人工知能(AI)、ビッグデータ法務 著作権
CLAUDE.mdやClaude Skillsは著作物として保護されるのか ── 公開する側・利用する側からの整理

Vetheuil in Summer, by Claude Monet, 1880, French impressionist painting, oil on canvas
GitHubで星を多く集めているリポジトリがあったり、海外では1スキル7〜10ドルで販売されていたり、Anthropic自身がスキル・プラグインを集めた公式のプラグイン配布カタログ(claude.com/plugins)やスキル配布カタログ(github.com/anthropics/skills)を公開していたり、と動きが目まぐるしいです。
そこで本記事では、そもそもCLAUDE.mdやClaude Skillsを法的に保護できるのか、また公開されているCLAUDE.mdやスキルを利用する側として何に注意すべきか、という2つの視点で整理してみたいと思います。
Contents
1 いま起きていること
(1)ハーネスエンジニアリングの広がり
最近、AIをうまく使いこなすために、AIモデル本体ではなくAIを取り囲む環境を作り込むという発想が広がってきました。Claudeで言えば、CLAUDE.md(プロジェクト全体のルール集)や、Claude Skill(特定タスク用に作り込まれた指示や、当該指示とスクリプトのセットなど)が代表例です。
こうした「AIをどう動かすかを外部から定義する仕組み」は、Claudeに限らず他のAIでも見られます。OpenAIのCustom InstructionsやGPTs、Cursorの.cursorrules、AGENTS.mdなど、呼び方も形式もさまざまですが、考え方は共通しています。AIモデル本体は変えられないので、その周辺の「制御層」をいかに設計するかで結果が変わる、というアプローチで、近年一部の業界では「ハーネスエンジニアリング」とも呼ばれます1「ハーネス(harness)」は本来「馬具」を意味し、暴れ馬であるAIを御するための仕掛け、というイメージです。。
つまり、CLAUDE.mdやスキルは「Claude(AI本体)を補強する資産」になりつつあり、ノウハウの結晶としてその価値が認識されはじめています。
(2)公開・販売の実態
そういう「価値ある資産」となれば、当然、公開する人・販売する人が出てきます。実際の流通形態を私が観測した範囲でざっくりまとめると、以下のとおりです。
| 形態 | 具体例 | ライセンス |
|---|---|---|
| (a) GitHub上のOSS公開 | sickn33/antigravity-awesome-skills(★38,000超・1,400+スキル)、karanb192/awesome-claude-skills など | MIT・Apache 2.0が主流 |
| (b) Anthropic公式の配布カタログ(無償) | claude.com/plugins、anthropics/skills | Apache 2.0/独自ライセンスの2系統で配布(詳細は3章) |
| (c) 海外有料販売プラットフォーム | PromptBase(SKILL.md販売明示)、Gumroad、KissMySkills | スキル単体 $7〜10程度 |
| (d) Qiita・note・ブログ | 「俺のCLAUDE.mdを全公開する」系記事多数 | ライセンス無記載が多い |
なお、(b) のAnthropic公式の配布カタログについては、ライセンスの使い分けが特に興味深いので、章を改めて取り上げます(後述3章)。
(3)本稿で検討する内容
ここまでで「公開・販売されている」「Anthropic自身もライセンスを意識している」という状況が見えました。そこで気になるのは、以下の2点です。
CLAUDE.mdやClaude Skillsは、法的に保護されるのか?無断利用されたら損害賠償請求や利用差止請求ができるのか?
② 利用する側から見て
公開されているCLAUDE.mdやスキルは、自由に使ってよいのか?
以下、順に検討します。
2 CLAUDE.md / Claude Skillsとは何か(前提整理)
法的な議論に入る前に、前提を簡単に整理します。
(1)CLAUDE.md
CLAUDE.mdは、Claude Code等が起動時に自動で読み込む、自然言語で書かれた指示ファイルです。プロジェクトのルート(または個人の ~/.claude/)に置かれ、プロジェクトの方針・作業ルール・コーディング規約・口調指定など、プロジェクトレベルの恒久的な指示を記述します。
中身は基本的にマークダウン形式のテキストで、長いもので数千行に及ぶこともあります。
(2)Claude Skill
Claude Skillは、SKILL.md(自然言語指示)+スクリプト(Python・Bash等)+付属ファイルを1つのパッケージとしてまとめたものです。Claudeに「特定のタスクを実行するための手順と道具一式」を渡すイメージです。
提供形態は実は多様で、以下のようなバリエーションがあります。
– (i) 単体SKILL.md1枚だけ
– (ii) SKILL.md+スクリプト+テンプレートのパッケージ
– (iii) サブエージェント(subagent)・カスタムコマンド・フック等を含むプラグイン形式
– (iv) 参照ファイル群・参照フォルダごとまとめて配布する形式
本記事の以下の検討は、これら全ての形態に同様に当てはまります。要するに「Claudeに何かを指示する自然言語+関連ファイル群の束」が、著作権法・契約法上どう扱われるか、という議論です。
3 Anthropic自身はスキルをどう扱っているか
法的な議論に入る前に、もう少しだけ寄り道します。スキルの開発元であるAnthropic自身が、自社のスキルをどう扱っているかを見てみましょう。
(1)ライセンスを2系統に使い分けている
Anthropicは、公式リポジトリ anthropics/skills で多数のスキルを配布していますが、ライセンスを2系統に明確に使い分けています。README.md には次のように書かれています2anthropics/skills README.md より引用(2026-05時点)。:
Many skills in this repo are open source (Apache 2.0). We’ve also included the document creation & editing skills that power Claude’s document capabilities under the hood in the
skills/docx,skills/pdf,skills/pptx, andskills/xlsxsubfolders. These are source-available, not open source, but we wanted to share these with developers as a reference for more complex skills that are actively used in a production AI application.
