人工知能(AI)、ビッグデータ法務 著作権
NotebookLMに他人の著作物をアップロードしたら著作権侵害?
Contents
1 はじめに

https://notebooklm.google/?hl=ja
GoogleのNotebookLMは、PDFやウェブサイトなどをソースとしてアップロードすると、AIがその内容を分析・要約し、質問に回答してくれるツールです。利用が急速に広がっていますが、それに伴い「第三者の著作物をソースとしてアップロードして利用することは著作権侵害にならないのですか?」という質問を非常に多くいただきます。
この論点は、利用場面を分類した上で、それぞれの場面ごとに著作権法上の評価を行う必要があります。そこで本稿では、NotebookLMに第三者の著作物をソースとしてアップロードして利用する場面を類型化し、それぞれについて著作権法上の評価を整理します。
2 NotebookLMの機能の概要
NotebookLM(以下「NLM]といいます)の基本的な利用の流れは以下のとおりです。
– ユーザーがPDF、ウェブサイト、Google Docsなどのソースをアップロードする
– NotebookLMがソースの内容をAIで分析し、ユーザーの指示に基づき、チャットでの回答、音声解説、スライド資料、動画解説、レポートなど(以下、「NLM成果物」といいます)を生成する
– ユーザーはチャット形式でソースの内容について質問することができる
また、NotebookLMには共有機能があります。有料プラン(NotebookLM Plus)では、ノートブックの共有時に以下の2つのモードを選択できます。
– 「フルノートブック」共有:共有相手はソースをそのまま閲覧でき、かつAI出力(チャット、スタジオ成果物)も利用できる
– 「チャットのみ」共有:共有相手はソースやスタジオ成果物にはアクセスできず、AI出力のうちチャットのみ利用できる
このように、NotebookLMでは、共有相手がソースにアクセスできるかどうかをコントロールすることが可能です。
3 場面の分類
(1)ノートブックを第三者に共有しない場合はNotebookLM特有の問題ではない
まず、ノートブックを第三者に共有せず、アップロードしたユーザー本人だけが利用する場面を考えます。

この場合、ユーザーがNotebookLMに第三者著作物をソースとしてアップロードして利用する行為は、構造としては、第三者著作物を自分だけがアクセスできるクラウドストレージ(Google DriveやDropbox等)に保存して自分で閲覧・ダウンロードする行為とほぼ同じです1なお、この場合の第三者著作物の利用主体はサービス提供者であるグーグルではなくユーザーです(平成27年2月・文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」P11「第4節 タイプ2(プライベート・ユーザーアップロード型)に関する検討」参照)。
この場合のユーザの行為が適法か否かは、当該利用行為に著作権法上の権利制限規定が適用されるかにかかってきます。
まず、このような利用方法においては、ユーザがソースを閲覧・利用する行為が通常は伴いますので非享受目的利用を前提とする著作権法30条の4は適用されません。
次に著作権法30条1項(私的使用目的複製)が適用されるかですが、個人がNLMを利用する場合には同規定が適用され適法となります。
一方、企業においてNLMを業務利用する場合は、企業内での著作物の複製等に30条1項が適用されるかが問題となります。この点については反対説もあるものの「30条1項は適用されない」というのが現在の通説と思われます2中山信弘 (東京大学名誉教授)/著『著作権法 第4版』(有斐閣、2023年)364頁。同通説を前提とすると、企業においてNLMを業務利用する行為には同法30条1項は適用されず、他の権利制限規定が適用されない限り著作権侵害に該当することとなります。
もっとも、NotebookLMに特有の著作権法上の問題が生じるのは、ノートブックを第三者に共有する場面です。以下では、この共有の場面を中心に検討します。
(2)共有する場合の2つのパターン
ノートブックを第三者に共有する場面について、「ソースである第三者著作物内の創作的表現が共有相手に提供されるか」という視点から、以下の2つのパターンに分類します。
① パターン1:ソースである第三者著作物内の創作的表現が共有相手に提供されない場合
以下の条件をすべて満たす場合です。
– ノートブックを「チャットのみ」モードで共有している(共有相手はソースパネルにアクセスできない)
– NLM成果物(チャット回答等)にソースの著作物の表現と同一・類似の表現が含まれていない

② パターン2:ソースである第三者著作物内の創作的表現が共有相手に提供される場合
以下のいずれかに該当する場合です。
– ノートブックを「フルノートブック」モードで共有している(共有相手がソースをそのまま閲覧できる)(パターン2−1)

