いくらならそのサイトは買いなのか?266件のウェブサイト売買事例を分析して分かったサイト購入時のポイント
サイトを買う場合、いくらであればそのサイトは「買い」なのか、言い換えればサイト売買代金の相場はどの程度なのかというのは、買い手の最も大きな関心事です。
そこで、今回は以下の2つをご紹介。
2.266件の売買事例を分析して分かった、サイト売買における売買金額の相場
サイト購入を検討する際は、サイト売買仲介業者の「案件一覧表」を見て購入対象のサイトを吟味することがほとんどだと思われます。
たとえば以下は、GMOインターネット株式会社が運営するサイトM&A。
上段のメニューから「案件一覧」をクリックすると、現在売りに出ているサイトの一覧表(案件一覧表)が表示されます。
上記の案件一覧表画像のうち、最上段に表示されてる「[S-4520]地域密着ブログポータルサイト 2サイトセット」をクリックすると、以下の詳細情報が表示されます。
詳細情報ページには
- 月間PV
- 月間UU
- 会員数
- 月間売上
- 月間費用
- 営業利益
などが掲載されていますが、これだけでは果たしてそのサイトが「買い」なのか、判断がつきにくいです。
そこで今回は、そのサイトが「買い」かどうかを判断する指標について紹介をしましょう。
Contents
■売上高利益率をまず見よう
そもそもある事業について「儲かっている・儲かっていない」はどのように判断するのでしょうか。
売上が多いこと?利益が大きいこと?
売上が多くても経費が多ければ、手元に残る利益は少なくなるので「売上が多い=儲かる」ではないのは分かりますよね。
では「利益」はどうでしょうか。
ここに2つのサイト購入案件があるとします。
サイトA
販売価格:3000万円
年間売上高:3000万円
年間利益:900万円
サイトB
販売価格:4000万円
年間売上高:2000万円
年間利益:1000万円
純粋に財務的な視点だけから検討した場合、どちらのサイトを購入すべきでしょうか。
売上高はサイトAの方が多いですが、利益はサイトBの方が多いです。そもそも売上高が違うのだから、単純に利益だけを比較することはできないのではないことはすぐわかりますよね。
「儲かっているかどうか」を判断する1つめの指標となるのが売上高利益率です。
これは「利益/売上高」により算出されます。
上記の例で計算してみると、
サイトA
年間利益900万円/年間売上高3000万円=30%
サイトB
年間利益1000万円/年間売上高2000万円=50%
となり、売上高利益率ではサイトBに軍配が上がることになります。
しかし我々が知りたいのは「このサイトはいくらであれば『買い』なのか」ですので、投資額(=購入金額)を考慮しない売上高利益率だけでは単純比較はできません。
そこで以下の資本回転率も考慮することになります。
■資本回転率も考慮しなければダメ
購入金額も考慮する必要があると考えて、もう一度同じ数字を見てみましょう。
サイトA
販売価格:3000万円
年間売上高:3000万円
年間利益:900万円
サイトB
販売価格:4000万円
年間売上高:2000万円
年間利益:1000万円
どちらのサイトの方が、効率良く初期投資(=購入金額)を早く回収できるでしょうか。
ここで出てくるのが資本回転率という指標です。
本来は企業経営において「貸借対照表上の総資本をいかに効率的に利用しているか」の指標ですが、サイト売買のような投資案件において適正な投資先を検討する際にも使えます。
資本回転率とは
「売上高/投資額」(回)
という指標です。回転率は高ければ高いほど良いといえます。少ない投資で高い売上を上げており、初期投資の効率がいいと考えられるためです。
上記の例で言うと
サイトA
年間売上高3000万円/購入価格3000万円=1.0回転
サイトB
年間売上高2000万円/購入価格4000万円=0.5回転
ですので、資本回転率ではサイトAに軍配が上がることになります。
■結局は「投資利益率(ROI)」で判断すべき!
