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人工知能(AI)、ビッグデータ法務 ヘルスケア スタートアップ

【連載】法規制、契約、知的財産の観点から見るAI医療機器開発

アバター画像 柿沼太一

本連載の内容

 近時、情報技術(IT)、インターネット、モバイルデバイス、ウェアラブル技術、人工知能(AI)、ロボティクスなどのデジタル技術を医療分野に応用し、患者の健康管理や医療サービスの提供を効率化・最適化することを目的としたデジタルヘルスケアの取り組みが増加しています。
 この背景には、高齢化社会による医療費の増加や医療人材の不足、そして感染症の拡大などの課題があり、デジタル技術を活用して効率的かつ効果的な医療サービスを提供し、医療アクセスの向上や健康格差の解消を目指す動きが活発化しています。
 今後、デジタルヘルスケアはさらなる進化を遂げ、患者と医療従事者の双方にとって利益をもたらす革新的なサービスが開発されることが期待されています。
 本連載記事では、デジタルヘルスケア領域のうち、まずAI医療機器について詳細に解説をします。
 AI医療機器の開発や提供を法的な面から見た特徴は3つあります。

1 個人情報保護法制や研究規制、薬事規制を含む複雑な法規制のクリアが必要

 AI医療機器も医療機器の一種ですので、医療機器の開発に関する法規制をクリアする必要があるのは当然ですが、AI医療機器の場合、開発に大量の医療データを用いるため、通常の開発規制に加え、個人情報保護法制のクリアが非常に重要となります。
 医療データに関する個人情報保護法制は、個人情報保護法と研究規制(倫理指針等)が非常に複雑に絡み合っており、全体的な把握が難しい法領域です。

2 他のプレイヤーとのアライアンスが必須

 また、AI医療機器開発は開発から市場での提供までに長い時間がかかり、その過程で第三者との間で様々なアライアンスを組む必要があります。
 たとえば、AIの開発フェーズにおいては、医療データを保有している医療機関との間のデータ提供契約、共同研究契約や、データの加工に関する各種契約(匿名加工委託契約、アノテーション契約)が必須ですし、ハードウェアを開発・製造するのであればその部分についての契約も必要です。
 さらに、特にスタートアップの場合、開発したAI医療機器を広く提供するために、他の事業会社(医療機器メーカーや卸業者)などとアライアンスを組むことも多いため、その点に関する契約も必要となります。

3 医療データや成果物に関する知的財産権

 最後に、AI医療機器開発に際しては、開発に用いられる医療データや成果物であるAIモデルに関する知的財産権をどのように扱うかも問題となります。

 本連載記事では、AI医療機器の開発や提供に関するフェーズごとに、法規制と契約、知的財産の取扱について、できるだけ実践的な内容で解説することを目指しています。
 AI医療機器の開発に関わるスタートアップや事業者のみなさんのお役に立てば幸いです。

目次(予定)

第1 【第1回】AI医療機器の開発からサービス提供までの流れと法規制・契約
第2 医療データ収集段階の規制と契約
 1 【第2回】AI医療機器開発のための医療データ収集と個人情報保護法
 2 【第3回】AI医療機器開発に関する臨床研究・医学系研究関連規制
第3 AI医療機器開発・ハードウェア製造段階の規制と契約
第4 治験・薬事承認・保険収載段階の規制と契約
第5 サービス提供段階の規制と契約