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平成30年改正著作権法がビジネスに与える「衝撃」

柿沼太一 柿沼太一

■ はじめに

2019年1月1日に施行された平成30年改正著作権法は,「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備」「教育の情報化に対応した権利制限規定の整備」「障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備」「アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等」の4点をその内容としています。

このうちビジネスに与える影響が非常に大きいのは「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備」と思われます。
これは「規制が厳しくなり、今まで可能だった行為が不可能になった」という意味の影響ではなく「許容される範囲が広くなり、今まで不可能だった、あるいはグレーだったビジネスが可能になった」という意味です。

今回の記事では、著作権法改正により可能になったサービスについて解説してきたいと思います。
なお、この著作権改正がAI開発に及ぼす影響については下記記事をご参照ください。
【参考】
進化する機械学習パラダイス ~改正著作権法が日本のAI開発をさらに加速する~

たとえば以下のようなサービスは著作権法上適法でしょうか。

1 書籍検索サービス
特定分野の書籍を全てスキャン・デジタルデータ化した上で、特定のキーワード検索に応じて,その書誌情報や所在に関する情報の提供に付随して,書籍中の当該キーワードを含む文章の一部分を提供するサービス(例:Google Books
2 テレビ番組検索サービス
テレビやラジオで自分の関心のあるキーワードやフレーズがいつどのような形で放送されたかを調べることができるサービス(例:TVEyes
3 街中風景検索サービス
街中の風景を撮影したものでデータベースを構築し,ユーザーが周囲の風景(看板など)を撮影し検索することで,所在地の看板・店舗情報を提供するサービス(例:Google Street View
4 映画検索サービス
利用者がカメラで撮影した風景の写真に写っている建築物にまつわる映画について,タイトル等の関連情報とともに当該映画のサンプル画像や短時間のサンプル映像を提供するサービス
5 曲名検索サービス
周りで流れている音楽をスマホのマイクで取り込み、当該楽曲について,曲名やアーティスト名、アーティストの写真や楽曲の一部出力するサービス(例:Shazam
6 評判情報分析サービス
特定の情報(例えば店舗や企業,施設,人物等)についての評判に関する情報について,ブログや新聞,雑誌等で掲載されているのか等を調べることのできるサービス(例:ホットリンク社の「クチコミ係長」
7 論文剽窃検出サービス
検索対象の論文(例えば,研究機関に提出される論文)について,その論文と同じ記述を有する他の論文の有無を示すことにより,論文の剽窃の可能性を検出するサービス(例:アンク社の「コピペルナー」

■ 「所在検索サービス」「情報分析サービス」を立ち上げる際にチェックすべき事項

これらのサービスは、いわゆる「所在検索サービス」「情報分析サービス」と言われるサービスですが、共通しているのは、いずれも「事業者による情報収集・蓄積」(ウェブ上の情報であればクローリング)→「事業者によるデータベース(DB)の作成・蓄積」→「ユーザからのリクエストに応じて事業者が何らかの結果を提供する」という流れのサービスであることです。

事業者が「収集・蓄積する情報の種類」は、ものすごくおおざっぱに分類すると「インターネット上の情報」と「現実世界の情報」に分かれます。
また、「提供される結果の内容」についても、「収集した著作物の利用(自動公衆送信等)を伴うものと伴わないものがあります。
上図を別の視点から整理したのが下記の表です。
このように、「所在検索サービス」「情報分析サービス」を立ち上げる際には、「収集・蓄積する情報の種類」と「提供される結果の内容」に分けて考えるとわかりやすいです。

たとえば、先ほどの「書籍検索サービス」では、「収集する情報」は、「現実に出版されている書籍内及び当該書籍に関する情報」であり、「提供される結果の内容」は、「書誌情報や所在に関する情報(これは収集した著作物の利用を伴いません)及び「書籍中の当該キーワードを含む文章の一部分(これは収集した著作物の利用を伴います)」です。

次に、「評判情報分析サービス」であるホットリンク社の「クチコミ係長」では、「収集する情報」は「ネット上の口コミ情報」であり、「提供される結果の内容」は「投稿数の推移」「話題内容の傾向」「時期による傾向」(「分析結果」であって収集した著作物の利用を伴わない)というサービスのようです。このようなサービスですと、以下の図のような整理になります。

■ 著作権法上の問題

「所在検索サービス」「情報分析サービス」を提供する場合の壁は著作権法でした。
つまり「事業者による情報収集・蓄積」→「事業者によるDBの作成・蓄積」→「ユーザからのリクエストに応じて事業者が何らかの結果を提供する」のいずれにおいても、第三者の著作物を利用するためです。
 すなわち「事業者による情報収集・蓄積」「「事業者によるDBの作成・蓄積」においては、いずれも対象著作物を「複製」することになりますし、「ユーザからのリクエストに応じて事業者が何らかの結果を提供する」において、収集した著作物を利用する場合には、当該著作物の「自動公衆送信」をすることになるのです。