以上、売上高利益率と資本回転率を見てきました。この2つの指標が高いサイトを購入すべきということになりますが、この2つの指標を1つの指標で表せないでしょうか。もう一度復習です。
売上高利益率:利益/売上高
資本回転率:売上高/投資額
でした。
両方とも高い方が良いということは、両方を掛け合わせたものが高い方が良いとも言えます。
この両方(売上高利益率と資本回転率)を掛け合わせるとどうなるでしょうか。
売上高利益率×資本回転率
=利益/売上高×売上高/投資額
=利益/投資額 (売上高は約分されて消える)
この「利益/投資額」こそが投資利益率(ROI)と呼ばれる指標です。
投資利益率(ROI)が意味するのは、売上が多くても利益が低くては意味がないし、利益が出ていても初期投資が大きすぎては意味がないということ。
したがって、複数の購入検討しているサイトがある場合には、この投資利益率(ROI)が最も高いものを選ぶべき、ということになります。
先ほどの例で言いますと
サイトA
ROI=年間利益900万円/販売価格3000万円=30%
サイトB
ROI=年間利益:1000万円/販売価格4000万円=25%
となり、サイトAを購入すべき、ということになります。
■266件のサイト売買事例を分析してわかったサイト売買における売買金額の相場
ここまでで「売上高利益率」「資本回転率」「投資利益率(ROI」)がサイト購入時の指標として使えるということが分かりました。
では実際のサイト売買市場を、これらの指標を用いて分析してみましょう。
先ほどのサイトM&Aに掲載されている実際の成約事例を用います。対象とした売買事例は、以下の基準で選定しました。
- サイトM&Aの案件一覧に掲載されている成約事例
- 売却希望金額【応相談】は除外
- 営業利益0以下は除外
上記基準に合致する取引事例は266個。これをエクセルでまとめる。。
取引事例266個を元に「売上高利益率」「資本回転率」「投資利益率(ROI)」の中央値と平均値をまとめたのが以下の表です。
売却希望価格
(円) |
年間売上高
(円) |
年間営業利益
(円) |
売上高利益率
(%) |
資本回転率
(回) |
投資利益率(ROI)
(%) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
中央値 | 3,190,000 | 4,578,000 | 2,292,168 | 63.5 | 1.20 | 61.7 |
平均値 | 8,975,831 | 14,565,986 | 5,372,740 | 59.0 | 2.00 | 79.6 |
サイト購入に際しては、「売上高利益率」「資本回転率」「投資利益率(ROI)」の中央値が1つの指標となりそうです。中央値以上の案件を探すということですね。
さらに266件の事例について「売上高利益率」と「投資利益率(ROI)」の度数分布表(ヒストグラム)を作ってみました。
まず「売上高利益率」です。
売上高利益率90%から100%のサイトが最多(66個)となりました。
通常の投資案件としては考えられないくらいの高利益率ですが、サイト運営に関しては経費が低くて済むことが多いので、このような結果になっているのかもしれません。
もっともこれらのサイトの売上高利益率が高い理由は様々(扱っている商材が特殊、会員数を維持するためにかなりの労力が必要等)ですので、実際に購入するに際しては、当該サイトの利益率が高い理由をよくよく見定めた上で、その利益率を購入後も維持できるかは慎重に検討すべきです。
安易に期待を抱いて購入したためにトラブルになるケースも多々ありますので、当事務所が実際に相談を受けたケースを元に作成した記事「弁護士が教える「サイト売買に失敗しないために必ず知っておきたい4つの鉄則」もご参照ください。
つぎに「投資利益率(ROI)」。
最も多い階層が投資利益率40~60%で、49個((全体との割合で言うと18%)、投資利益率20%~60%までの事例が94個(全体との割合で言うと35%)であることがわかります。ですので今後サイトを購入しようとする場合は投資利益率(ROI)20~60%が一つの目安となるのかもしれません。
なお投資利益率(ROI)とサイトのジャンルやタイプについても相関関係があるかと思って調べてみたのですが、明確な関係は見つかりませんでした。残念。
■まとめ
▼ サイトを購入する際には「売上高利益率」「資本回転率」「投資利益率(ROI)」を指標として検討する
▼ 売上高利益率=利益/売上高
▼ 資本回転率=売上高/投資額
▼ 投資利益率(ROI)=利益/投資額
▼ 売上高利益率が高いサイトを購入する際には慎重に。
▼ サイト購入を検討する場合は、投資利益率(ROI)20~60%が一つの目安といえるかも。