整理すると:
– 多くのスキル:Apache 2.0(OSS。商用利用・改変・再配布を広く認める)
– docx・pdf・pptx・xlsxの4つのドキュメント処理系スキル:OSSではない独自ライセンス(各サブフォルダ直下に個別の LICENSE.txt が配置されている)
ということになります。
(2)docx・pdf・pptx・xlsxの4つのドキュメント処理系スキルのライセンスはかなり厳格
問題はdocx・pdf・pptx・xlsxの4つのドキュメント処理系スキルの独自ライセンスの中身です。skills/docx/LICENSE.txt を見ると、Anthropicの Consumer Terms / Commercial Terms を準拠契約とした上で、「ADDITIONAL RESTRICTIONS」として、「本マテリアル」((本スキルに含まれる全てのコード、プロンプト、アセット、ファイル、その他の構成要素を含む)について、以下を明示的に禁止しています3skills/docx/LICENSE.txt より。pdf・pptx・xlsx の各サブフォルダにも同様の LICENSE.txt が配置されています。:
– 本マテリアルを本サービスから抽出すること、または本サービス外で本マテリアルのコピーを保持すること
– 本マテリアルを再生産またはコピーすること(本サービスの認可された利用中に自動的に作成される一時的なコピーを除く)
– 本マテリアルに基づく派生著作物を作成すること
– 本マテリアルを第三者に対し配布、サブライセンス、または移転すること
– 本マテリアルに具現化された発明を製造し、販売の申出をし、販売し、または輸入すること
– 本マテリアルをリバースエンジニアリング、逆コンパイル、または逆アセンブルすること
加えて、以下のような文言も並んでいます:
The receipt, viewing, or possession of these materials does not convey or imply any license or right beyond those expressly granted above.
(これらのマテリアルを受領・閲覧・所持しても、上記で明示的に許諾された以外のいかなる権利・ライセンスも与えられない)
Anthropic retains all right, title, and interest in these materials, including all copyrights, patents, and other intellectual property rights.
(Anthropicは、これらのマテリアルにつき、著作権・特許権・その他の知的財産権を含む全ての権利・タイトル・利益を留保する)
要するに、当該4スキルについては「ソースコードはGitHubで閲覧できるが、アンソロピックのサービス外での利用、コピー・改変・配布は一切認めない」という構成で、実質的にはほぼプロプライエタリな扱いです。Apache 2.0と比較すると、ほぼ正反対の縛り方になっています。
(3)ここから読み取れること
Anthropicの配布形態が興味深いのは、スキルというものを「軽い参考資料」とは扱っていない点です。
– 多くのスキルについては、Apache 2.0という寛容なライセンス(撤回不能・全世界・無償・サブライセンス可)をわざわざ選択しています。これは、Anthropicがスキルを単なる参考資料ではなく、著作権その他の知的財産権・契約上の利用条件によって管理されるべき資産として扱っていることを示しています。もちろん、ライセンスが付されているからといって、個々の構成要素すべてに当然に著作権が成立するわけではありませんが、少なくともAnthropic自身がスキルを権利管理の対象として位置づけていることは明らかです。
– 加えて、ドキュメント処理系の4スキルについては、非常に厳しい独自ライセンスを付しています。これもライセンスの対象に著作権が発生していることを前提としているように読めます。
もちろん、Anthropicがどう考えているかによってスキルの著作物性の有無が決まるわけではありませんが、参考にはなると思います。
4 【公開する側の視点】法的に保護されるのか?
