コンテンツを無料で適法に利用できる3つのパターン(3)保護期間が満了しているコンテンツを利用する
前回、前々回に引き続き、ビジネスのヒントになる「コンテンツを無料で適法に利用できる3つのパターン」について紹介をしていきたいと思います。
「コンテンツを無料で適法に利用できる3つのパターン」とは以下の3つでした。
- CCライセンスを使いこなす
- 著作権法の例外規定を使う
- 保護期間が満了しているコンテンツを利用する
前々回の記事では「1 CCライセンスを使いこなす」を紹介し、前回の記事では「2著作権法の例外規定を使う」を紹介しましたので、今回は最後の「3 保護期間が満了しているコンテンツを利用する」です。
■ 保護期間が満了しているコンテンツは原則として自由に利用できる
著作権の保護期間は、原則として著作者が著作物を創作した時点から、著作者の死後50年までです(ただし映画の著作物については、公表後70年)。
保護期間が満了した著作物はPD(パブリックドメイン)として、誰もが自由に利用することができます。
たとえば、これ。
ウサギに乗られるシカの悲哀を描いた名作ですが、実は鳥獣戯画制作キットを使って私が制作したものです。
この鳥獣戯画制作キットは、鳥獣戯画のキャラクターを自分で自由に使ってコンテンツを作れるというツールですが、鳥獣人物戯画そのものは、国宝の絵巻物であり、当然とっくの昔に著作権の保護期間は満了しています。
だからこそ、このようなツールを使って、私が名作を制作しても問題ないというわけです。
■ 何をしてもいいというわけではない
ただ、「原則」自由に利用できると書いたように、保護期間が満了しているコンテンツであれば何をしてもいいというわけではありません。
実は、保護期間が満了しているコンテンツでも著作権法上、利用に関しての一定の制限があります。
それは、「著作者人格権を侵害するような利用はできない」というものです。
著作権には「著作財産権」と「著作者人格権」の2つが含まれているのですが、このうち「著作財産権」は、先ほど言ったように著作者の死後50年経過すれば保護期間は満了します。
一方、「著作者人格権」については、別の扱いになっています。
まず知っておいて欲しいのは、「著作者人格権は著作者の死亡時に相続されない」ということです。
著作財産権については、著作者の死亡時にも相続されるのですが(だからこそ、著作者死亡後も、遺族が著作者の代わりに権利行使できるのです)、著作者人格権は相続されません。ですので、遺族が著作者人格権を相続して権利行使することはできないのです。
そうすると、著作者の死亡後50年経過後は、著作財産権は消滅し、著作者人格権も相続されていないので存在しない、ということになり、何をしても良さそうにも思われます。
しかし、実は、著作権法60条という規定があり、何をしてもよいというわけではありません(下線部筆者)。
第六十条 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。
逆に言えば、著作権が切れている古典的名作を利用しようとする場合、この60条の規定にだけ気をつければよいと言うことになります。
先ほどの鳥獣戯画のキャラを利用した私の作品、絵画の一部だけを切り取って余計な台詞を付け加えていますので、同一性保持権を侵害するようにもみえます。
しかし、先ほどの60条には「その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。」とありますので、この規定によりセーフということになるのではないかと思います。
逆に、たとえばアダルト性の強い表現と組み合わせて使ったり、違法な商材を販売する際に著名な絵画を利用するなどの行為については、たとえ保護期間満了の著作物を使っていたとしても、著作権法60条違反となる可能性が高いと思われます。
■ まとめ
このようなPD(パブリックドメイン)に属するコンテンツをうまく利用することができると、創作の幅は非常に広がると思います。
たとえば、アメリカのスミソニアン博物館が所蔵する作品の中から4万点超の作品が画像ギャラリーとして公開されています(「浮世絵や日本画も!博物館所蔵の4万超の画像を無料ダウンロードできるコレクションが素晴らしい!」)。
たとえば、葛飾北斎の作品もダウンロードできます。
また、2014年に上野の森美術館で開催された「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎|上野の森美術館」の特設サイトでは、北斎の各作品がとてもうまく使われています。
このように、保護期間が満了した古典的名画などの、PD(パブリックドメイン)に属するコンテンツの存在を知っておくと非常に便利なのではないでしょうか。