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著作権

(仮に)SMAPが解散したら、元メンバーは「世界に一つだけの花」を歌えるのか?

柿沼太一 柿沼太一

年明け早々SMAPの解散の話題で大変な騒動になっていますね。
当事務所(とりわけ女子メンバー)は皆SMAPの大ファンで、今回の報道で一同ショックを受けており解散など誤報であって欲しいと真に願っております。
ただ、仮に、仮にです。本当にSMAPが解散してしまった場合、元メンバーはSMAPの曲を2度と歌うことが出来ないのでしょうか。

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■(注)仮に解散した場合の話です

たとえば何年か後、SMAPの元メンバー5人(あるいは6人)が久しぶりに再会したとします。それぞれのステージで変わらぬ活躍をしている元メンバー、昔話に話が咲きます。
その結果、仮にSMAPのヒット曲を新しくレコーディングし直した「SMAP NOW」というアルバムを新しいレコード会社から出さない?という話が出たとしたら、「SMAP NOW」は発売できるのでしょうか。
ここでは純粋に法律や契約でどうなるかを考えてみたいと思います。

■まず音楽の著作権についておさらい

SMAPのヒット曲を新しくレコーディングし直すわけですから、当然、各楽曲の著作者の了解を取らなければなりません。
まず仕組みを理解するために、音楽の著作権がどのように管理されているかを知る必要があります。

音楽の場合、「作曲家」と「作詞家」という著作権者がいます。
ただ通常は「作曲家」と「作詞家」は、自ら著作権の管理をするということはしません。「この曲使いたいんですけど」という申し込みがあった際に、個々の作詞家や作曲家が直接対応することは現実的には不可能だからですね。
ですので作曲家や作詞家は、自分の所有する歌詞や曲の著作権を、JASRACのような「著作権等管理事業者」に預けて(信託して)、自分の代わりに管理してもらうことになります。
作曲家・作詞家は直接JASRAC等に著作権を信託することもありますが、実際にはソニー・ミュージックパブリッシングやジャニーズ出版などの「音楽出版社」に譲渡し、この「音楽出版社」がさらにJASRAC等に信託することの方が多いです。

図に示すとこういう感じです。
キャプチャ29

ここで「音楽出版社」という言葉が出てきましたが、この「音楽出版社」は音楽界ではとても大きな存在です。
「出版社」といっても楽譜を印刷して出版することが主たる業務ではなく、音楽の著作権の管理やレコードの制作、曲のプロモートなど幅広い業務を行います。

■「世界に一つだけの花」は?

ヒット曲を再レコーディングするとすれば、累計250万枚売れた「世界に一つだけの花」は外せないですよね。
この曲はJASRACが管理しているわけですが、権利関係がどうなっているか見てみましょう。
JASRACの作品データベース検索サービス「J-WID」を使います。
この検索画面で「アーティスト名」に「SMAP」と入れて検索をすると406件の検索結果が表示されます。
キャプチャ27
 
この中から「世界に一つだけの花」を選択すると、以下の画面が出てきます。

キャプチャ28

これを見ると
・ 作詞者、作曲者が槇原敬之氏であること
・音楽出版社がジャニーズ出版であること
・「演奏」や「録音」などの欄にすべて「J」マークがつけられていることから、JASRACがこれらの権利を管理していること
・槇原敬之氏は個人としても著作権をJASRACに信託していること
がわかります。
図にすると以下のよう整理できます。

キャプチャ30

いずれにしても、「世界に一つだけの花」の再レコーディングに必要となる権利についてはJASRACが管理していますので、JASRACに使用申し込みをして料金さえ支払えばレコーディングが可能、ということになります。

■「著作権上は」誰でも利用できそうである

では、仮に音楽出版社であるジャニーズ出版が「SMAP NOW」の制作には協力しない、「世界に一つだけの花」のレコーディングは許諾しない、と言ったらどうなるでしょうか。
結論から言うと、実はそのような拒否は出来ません。
音楽出版社とJASRACは「著作権信託契約約款」を締結しているのですが、そこでは音楽出版社がJASRACに対して「この人には利用を許してよい」「この人はダメ」というように、「誰が利用するか」に着目した指定や制限が出来るとは書いていないためです。
 
では、JASRACが使用を拒否することはできるのでしょうか。
これも無理です。JASRACのような著作権等管理事業者は、正当な理由なく特定の人のみに著作権物の利用を許諾しないことはできないためです(著作権等管理事業法第16条、これを「応諾義務」といいます)。
以上のように、結論的には、JASRACに使用申し込みをして料金さえ支払えば「世界に一つだけの花」のに関する著作権については問題は生じない、ということになります。

■ただし契約による拘束がかかっている可能性が大

ただ、話はそう簡単ではありません。
作詞家、作曲家の有する著作権についてはJASRACに了解を得ればよいのですが、SMAPのように芸能プロダクションに属しているアーティストの場合、契約によりそのようなレコーディングが出来ないように拘束されている可能性が高いためです。
アーティスト(あるいはプロダクション)とレコード会社との間に締結されている「専属実演家契約」には、「本契約終了後3年間は、プロダクションはアーティストをして、本契約に基づいて実演した著作物と同一の著作物について、レコーディング会社以外の第三者が行うレコーディングのための実演を行わせないものとします」というような条項が入っているようです(安藤和宏著「よくわかる音楽著作権ビジネス第3版」(リットーミュージック)より)。

SMAPの場合にも、プロダクション(株式会社ジャニーズ事務所)とレコード会社間の契約では、このような条項が入っていると思われますので、一定期間は「世界に一つだけの花」が入ったアルバムの制作は出来ない可能性が高いと思われます。

■「SMAP NOW」というタイトルを使うことはできるのか?

さらに「SMAP NOW」というように、アルバムに「SMAP」という表示が入ったタイトルを使うことは問題がないのでしょうか。
実は「SMAP」については商標登録がされています。
特許情報プラットフォームにおいて「SMAP」をキーワードにして商標を検索すると6件出てきます。

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いずれも株式会社ジャニーズ事務所が権利者で、「第2286334号」の商標については「レコード」が指定商品とされています。
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とすると、アルバムに「SMAP NOW」という表記は付せないように思えますが、実はこれは商標法的には問題ありません。
というのもアルバムタイトルは、あくまでアルバムの内容を表すものであって、一般にはアルバムの発売元を示すものではないからです。
商標の主な機能は、自己の商品を他の商品と区別するための「目じるし」としての機能なのですが、アルバムタイトルはそのような「目じるし」の機能を果たすとは考えられていないのですね。

*ちなみに、現在の日本の特許庁の運用では、CDや音楽の演奏におけるアーティスト名は商標登録できないそうです。詳細は栗原潔弁理士のこちらの記事をご参照ください)。

したがってアルバムに「SMAP NOW」というタイトルを付したとしても少なくとも商標法的には問題ありません。
もちろん先ほどの著作権の問題と同じように、SMAPとジャーニーズ事務所の間の契約で「SMAP」という表記についての取り決めが必ずあるはずですから、現実的にはその契約に拘束され、「SMAP NOW」というタイトルは付せない可能性が高いものと思われます。

■著作権や商標権上は問題ないが、個別契約で困難な可能性が高い

以上のとおり、「SMAP NOW」というアルバムを何年か後に元メンバーが出そうとした場合、著作権上、商標権上の問題はないといえますが、現実的には個別の契約により拘束されている可能性が高いため、ジャニーズ事務所などの関係各位の了解なしにはかなり難しそうだと考えられます。
SMAPの存続を心より願いつつ、本日のエントリーでした。