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弁護士が教える、ウェブサイト売買契約に失敗しないために知っておくべき4つの鉄則

私たちは、これまでサイト売買に関する法律相談をかなりの数受けてきました。
沢山の相談を受けている中で「サイト売買に失敗しないために必ず知っておきたい4つの鉄則」が見えてきましたのでご紹介したいと思います。

  1. 売買条件を確実に履行して欲しいなら、必ず契約書に書く
  2. 契約書に「競業禁止条項」を入れないと最初から強力なライバルを抱えることになる
  3. 楽天などのモール内の店舗は売買できない
  4. サイト売買に際しての個人情報売買には注意する

■売買条件を確実に履行して欲しいなら、必ず契約書に書く

Business man holding yellow promise sign on hand

ある特殊な商材のECサイトを購入したが、その際に商材の仕入れ先も紹介してもらった。サイトを購入した後で紹介してもらった仕入れ先に商品購入を申し込んだところ、購入できる数量に上限があったことが発覚。こんな上限があったのでは見込んでいた売上には見込めない。どうしたらよいか。

サイト売買仲介サイトで、あるまとめブログを15,000,000円で購入したが、購入前の説明では「月間収入:2,000,000円」「月間PV:150,000」「UU数:100,000」と聞いていた。実際に運営してみると、収入もPVもUUもその半分も行っていない。詐欺にあった気分。このサイトを返却して購入代金を取り戻したい。可能でしょうか。

サイト購入時に示された「売上、利益、PV、仕入れルート等々」を見込んで購入したが、実際に運営を開始してみると売上や利益が低いままだ、あるいは紹介された仕入先から仕入れができない、などの相談は非常に多いです。
こういった場合、サイトに「隠れた瑕疵」があるとして契約解除・損害賠償など瑕疵担保責任(民法570条、566条)を請求できるケースもあります。
しかし「紹介を受けた仕入れ先から仕入れられないこと」が「隠れた瑕疵」に該当すると明確に言えない場合もありますし、「「売上、利益、PV」などはあくまで目安であり様々な事情によって変動することもあるため「隠れた瑕疵」に該当しないケースが多いと思われます。
したがって「譲渡時の売却条件は、譲り受けた後も変わりないだろう」と安易に思い込んでサイトを購入すると大きなトラブルになります。
一番確実な方法としては、契約書でこれらの条件について「表明・保証」してもらうことです。
たとえば
・売主は、本契約締結後1年間は、下記の商材を下記仕入れ先から下記数量以上仕入れることができることを表明・保証する
などです。
サイト売買に関する売買契約書では「表明・保証」条項として以下のような条項が入っていることも多いのですが、抽象的な表現だと効果に問題が生じることがあります。なるべく具体的に記載することがポイントです。

【条項例】
1 本件事業に関し,甲は乙に対し,本契約締結日現在及び譲渡基準日現在において,以下の事項が真実かつ正確であることにつき表明しかつ保証する。
(1)甲から乙に,譲渡基準日までに提供される本件事業に関する情報は,乙が本契約を締結するために必要かつ十分な情報を含んでおり,一切の虚偽が無いこと。また,これら以外に重要な事実は存在しないこと。
(2)以下略

サイト売買契約書のひな形は、当サイトで紹介しますので無料でご利用いただけます。
表明・保証条項以外にも重要な条項を盛り込んでありますので、是非ご参考に。


■「競業禁止条項」を入れないと最初から強力なライバルを抱える

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あるウェブサイトを購入したのですが、購入後しばらくして、サイトの売主が、私に売ったサイトとよく似た別のサイトを運営しているのを発見しました。私にサイトを売っておきながらライバルサイトを運営するとはひどいと思います。何か文句は言えないのでしょうか。

これもよく受ける相談です。
事例によっては、サイトを売却する前から、売却を見越して同種サイトを開設していた悪質なパターンすらあります。
こうなると、サイトを譲り受けたはいいが、スタート時点から強力なライバル(=サイト売主)がいることになり、期待していた収益を全くあげることができないことになりかねません。

このような事態を避けるためには、たとえば以下のような「競業避止義務」を定めておく必要があります。

甲は、直接または間接的に(関連会社を通じて行う場合も含む)譲渡基準日から2年間は、本件事業を営んではならない。

この競業禁止条項があれば、同種サイトの運営差止めや損害賠償請求が出来ます。
ではサイト売買契約書に競業禁止条項がない場合はどうなるでしょうか。
禁止条項がない場合は、当該サイト売買が会社法上の「事業譲渡」に該当するかどうかで結論が分かれます。
「事業譲渡」に該当するのであれば、会社法第21条で売主に競業避止義務が定められていますので、この条文に基づいて差止めや損害賠償請求をすることが出来ます(もっともそもそも「事業譲渡」に該当するか、「同一の事業」に該当するのかなどが問題になりますので簡単には認められるわけではありません)。
会社法等の「事業譲渡」に該当しない場合、競業避止義務は当然には発生しません。
このように、会社法上の「事業譲渡」に該当せず、事業譲渡契約書においても競業避止義務が定められていない場合には、買主としてはなかなか難しいことになります。たとえば信義則上(民法1条2項)、サイト売買契約における売主は譲渡対象となった事業と類似するようなサイトを一定期間運営しない義務がある、などの法的構成が考えられますが、必ずしも裁判所に認められるとは限りません。必ずサイト売買契約書においては競業避止義務の条項を定めておくことが必要です。


