インターネット 著作権
TPPが著作権に与える影響とは?(保護期間の延長)
ようやく大筋合意にたどり着いたTPP(環太平洋経済連携協定)。
著作権については
1 保護期間の延長
2 非親告罪化
3 法定賠償制度の導入
といった影響がありそうです。
TPPが著作権に与える影響についてまとめました。
■政府発表の概要
10月5日に内閣官房TPP政府対策本部が発表したTPP協定の概要はこちらです。著作権に関する部分は以下のとおり。
1 著作物(映画を含む)、実演又はレコードの保護期間を以下の通りとする。
(1) 自然人の生存期間に基づき計算される場合には、著作者の生存期間及び著作者の死から少なくとも70年
(2) 自然人の生存期間に基づき計算されない場合には、次のいずれかの期間
ア 当該著作物、実演又はレコードの権利者の許諾を得た最初の公表の年の終わりから少なくとも70年
イ 当該著作物、実演又はレコードの創作から一定期間内に権利者の許諾を得た公表が行われない場合には、当該著作物、実演又はレコードの創作の年の終わりから少なくとも70年
2 故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪とする。ただし、市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。
3 著作権等の侵害について、法定損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける。
日経新聞の記事では
1 保護期間の延長
2 非親告罪化
3 法定賠償制度の導入
4 違法ダウンロードの対象を拡張
について書いてあります。ただ4については、TPPにおける合意ではなく2013年4月(日本がTPP交渉参加した時点)における日米合意に基づくもののようですので今回は省略します(なお、日経の記事は「電子書籍・ソフトも海賊版取り締まり 政府、TPP対応 」という見出しになっていますが、ちょっとミスリーディングだと思います。今回のTPPの大筋合意は海賊版取り締まりを主たる目的とするものではないので。)。
■著作権保護期間の延長
著作権が保護される期間について、現在は著作者の死後50年ですが(著作権法51条2項)、少なくとも70年に延長されることになります。
よく昔の本や映画がワゴンセールで安く売られたりしてますが、あれは著作権が切れた作品なので安く提供できるわけです(著作権が発生してなかったり消滅した状態のことをパブリックドメインといいます)。
保護期間が延長された場合、パブリックドメインにならない著作物が増えます。著作権が切れた本などを無償で提供している青空文庫は「著作権保護期間がさらに20年延びることによって、これまで産み落とされてきた無数の本に、そして将来の世界の文化に、いったいどれだけ資することがあるのか、疑問を抱かざるを得ません」と保護期間の延長に反対しています。
私自身も
・保護期間が延長されたとしても、権利者の収入は特に増えず、インセンティブ増加にはつながらないのでは
・コンテンツ大国のアメリカと日本の格差を固定化するだけではないか
と考えており、保護期間を延長する効果には疑問をもっています。
ただ仮にTPPの内容どおりに著作権法が改正されて保護期間が70年に延長されたとしても、過去の作品まで遡って70年に延長されるということはおそらくないだろうと言われています。
保護期間の延長に関しては、著作権の大家である福井健作弁護士のこのコラムが秀逸ですのでご参考まで。