– 「チャットのみ」モードで共有しているが、NLM成果物(チャット回答等)にソースの著作物の表現と同一・類似の表現が含まれている(パターン2−2)

4 「ソースである第三者著作物内の創作的表現が共有相手に提供されるか」の判断:具体例
判断が難しいのは、「チャットのみ」モードで共有している場合に、それがソースである第三者著作物内の創作的表現が共有相手に提供されないパターン1(後述しますが、このパターンは適法です)なのか、創作的表現が共有相手に提供されるパターン2−2(後述しますが、このパターンは違法(著作権侵害)です)かどうかです。

これはNLMの利用の仕方(NLM成果物の内容)によって異なります。つまり、同じNLMの利用であっても、NLM成果物の内容次第でパターン1にもパターン2−2にもなりうるということです。
具体例で考えてみましょう。
■ NLM成果物(チャット回答等)にソースの著作物の表現が含まれない例(→パターン1)
特許明細書群の技術動向分析:ある技術領域の特許明細書を複数アップし、「この分野の技術トレンドを分析して」と指示する。AI出力は「○○技術に関する出願は2023年以降増加傾向にあり、特に△△方式を採用するものが多い」等の独自の分析文であり、個々の明細書の表現は再現されていない。
■ NLM成果物(チャット回答等)にソースの著作物の表現が含まれる例(→パターン2−2)
論文の検索・閲覧:複数の論文をアップし、「・・・という観点からこれ等の論文を分析し、分析結果と、当該分析の根拠となる論文の該当部分を表示して」と指示する。AI出力が論文の該当部分の文章をほぼそのまま、あるいはわずかな言い換えで再現している。
■ ケースバイケースの例
要約:ソースとして専門書をアップし要約を指示する場合、「この本の主張を200字でまとめて」のように高度に圧縮された要約であれば、ソース内の創作的表現は残りにくいと思われます。一方、「第3章を詳しく要約して」のように詳細な要約を求める場合は、ソースの表現がかなり再現される可能性があります。要約において、ソース内の創作的表現が一律に「含まれる」「含まれない」と判断することはできず、圧縮の程度や表現の再現度合いに応じた個別の判断が必要になるでしょう。
このように、自分の利用がどのパターンに該当するかは、実際のNLM成果物(チャット回答等)を見て判断する必要がある点に注意が必要です。
ポイントは以下の2点です。
① NLM成果物(チャット回答等)の種類によって結論が異なる
問題はNLM成果物(チャット回答等)内にソースである著作物の創作的表現が含まれているか、ですから、たとえばテキストデータをソースとしてアップロードし、NLM成果物のうち音声解説(ソースの内容にもよりますが、ソースを相当程度圧縮した上で、2人の会話形式の音声が生成されます)を生成する場合は、ソース内のテキストの創作的表現が出力されていない場合が多いと思われます。
② ソースが著作物に該当しない場合は著作権侵害の問題は生じない
たとえば、建築資材のスペックシートを大量にソースとして準備しておき、「○○の耐荷重はいくらか」と質問する場合、AI出力にスペック情報がそのまま含まれていても、スペック情報は事実・データであり著作物ではないため、著作権侵害の問題は生じません。
5 各パターンの著作権法上の評価
(1)分析の枠組み
NotebookLMの利用において、著作権法上問題となりうる行為は以下の3つです。
①アップロード行為
ソース(第三者著作物)をNotebookLMにアップロードする行為 (複製権)
②AI出力の生成・提供行為
ソースそのもの、またはソース内の創作的表現を含む出力を生成・第三者に提供する行為 (複製権・公衆送信権)
各パターンについて、この2つの行為に沿って検討します3詳細は省略しますが、②の行為のうち、ソースそのものを第三者に提供する行為(パターン2−1)における著作物の利用主体(複製や公衆送信を行なっている主体)は、サービス提供者ではなくNLMのユーザとなると思われます。
(2)パターン1の評価(ソース内の創作的表現が共有相手に提供されない場合)
①アップロード行為
パターン1では、ユーザーがアップロードしたソース内の創作的表現が共有相手に提供されません。ソースのアップロード(複製)の目的は純粋に情報解析(AIによる分析・要約等)であり、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としていません。
したがって、パターン1における著作物のアップロード行為については著作権法30条の4(非享受目的利用)が適用され適法となると考えます4なお、著作権法第30条の4は、他人のための情報解析に供するための利用についても適用されます。