ちなみに、著作権法改正前でも、一部の「所在検索サービス」は著作権法上の明文規定で認められていました。
皆さんご存じの「WEB検索サービス」です。
WEB検索サービスにおける「収集する情報の種類」はインターネット上の情報(送信可能化された情報)であり、「提供される結果の内容」は「該当サイトのURL+サイトのスニペット・サムネイル等」です。そして「提供される結果の内容」のうち「該当サイトのURL」部分は単なる文字列ですので、元の著作物の利用を伴っていませんが、「サイトのスニペット・サムネイル等」については元の著作物の利用を伴っています。

別の図で整理するとこんな感じです。

所在検索サービスのうち、WEB検索サービスに限っては、旧著作権法でも、適法であることが明記されていました。
具体的には、旧著作権法47条の6です(読みやすいように括弧以外の部分を太字にしています。以下本記事で同じ)。

(送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等)
第四十七条の六
公衆からの求めに応じ、送信可能化された情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。以下この条において同じ。)を検索し、及びその結果を提供することを業として行う者(当該事業の一部を行う者を含み、送信可能化された情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、当該検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、送信可能化された著作物(当該著作物に係る自動公衆送信について受信者を識別するための情報の入力を求めることその他の受信を制限するための手段が講じられている場合にあつては、当該自動公衆送信の受信について当該手段を講じた者の承諾を得たものに限る。)について、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行い、及び公衆からの求めに応じ、当該求めに関する送信可能化された情報に係る送信元識別符号の提供と併せて、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物(当該著作物に係る当該二次的著作物の複製物を含む。以下この条において「検索結果提供用記録」という。)のうち当該送信元識別符号に係るものを用いて自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。
ただし、当該検索結果提供用記録に係る著作物に係る送信可能化が著作権を侵害するものであること(国外で行われた送信可能化にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知つたときは、その後は、当該検索結果提供用記録を用いた自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行つてはならない

言い換えれば、旧著作権法の下では、「収集する情報の種類」はインターネット上の情報(送信可能化された情報)であり、「提供される結果の内容」は「該当サイトのURL+サイトのスニペット・サムネイル等の表示」に限って適法とされていたということです。

■ 何が法改正により可能になったのか?

では、今般の著作権法改正により、何が可能になったのでしょうか。

1 新47条の5によって
2 「所在検索サービス」「情報解析サービス」「その他政令で定めるサービス」において
3 「収集できる情報の種類」として「インターネット上の情報(送信可能化された情報)」に加えて「現実世界の情報」が含まれることが明確になった(著作権者の同意を得て公表された著作物に限ります)
4 「提供される結果の内容」として、旧著作権法47条の6に定める「該当サイトのURL+サイトのスニペット・サムネイル等」に限られず、一定限度の元著作物の利用(法律上は「軽微利用」と定義されています)も可能になった

ということです。

新47条の5の条文は以下のようになっています。旧47条の6よりも更に複雑になっています。

(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)
第四十七条の五
電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによつて著作物の利用の促進に資する次の各号に掲げる行為を行う者(当該行為の一部を行う者を含み、当該行為を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆への提供又は提示(送信可能化を含む。以下この条において同じ。)が行われた著作物(以下この条及び次条第二項第二号において「公衆提供提示著作物」という。)(公表された著作物又は送信可能化された著作物に限る。)について、当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、いずれの方法によるかを問わず、利用(当該公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。以下この条において「軽微利用」という。)を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物に係る公衆への提供又は提示が著作権を侵害するものであること(国外で行われた公衆への提供又は提示にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知りながら当該軽微利用を行う場合その他当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 電子計算機を用いて、検索により求める情報(以下この号において「検索情報」という。)が記録された著作物の題号又は著作者名、送信可能化された検索情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。)その他の検索情報の特定又は所在に関する情報を検索し、及びその結果を提供すること。
二 電子計算機による情報解析を行い、及びその結果を提供すること。
三 前二号に掲げるもののほか、電子計算機による情報処理により、新たな知見又は情報を創出し、及びその結果を提供する行為であつて、国民生活の利便性の向上に寄与するものとして政令で定めるもの

2 前項各号に掲げる行為の準備を行う者(当該行為の準備のための情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆提供提示著作物について、同項の規定による軽微利用の準備のために必要と認められる限度において、複製若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項及び次条第二項第二号において同じ。)を行い、又はその複製物による頒布を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該複製又は頒布の部数及び当該複製、公衆送信又は頒布の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

