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モバゲー利用規約に対して差止訴訟。もはや消費者契約法に違反する利用規約を定める時代ではない

杉浦健二 杉浦健二

DeNA社運営の「モバゲー」の利用規約は消費者契約法に反するとして、
NPO法人「埼玉消費者被害をなくす会」がモバゲー利用規約の使用差止を求める訴訟を提起しました。

モバゲー利用規約「違法」 弁護士らDeNAを提訴(産経ニュース)
https://www.sankei.com/affairs/news/180709/afr1807090010-n1.html

株式会社ディー・エヌ・エーに対して、差止請求訴訟を提起しました
(適格消費者団体 特定非営利活動法人埼玉消費者被害をなくす会)
http://saitama-higainakusukai.or.jp/topics/180709_01.html

自社が運営するサービスの利用規約が消費者契約法等の法律に違反する内容だった場合、レピュテーションリスク(自社に対する評判や評価が低下するリスク)のみならず、適格消費者団体から訴訟を提起されるリスクがあります。

『適格消費者団体』に与えられた差止請求を行う権利

消費者契約法は、不当な契約条項の使用などを行う事業者に対して差止請求を行う権利を、一定の要件を満たす消費者団体(適格消費者団体)に対して認めています。

消費者団体訴訟制度差止請求事例集によれば、平成 19 年 6 月から平成25年7月までの 6 年余に提起された差止請求訴訟は 30 件、うち17 件については訴訟が終了し、原告勝訴 5 件、和解 9 件、原告敗訴 3 件とのことです。

DeNA社に対してモバゲー利用規約の使用差止請求訴訟を提起したNPO法人「埼玉消費者被害をなくす会」も、適格消費者団体です。

適格消費者団体とのやり取りはすべてネットで公開されます。以下の記事にも詳しいです。
「責任を一切負わない」言い切り型利用規約でユーザーを諦めさせようとすると、適格消費者団体からお手紙が来ます(サインのリ・デザイン)

今回問題になったDeNA『モバゲー』利用規約の条項とは

原告のサイトで公開されている訴状によりますと、原告NPO法人「埼玉消費者被害をなくす会」が消費者契約法に違反していると主張とした『モバゲー』利用規約の条項以下の4点です。

第4条 携帯電話
3 携帯電話及びパスワードの管理不十分、使用上の過誤、第三者の使用等による損害の責任はモバゲー会員が負うものとし、当社は一切の責任を負いません。

原告NPOの主張
文言上、パスワードの管理不十分、使用上の過誤、第三者使用という事態が生じるに至った責任の所在が限定されておらず、すなわち被告に故意過失がある場合も含め、文言上、「被告が一切責任を負わない」条項であり消費者契約法8条1項1号もしくは3号に抵触する。

第7条 モバゲー会員規約の違反等について
1 モバゲー会員が以下の各号に該当した場合、当社は、当社の定める期間、本サービスの利用を認めないこと、又は、モバゲー会員の会員資格を取り消すことができるものとします。ただし、この場合も当社が受領した料金を返還しません。
a. 会員登録申込みの際の個人情報登録、及びモバゲー会員となった後の個人情報変更において、その内容に虚偽や不正があった場合、または重複した会員登録があった場合
b. 本サービスを利用せずに1年以上が経過した場合
c. 他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が判断した場合
d. 本規約及び個別規約に違反した場合
e. その他、モバゲー会員として不適切であると当社が判断した場合

3 当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても、当社は一切損害を賠償しません。

原告NPOの主張
「当社の措置」をとる事由として、第7条1項に「c.他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が判断した場合」「e.その他、モバゲー会員として不適切であると当社が判断した場合」を含む5つの事由が列挙されているが、「措置」をとるにあたって、その故意過失に基づき誤った判断をし、その結果、会員に損害を与える事態が生じた場合などを除外することなく、文言上、被告が一切損害を賠償しなくともよいという規定となっており、消費者契約法8条1項1号、3号に抵触する。

第10条 料金
1 モバゲー会員は、当社の定める有料コンテンツを利用する場合には、当社の定める金額の利用料金を当社の定める方法により当社の定める時期までに支払うものとします。また、当社は理由の如何にかかわらず、すでに支払われた利用料金を一切返還しません。

原告NPOの主張
モバゲー内におけるシステムトラブルによる二重課金や、コンテンツ内においてアイテム購入後にアイテムの性能の大幅な変更をすることなど、被告側の過失や債務不履行が想定される事態などを除外することなく、文言上、被告は受領した料金を返還しないという規定になっており、消費者契約法8条1項1号、3号に抵触する。

第12条 当社の責任
2 モバゲー会員は自らの責任に基づいて本サービスを利用するものとし、当社は本サービスにおけるモバゲー会員の一切の事項について何らの責任を負いません。
3 モバゲー会員は法律の範囲内で本サービスをご利用ください。本サービスの利用に関連してモバゲー会員が日本及び外国の法律に触れた場合でも、当社は一切責任を負いません。
4  本規約において当社の責任について規定していない場合で、当社の責めに帰すべき事由によりモバゲー会員に損害が生じた場合、当社は、1万円を上限として賠償します。
5 当社は、当社の故意または重大な過失によりモバゲー会員に損害を与えた場合には、その損害を賠償します。

原告NPOの主張
第12条第4項について、損害賠償1万円の支払い対象として「本規約において当社の責任について規定していない場合」との条件を付している。とすると、本規約内で責任を規定している条項、すなわち上記に挙げた第4条3項、第7条3項、第10条1項)は損害賠償1万円の対象にならないと解釈できる。したがって、第12条4項の「本規約において当社の責任について規定していない場合」については、消費者契約法8条1項1号、3号に抵触する。

