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著作権 SNS

「ちゃんりおメーカー」で作成したキャラをSNSに使ったら著作権侵害?

アバター画像 柿沼太一

自分にそっくりなサンリオ風キャラクターをつくることができる「ちゃんりおメーカー」が大人気だそうです(http://chanrio.com/)。

2015y08m24d_231956552ユーザーが顔の輪郭やパーツを自分で選んでキャラクターをつくることができるほか、顔写真をアップロードすることで、キャラクターを作成することもできるようです。
早速自分の顔写真を元にキャラを作ってみました。

001(HP用)ちゃんりお

似てる・・・・んでしょうか。
さて、気軽に作ったこのイラスト、私はこのように事務所のブログにアップしてみました。また、ツイッターやフェイスブックなどでは、自分でつくった「ちゃんりお」をアイコンに使ったり、投稿したりしている人が多いようですが、これって、著作権的には大丈夫なのでしょうか。
そういえばキャラの下にはしっかり「著作 株式会社サンリオ」って書いてある・・・

1 「ちゃんりおメーカー」の規約を読んでみる

わからないことがあれば、まず規約を確認しましょう。規約はここ(http://chanrio.com/#/agreement)にあります。

・ 「ちゃんりおメーカー」で作成されたキャラクター、イラスト等の著作物等に関する著作権、二次的著作権、工業所有権(これを受ける権利を含みます。)及びその他一切の権利、権益(著作権法第27条及び同第28条に規定する権利を含みます。)に関しては、編集されたものを含めて、全てサンリオエンターテインメントないし株式会社サンリオに帰属するものとします。
・ 「ちゃんりおメーカー」で作成されたキャラクター、イラスト等の利用について、下記の利用は禁止させていただきます。

※個人的・家庭的使用の範囲外での利用
※営利、広告宣伝目的での利用
※サンリオエンターテイメント、株式会社サンリオ及びサンリオブランドのイメージを損なうような利用
※公序良俗に反する利用
※その他サンリオエンターテイメントないし株式会社サンリオが不適切であると判断する利用
これらに該当する行為があった場合には、ただちに利用を中止していただきます。
ご利用にあたっては、ご本人以外の方の著作権、肖像権、名誉権、プライバシー等を侵害しないようご注意ください。
当社は、これらの権利の侵害について責任を負いかねます。

あれ・・・・?
「ちゃんりおメーカー」で作成されたキャラクターやイラストに関する著作権は、すべてサンリオに帰属すると書かれています。
ユーザーが作ったイラストの著作権がサンリオに帰属することになるってちょっと不自然な気もしますね。

2 そもそも誰の著作物なのか

ここで、そもそも「ちゃんりおメーカー」で作成されたキャラクターって著作物なのか、そしてもし著作物だとした場合、その著作権はどこで発生したのかを考えてみます。
「ちゃんりおメーカー」では、一応ユーザーが数あるパーツを組み合わせて1つのオリジナルキャラクターを作っています。パーツは既存のものとは言え、その組み合わせの数は相当数にのぼると思われるので、創作性があるものとして、著作物と考えていいのではないかと思います。

次に、このキャラクターの著作権はどこで発生しているか、つまり著作者は誰か、という問題ですが、著作権法は著作者について「著作物を創作する者」と定義しています(著作権法2条1項2号)。「ちゃんりおメーカー」において、パーツを選択した上で、自由に組み合わせているのはユーザーですから、キャラクターを作成したユーザーが著作者であると思われます。
もっとも、先ほどの私のキャラクターのように、顔認証を利用して自動的に生成されたキャラクターの著作者の場合は、また別に考える必要があるでしょう。機械によって創作された創作物の著作権者は誰なのか、というのは非常に興味深い問題なのですが、大幅に脱線しそうなので、ちょっとここでは触れません。

で、ここまでで、「ちゃんりおメーカー」で制作したキャラクターについては
・ 著作物である
・ 著作者は各ユーザーである(顔認証による自動生成を除く)
ということになりました。

3 利用規約によって権利移転しているが・・・

もっとも、先ほど述べたように、利用規約においては、「ちゃんりおメーカー」で作成されたキャラクターやイラストに関する著作権は、すべてサンリオに帰属すると書かれてています。ですので、法的には、いったんユーザーの元で発生したキャラクターに関する著作権が、この利用規約によってサンリオに移転していると考えるべきなのでしょう。ただ、実はここの部分はいろいろ考えるとよくわからない部分もあります。

たとえば、クレヨン販売業者が「このクレヨンで描いた絵の著作権はすべてクレヨン製造者に帰属する」という条件でクレヨンを販売した場合、その条件は有効なのでしょうか(買う人たぶんいませんが)。あるいは、ネット上のオリジナルペイントツールを制作した人が「このツールで描いた絵の著作権はすべてツール開発者に帰属する」という利用規約の下でツールを提供した場合、この利用規約は有効なのでしょうか。

「この条件に同意しないとツールを使えない」という意味では、クレヨンもペイントツールも「ちゃんりおメーカー」も同じなのですが、さすがにクレヨンについては「それはないんじゃないの」と思う方が多いのではないでしょうか。わたしも同じ感覚です。法律的には公序良俗違反などによって無効になる可能性があるのではないかと思います。

この感覚的な差がどこから来るかというと、おそらく、成果物の創作性の高さに、ツール提供者とユーザーのどちらがどれだけ寄与したか、の程度なのでしょう。クレヨンを使って絵を描く場合、その成果物である絵は100パーセントユーザーの創作物です。そのクレヨンを使わなくても同じような絵を描けるからです。しかし、オリジナルペイントツールの場合、そのツールを使わなければ実現できない表現があるかもしれません。その場合は、成果物の創作性の一定割合は当該ツールに負っていると言ってもいいでしょう。

「ちゃんりおメーカー」についても同じです。「ちゃんおりメーカー」を使わなければ作成できないキャラクターですから、その著作権がツール提供者に移転するとしてもそれほど違和感はありませんし、公序良俗違反によって規約が無効ということもあり得ません。

4 ただ実際にはかなり自由に利用できる

このように、「ちゃんりおメーカー」の利用規約上は、著作権はサンリオに移転するとなっています。
そうすると、「ちゃんりおメーカー」で作成したキャラクターは、著作権法の例外に該当しない限り、サンリオの許諾なしには利用できないと言うことになります。
したがって、原則として、キャラクターを利用する行為、たとえば、キャラクターをSNSアカウントのアイコンとして利用する、SNSに投稿する、販売するといった行為は、全てサンリオの許諾無くしては行えないことになります。
また、『ネット上に公開されている有名人が作ったキャラクターを真似して、キャラクターを作る』といった行為も、有名人ではなく、サンリオの著作権を侵害する可能性があるということになります。
ただ、実は公式サイトでは、SNSではかなり自由に利用できることになっています。
ちゃんりおQ&A(http://chanrio.com/#/faq)ではこのように書いてあります。
2015y08m24d_230736408
すばらしい。
これは、先ほどの利用規約を一部変更するもので、営業戦略上、一定の著作物利用行為についてはサンリオが予め許諾している、ということなのでしょう。
なので、SNSで使うのであれば、著作権侵害にはなりません。
もちろん、このちゃんりおQ&Aには、以下のような記載もあります。

2015y08m24d_231214329

なので、営利目的での使用は原則どおりアウトということになりますね。

ちなみに、このブログで私のキャラクターを掲載する行為が著作権侵害になるのかどうかですが、優しいサンリオなので多分大丈夫だと思います。