もっとも、重要なポイントがあります。著作権法30条の4が適用されるためには、あくまで「情報解析」等、非享受目的の利用でなければなりません。したがって、「ユーザはアップロードしたソース内の第三者著作物を、その内容を理解するために(つまり情報解析以外の目的で)直接閲覧したりコピペしない」ということが大前提となります。それをすると30条の4は適用されません。
②AI出力の生成・提供行為
パターン1においては、AI出力にソースの第三者著作物内の創作的表現が含まれていないため、そもそも複製・公衆送信に該当しません。
③ 結論
パターン1は、著作権法30条の4により適法と評価できる可能性が高いといえます。
(3)パターン2の評価(ソース内の創作的表現が共有相手に提供される場合)
①アップロード行為
パターン2では、②AI出力の生成・提供行為において、ソース内の創作的表現が共有相手に提供されています。「フルノートブック」共有の場合(パターン2−1)は共有相手がソースをそのまま閲覧でき、「チャットのみ」共有であってもAI出力にソースの表現が含まれています(パターン2−2)。
いずれの場合でも、アップロードの目的に「他人にソース内の創作的表現を享受させること」が含まれていると評価されるため、アップロード行為に著作権法30条の4は適用されません。また、他人のための複製や公衆送信については著作権法30条は適用されませんので、結論としてはパターン2におけるソースのアップロード行為は著作権侵害に該当すると考えます。
②AI出力の生成・提供行為
AI出力にソース内の著作物の創作的表現が含まれている場合、その生成・共有行為は当該著作物の複製・公衆送信に該当します。
したがって、権利制限規定が適用されないかが問題となりますが、AI出力の生成・提供行為は、「情報解析」(AI内でのソースの分析行為)の「後」の著作物利用行為であるため、著作権法30条の4は適用されません。
また、他人のための複製や公衆送信については著作権法30条1項は適用されません。
したがって、結論としてはパターン2におけるAI出力の生成・提供行為は著作権侵害に該当します。
なお、AI出力に含まれるソースの表現が軽微な範囲にとどまる場合には、47条の5(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)の適用も理論上は考えられます。もっとも、「フルノートブック」共有でソース全体が閲覧可能な場合(パターン2−1)には「軽微」とは到底いえません。「チャットのみ」共有でAI出力にソースの表現が一部含まれるにとどまる場合には、適用の余地があるかもしれません。
③ 結論
パターン2は、ソースのアップロード・AI出力の生成・提供ともに著作権侵害に該当します。特に「フルノートブック」モードでの共有は、実質的に著作物のコピーを第三者に提供しているのと同じです。
6 まとめ
結局のところ、NotebookLMの利用が著作権侵害になるかどうかを分ける最大のポイントは、「共有相手にソース内の著作物の創作的表現が提供されるかどうか」です。
それを前提とすると、NotebookLMを業務利用する際に著作権侵害のリスクを低減するためには、以下の点が重要になります。
「フルノートブック」共有はソースがそのまま共有相手において閲覧可能になるため、著作権侵害に該当する
・ AI出力にソースの表現がそのまま含まれないような設定を行う
プロンプト等で、分析・分類・高度に圧縮された要約等、ソースの表現が再現されにくい設定を行う
・ 自分自身もソースパネルでソースを閲覧しない
アップロードしたユーザー自身がソースを閲覧すると、30条の4の適用が認められなくなる
・ ソースが著作物に該当するか確認する
データ・事実・スペック情報等は著作物ではないため、そもそも著作権侵害の問題は生じない
なお、本稿はNotebookLMの利用と著作権侵害の関係のみを取り上げましたが、実務上は、第三者の著作物をNotebookLMにアップロードすること自体に、著作権以外の問題(秘密保持義務違反、利用規約・契約違反等)が生じる場合があります。この点は本稿の射程外ですが、実務上は併せて検討が必要です。
- 1なお、この場合の第三者著作物の利用主体はサービス提供者であるグーグルではなくユーザーです(平成27年2月・文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」P11「第4節 タイプ2(プライベート・ユーザーアップロード型)に関する検討」参照)
- 2中山信弘 (東京大学名誉教授)/著『著作権法 第4版』(有斐閣、2023年)364頁
- 3詳細は省略しますが、②の行為のうち、ソースそのものを第三者に提供する行為(パターン2−1)における著作物の利用主体(複製や公衆送信を行なっている主体)は、サービス提供者ではなくNLMのユーザとなると思われます
- 4なお、著作権法第30条の4は、他人のための情報解析に供するための利用についても適用されます