■楽天などのモール内の店舗は売買できない

楽天トップページ(http://www.rakuten.co.jp/)より

楽天トップページ(http://www.rakuten.co.jp/)より

楽天に出店している店舗2店舗を買収する予定で相手方と話を進めていますが、どのような契約書にしたらよいのでしょうか。

これもよくある質問ですが、結論としては「楽天などのモール内の店舗は売買できない」ということになります。

楽天市場の出店規約
には以下のように定められています。

第4条 権利の譲渡等
乙は、モールに出店する権利その他本契約に基づく一切の権利を譲渡、転貸、担保差入その他形態を問わず処分することはできない。

「楽天の店舗」というのは目に見えるものではなく、実際には「楽天との間の出店契約」という契約関係のことです。契約の譲渡に際しては、契約の相手方の同意が必要ですので、楽天がこのように出店規約で契約譲渡を明確に禁止している以上、店舗の売買はできないということになります。
 ですので、「楽天の店舗を買いませんか」という話が持ちかけられたときは十分注意するようにしてください。
 なお、この楽天規約第4条をクリアするために、一応考えられる手法としては以下のようなものがあります。

  • 現在の出店者が法人の場合は、法人ごと譲渡する
  • 「現在の出店者に法人を設立して貰って(あるいは会社分割をして貰って),当該法人に出店者名義を変更する」+「その後,当該法人の譲渡を受ける」
  • 出店者名義はそのまま残したままで,実際の事業だけ譲渡を受ける(「名義貸し」)

もっとも、いずれの方法も、それなりのリスクがあります。
特に「3」の名義貸しについては、上記出店規約4条に違反すると解釈され,ある日突然楽天からペナルティ(モールの閉鎖等)を科されるリスクがかなりあります。
1と2についても、楽天出店規約には、出店契約の解除事由として「乙(注:出店者)の信用状態に重大な変化が生じたとき」が列挙されていますので、この条項に該当すると解釈される可能性があるかもしれません。
いずれにしてもモール内の店舗の売買には十分注意してください。


■サイト売買に際しての個人情報売買には注意する

Protection of personal information.

友人の会社A社から、「サイトのクローズに伴い会員データ(氏名、メールアドレス等で、約1万人分あります)を有償で譲渡したい」との申し出を受けています。もし譲渡を受けることができたら、新たなサイトを当社で立ち上げ、会員データはそこに移転させる予定ですが、このような会員データの譲渡には問題はないのでしょうか。

サイトの譲渡をする場合、会員データの譲渡を伴うことがよくあります。
会員データは個人情報保護法上の「個人情報」に該当するケースがほとんどですが、個人情報の管理についてはますます法的な規制が厳しくなっている昨今、果たしてこのような個人情報の譲渡ができるのでしょうか。

個人情報を第三者に提供する場合には,当該ユーザーの承諾が必要となります(個人情報保護法(以下「法」)23条1項)。
したがって、今回のケースにおいても、原則として個々のユーザーの同意が必要となります。
もっとも、法律上は「合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合」には同意なくして第三者提供が認められています(法23条4項2号)。
この「合併その他の事由による事業の承継」には「合併、分社化により、新会社に個人データを渡す場合」「営業譲渡により、譲渡先企業に個人データを渡す場合」が含まれます(詳細については「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン(平成26年12月経済産業省)」「「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」等に関するQ&A」(2014年12月12日更新)」を参照してください)。
したがって、本件についても、これを利用して個人情報を譲渡することができると思います。
もっとも、個人情報の譲渡が認められるのは「営業譲渡」の場合だけですから、「サイトのクローズ+個人情報の譲渡」ではなく、サイトを含めた事業(個人情報を含む)ごとA社から譲渡を受けてください。
なお、事業譲渡を受けた後は、もともとA社が定めていた利用目的を超えて個人情報を利用することが出来ませんので、その点については注意をする必要があります。


■サイト売買に失敗しないために知っておきたい4つの鉄則まとめ

サイトを購入する際には以下の4つに十分注意すること。
▼ 売買条件を確実に履行して欲しいなら、必ず契約書に書く
▼ 契約書に「競業禁止条項」を入れないと最初から強力なライバルを抱えることになる
▼ 楽天などのモール内の店舗は売買できない
▼ サイト売買に際しての個人情報売買には注意する