ものすごくざっくり言うと、「所在検索サービス」「情報解析サービス」「その他政令で定めるサービス」(1項1号、2号、3号)に関し、「情報収集」の部分は2項で、「結果提供(軽微利用)」の部分は1項で適法になったということです。
以下のようなイメージです。

以下「収集できる情報の種類」と「提供される結果の内容」に分けて説明します。

■ 収集できる情報の種類

先ほど例としてあげた「書籍検索サービス」「テレビ番組検索サービス」「街中風景検索サービス」「映画検索サービス」「曲名検索サービス」「評判情報分析サービス」「論文剽窃検出サービス」は、いずれも「インターネット上の情報(送信可能化された情報)」に加えて「現実世界の情報」も対象にするサービスです。
新著作権法47条の5により、これら「現実世界の情報」(公表された著作物に限ります)を収集することが適法であることが明確化されました(なお、後述の「軽微利用」を伴わなければ、改正著作権法施行前でも、著作権法第47条の7(情報解析)等の規定を用いてこれらのサービスを提供することは一部可能だったと思われます。)。

■ 提供される結果の内容:軽微利用

先ほど述べたように著作権法改正前の段階で、元著作物の利用方法として明文上認められていたのは「WEB検索サービスにおける対象サイトのスニペット・サムネイルの提供」だけでしたが、今般の改正により「軽微利用」に該当すれば元著作物の利用が認められることになりました。

軽微利用とは、条文上は「当該公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なもの」とされています。
問題は、具体的にどこまでが「軽微利用」として認められるかという点なのですが、Google Booksでは,「ユーザーに対して表示される検索結果に表示されるのは通常1ページの8分の1であり,書籍全体のうち10%の領域は予め表示対象から除外されている。また,辞書,レシピ,俳句のような短文詩は表示対象から除外される。」(文化審議会著作権分科会報告書(平成29年4月)49頁)ということですので、「軽微利用」該当性の参考になるかもしれません。

また、立法過程の資料には「軽微利用」について以下のように記載されています。基本的には「軽微利用か否か」は外形的に判断し、利用目的や著作権者の不利益の程度は、但し書きで評価するということとなのだと思います。

著作権法の一部を改正する法律(平成30年改正)について(解説)・32頁】
公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合」は,例えば楽曲であれば全体の演奏時間のうち何パーセントに当たる時間が利用されているか,「その利用に供される部分の量」は,例えば小説であればどの程度の文字数が利用されているか,「その利用に供される際の表示の精度」は,例えば写真の画像データであればどの程度の画素数で利用されているか,「その他の要素」としては,例えば紙媒体での「表示の大きさ」などが想定され,写真の紙面への掲載であれば何平方センチメートルの大きさで利用されているか,といったことがそれぞれ意味されるものと考えられる。なお,「軽微」に該当するか否かの判断にあたって,例えば利用目的に公共性があるかといった点は考慮されない。

文化審議会著作権分科会報告書(平成29年4月)・49頁】
例えば,辞書・辞典の各項目や俳句等の言語の著作物の全部表示,写真・絵画の精細な画像の表示,言語の著作物や音楽・映像の,短い一部分を超える表示等が行われるような場合,「軽微」な範囲を超えるものと評価される場合もあるものと考えられ,そのような場合は権利制限の対象とならないような制度設計とする必要がある。

ちなみに、この報告書の49頁の脚注には「具体的には,購入者以外には部分的・軽微なものを含めその中身を一切見せないことによって購入意欲をかき立て,収益の最大化を図るという戦略の下で販売されているアイドルの写真集等について検討を行った。」という非常に興味深い記述があるのですが、議事録には、どのアイドルの写真集について、具体的にどのような検討を行ったかが一切記載されていないようで、非常に残念です。断固抗議したいと思います。

■ その他の要件

新47条の5が適用されるための要件はその他にも色々あるのですが、細かいのですが注意を要するのは「一定要件にしたがって情報収集・結果提供をしなければならない」という点です。

具体的には、1項の「当該行為を政令で定める基準に従つて行う者」2項の「当該行為の準備のための情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者」とは、どのような者かという点です。

この点については、改正著作権法施行令改正著作権法施行規則に定められていますが、ざっくり整理したのが以下の表です(正確なところは条文をご参照下さい)

■ まとめ

以下まとめです。

▼ 「書籍検索サービス」「テレビ番組検索サービス」「街中風景検索サービス」「映画検索サービス」「曲名検索サービス」「評判情報分析サービス」「論文剽窃検出サービス」など、いわば「リアルワールド検索サービス」「情報解析サービス」が一定の要件の下で適法となった。
▼ これらのサービスでは、「軽微利用」など一定の要件を満たせば既存の著作物を自由に利用可能。
▼ 細かいところだが、収集できる情報の範囲に限定があることに注意。

これら新規ビジネスをお考えの方の参考になれば幸いです!

弁護士柿沼太一

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