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著作権

TPPが著作権に与える影響とは?(非親告罪化と法定賠償制度)

柿沼太一 柿沼太一

TPP(環太平洋経済連携協定)が著作権に与える影響について。
1 保護期間の延長
については前回の記事をご参照。
今回は
2 非親告罪化
3 法定賠償制度の導入
についてです。

■著作権の非親告罪化

現在の著作権法では、著作権の侵害があった場合、被害者である著作権者が告訴しなければ、処罰できないとされています(親告罪)。今回のTPP案は、一定の場合は告訴がなくても起訴できるように変更する、との内容になっています。
スライド2

内閣府による解説を引用します。

故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪とする。ただし、市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。

非親告罪化については「コミケなどの二次創作文化が発達している日本においては影響が大きすぎる」として各団体が反対意見を出していました。
この反対意見が功を奏したのか、「商業的規模の」「市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない」との限定が入りました。
ただしリークされた原文を見ると、「商業的規模の」という要件は
・ 経済的利益を求めての行為
・ 経済的利益目的ではなくても、市場で権利者に有害な影響を及ぼす行為
を少なくとも含む、とされるので(QQ.H.7.1項)かなり幅広い侵害が対象にはなりそうです。

さらに「市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合」という要件もよくわかりません。
たとえば少年漫画の二次創作物である同人誌をコミケで販売した場合はどうなるのでしょうか。少年漫画の「市場」と同人誌の「市場」は、ほぼ重なっていないものと考えられます。とすると仮に同人誌が爆発的に売れても少年漫画の市場における収益性に大きな影響を与えない、だから非親告罪となる、ということになるのでしょうか。
実際に日本で著作権法改正がされる場合に、どのような条文となるのか注目されます。

コミケの聖地、東京ビックサイト

コミケの聖地、東京ビックサイト

■法定賠償制度の導入

日本法(民法や著作権法)では、賠償請求できる金額は原則として「権利者が実際に被った損害」のみです。
ただ著作権が侵害された場合、「権利者が実際に被った損害」を証明するのは極めて難しいため、著作権法に推定規定が置かれています(著作権法114条)。
スライド3
ただ、メジャーな作品であれば損害額が高額に上ることもあるのですが、メジャーでない作品を無断コピーされた場合などは、推定規定を使っても、それほど高額な損害を立証することができませんでした。
そこで出てきたのが「法定損害賠償制度」です。

「法定損害賠償制度」は、実際に権利者が被った損害がいくらかにかかわらず一律に賠償金額を定める制度です。
法定損害賠償制度については、以前から議論されていました。たとえば著作物の無断アップロードについて「侵害を受けた1著作物につき10万円を最低額として損害賠償請求できることとする」などの案が出されています(文部科学省の著作権分科会)。
ただ「1著作物につき損害額10万円案」に対しては
・1著作物につき10万円の根拠はなにか
・同じ著作物について、同じ加害者が加害を繰り返した場合の損害額はどうなるのか
などの疑問が呈され、結局法制化に到りませんでした。
今回のTPPを受けて著作権法が改正されるとしても、法定損害賠償制度を具体的に制度化するのはかなり大変だろうなという印象です。

■まとめ

TPPの大筋合意を受けて「保護期間の延長」「非親告罪化」「法定損害賠償制度の導入」について簡単に見てきました。
今後、本当にTPPについて参加国内での批准ができるかどうかはまだ分かりませんが(特に米国についてはどうなるか、まだまだわからないと思います)、もし一定数以上の国の批准手続が済んで、条約が発効したとした場合、日本の著作権法は大きく変わることになるでしょう。