以上の原告の主張をまとめると、
・パスワードの管理不十分などによって損害が生じた場合にもDeNA社は一切の責任を負わない(第4条3項)
・他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけた等とDeNA社が判断してサービス利用を停止したり会員資格を取り消したりしたことによりモバゲー会員に損害が生じた場合でもDeNA社は一切損害を賠償しない(第7条3項)
・理由の如何にかかわらず、すでに支払われた利用料金を一切返還しない(第10条1項)
・以上の3つの場合については、上限1万円の賠償対象としていないと解釈できる(第12条4項)
以上4つの点につき、消費者契約法8条1項1号及び3号に抵触する。

BtoC取引では消費者契約法を意識する

消費者契約法では以下のように定められています。
1 事業者の損害賠償責任の全部を免除する規定は無効(第8条1項1号・3号)
→軽過失の場合であっても、全部を免責するという規定は無効⇒一部免責ならOK
2 事業者に故意または重過失がある場合には、責任の一部を免除する規定も無効(第8条1項2号・4号)

したがってBtoC取引では、以下のライン(軽過失の場合に一部免責)以上に事業者の免責を認める規定を設けると、消費者契約法に違反することになります。

コインチェック社の利用規約は、「賠償する責任を一切負わない」と定めていたので、この部分は消費者契約法に反し無効となります。

(過去記事)コインチェックの「当社は賠償責任を一切負わない」と定める利用規約は有効なのか
https://storialaw.jp/blog/3834

ファーストサーバ社のZenlogicホスティング利用契約約款は、故意または重過失による場合のみ損害賠償責任を負い、かつ損害賠償額は利用者がこれまでに支払った利用料金額(最大過去12か月分)を上限とする内容です。しかしホスティング契約を行うのは通常事業者と考えられるため(BtoB取引)、消費者契約法が適用される場面は少ないものと考えられます。

(過去記事)ファーストサーバ社のレンタルサーバ「Zenlogic」で大規模障害。利用者は返金や損害賠償を請求できるのか
https://storialaw.jp/blog/4664

DeNA社は消費者契約法第8条に違反しないと主張した

原告サイトによれば、訴訟提起前の原告の申し入れに対し、DeNA社は
・指摘された各条項は、DeNA社に債務がないことを確認的に規定する趣旨に過ぎない(2016.8.26付回答書
・指摘された各条項は消費者契約法第8条に違反しない。DeNA社に故意重過失があった場合は損害賠償責任を負うし、軽過失があった場合は1万円を上限として損害賠償責任を負う(2016.12.21回答書
等を理由として、『モバゲー』利用規約の条項を変更する予定はないとの回答を行ったため、このたびの訴訟提起に至ったとのことでした。

モバゲー利用規約の問題点は、条文の優劣関係が不明確だったこと

『モバゲー』利用規約に問題があるとすれば、条文の優劣関係が明確でなかった点だと考えます。
『モバゲー』利用規約の第12条4項5項をみれば、DeNA社の回答書にもあるどおり、
・DeNA社に故意重過失があった場合は損害賠償責任を負います(第12条5項)
・軽過失があった場合は1万円を上限として損害賠償責任を負います(第12条4項)
と定められており、これらは消費者契約法上問題のない免責規定です。

しかし一方で、原告が問題とした各条項には「当社は一切の責任を負いません」(第4条3項)「当社は一切損害を賠償しません」(第7条3項)「理由の如何にかかわらず、すでに支払われた利用料金を一切返還しません」(第10条1項)と記載されており、これらの各条項と、第12条4項5項のいずれが優先して適用されるのかが明確ではなかったといえます。(平林弁護士のブログでも同様の指摘がなされています)

たとえば以下のような条項であれば、原告が問題とした各条項よりも第12条4項が優先して適用されることが明らかになるので、消費者契約法違反と主張されるリスクは相当に軽減されたのではないでしょうか。

(モバゲー利用規約 改定案)
第12条
4 本規約において当社の責任について規定していない場合で → 本規約の他の定めにかかわらず、当社の責めに帰すべき事由によりモバゲー会員に損害が生じた場合、当社は、1万円を上限として賠償します。
5 当社は、当社の故意または重大な過失によりモバゲー会員に損害を与えた場合には、その損害を賠償します。

利用規約内における条文の優劣関係は明確にしておく

事業者がいかに「こういう解釈で運用してるから消費者契約法に違反しない」と主張しても、条文の内容や優先関係が不明確であった場合には、今回のような適格消費者団体からの申し入れ・訴訟を受けるリスクが生じますし、そもそも利用規約の対象者であるユーザに混乱を招きかねません。
利用規約内における条文の優先関係を明確にしておくことは、今後さらに求められるようになってくるものと思われます。

以前の記事にも書きましたが、消費者契約法に抵触する利用規約を定めている企業に対しては「そのような遵法精神しか持ち合わせていない企業」または「消費者契約法すら知らない企業」との評価を受けるレピュテーションリスクがSNSの隆盛に比例して顕在化していますし、ひとたび適格消費者団体から申し入れや差止訴訟を受ければ、そのやりとりは訴訟前の段階からすべて公開されます。

もはや消費者契約法に違反する利用規約を定める時代ではありません。利用規約が消費者契約法に違反していた場合に抱えるリスクは相当に大きいので、自社の利用規約を昔作ったけど最近読んでないなーという企業は、見直しをするよい機会かもしれません(弁護士杉浦健二

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