系AIのモデルそのものや当該モデルをベースとするアプリケーションを開発・提供する場合」についても別の機会に検討したいと思います。
 お楽しみに!

【文中脚注】

  • 1
    著名VCであるセコイアキャピタルによる、生成系AIに関する記事では、過去から現在までの生成系AIの簡単な歴史、各領域(テキスト、コード、画像、音声、ビデオ、3D等)におけるモデルの種類とアプリケーションの適用範囲、今後どのような領域で利用されるかの予想などがまとめられており参考になります。
  • 2
    実際にはこれらの事項は、プロや企業に限らずAI生成物を利用する人全員に関係するのですが、プロ・企業の方がシビアな問題が発生する可能性があるので、より注意する必要があります。
  • 3
    利用規約中、AI生成物の著作権の帰属に関する言及がないので、法律上の原則に従ってユーザーがAI生成物の著作者になると思われます。
  • 4
    著作物性が発生しない短いプロンプトや著作権の保護期間が満了している画像などが該当します。
  • 5
    先ほど紹介した古川弁護士の記事も同様の指摘をしています。