(1)著作権で守られるか
① CLAUDE.mdやSKILL.mdの本体
CLAUDE.mdやSKILL.mdの本体は、結局のところ自然言語で書かれたAIへの指示です。これは、生成AIへの指示という意味でいわゆる「プロンプト」と同じです。
プロンプトの著作物性については、これまで一定の議論が積み重ねられてきました4奥邨弘司教授も、自然言語のプロンプトを「電子計算機への指令の組合せ」としてプログラムの著作物に該当しうると整理しています(上野達弘=奥邨弘司編『AIと著作権』勁草書房・2024年・座談会発言部分317頁)。。
私自身の整理を踏まえると、ポイントは以下のとおりです。
まず、プロンプトは、著作権法上の「プログラム」に該当すると考えます。著作権法は「プログラム」を「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(2条1項10号の2)と定義しています。
プロンプトも、AI(電子計算機)に対して「こう動いてほしい」という指令の組合せを記述したものですから、機能としてはプログラムと変わりません。記述に使う言語が、通常のプログラムでは「プログラム言語」(Python等)、プロンプトやスキルでは「自然言語」、というだけの差異です(なお、自然言語で書かれている以上、通常の「言語の著作物」の側面も併せ持ちますが、創作性の判断において重要となる「表現の選択の幅」という観点は共通しています。)。
そうすると、プロンプトやCLAUDE.md・スキルの著作物性は、プログラムの著作物性をめぐる議論をそのまま当てはめて考えればよいことになります。
プログラムは、ある特定のアルゴリズムをコンピュータにおいて実現できるようにするための指令ですが、アルゴリズム自体は著作権法では保護されていません(著作権法10条3項)。
したがって、あるアルゴリズムを実現するためにはそのコード(表現)によらざるを得ないというような関係があれば、当該コードには創作性が認められず、著作物ではありません。
一方、あるアルゴリズムを実現するためのコードの表現又は組合せに選択の幅があり、そこに作成者の個性が表れている場合には創作性が認められて著作物に該当することとなります。
プログラムの著作物性については、日本の裁判例はこの基準(あるアルゴリズムを実現するためのコードの表現又は組合せに選択の幅があり、そこに作成者の個性が表れているかどうか)を採用しているものが多いと言われており5髙部眞規子編著『知的財産権訴訟Ⅱ 最新裁判実務大系』(青林書院、2018年)611頁、たとえば、知財高判平28・1・27判時2321号85頁〔接触角計算プログラム事件〕は、「プログラムの具体的記述が、表現上制約があるために誰が作成してもほぼ同一になるもの、ごく短いもの又はありふれたものである場合においては、作成者の個性が発揮されていないものとして、創作性がないというべきである。他方、指令の表現、指令の組合せ、指令の順序からなるプログラム全体に、他の表現を選択することができる余地があり、作成者の何らかの個性が表現された場合においては、創作性が認められるべきである。」としています。
この基本的な枠組みをCLAUDE.md・スキルの著作物性に当てはめると、「① ありふれたもの・短いものは著作物に該当しないが、② 長文の・構造化された・独自の配列を持つものは著作物として保護される」ということになります6プロンプトについてではありますが、文化庁も、令和6年7月の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(文化庁著作権課)において、プロンプトについて「プロンプトが『思想又は感情を創作的に表現したもの』と評価できるのであれば著作物となりうる。もっとも、多くの場合は単語の羅列や指示にとどまり、著作物とならない。」と整理しています。。
② スクリプト部分の著作物性
スキルに含まれるスクリプト(Python等)は、プログラムの著作物(著作権法10条1項9号)として保護される可能性があります。
もっとも、先ほど説明したように、汎用的な書き方やアルゴリズムそのものは保護されないということです。短いボイラープレート(テンプレ的なコード)も、創作性がなく著作物に該当しないことが多いと考えられます。
したがって、スキルに含まれるスクリプトのうち、独自の工夫がある程度長いものだけが著作物として保護される、という整理になります。
③ 具体的な検討
以下、実際に公開されているCLAUDE.mdやスキルを例に、上記基準を当てはめてみます。
(a) 著作物性が認められないと考えられる例(短い・汎用的なもの)
たとえば、Qiitaやnoteで「CLAUDE.mdテンプレート」として紹介されている数十行程度のものは、その多くが「丁寧な口調で答えてください」「マークダウン形式で出力してください」「コードは関数化してください」といった汎用的な指示の羅列にとどまります。こうした指示は、いずれもアルゴリズム(処理手順)レベルの記述で、それを言語化する際の選択幅も狭く、作成者の個性が発揮される余地は乏しいでしょう。上記基準に照らせば、著作物性は否定される可能性が高いと考えます。
(b) 著作物性が認められると考えられる例:Anthropic公式 docxスキル
逆に、3章でも触れたAnthropic公式の docxスキル(skills/docx)を見ると、SKILL.mdと付属スクリプト・テンプレートを合わせて数千行規模に及び、ドキュメント生成・編集の各ステップごとに固有の指示構造・例示・条件分岐ロジックが綿密に組み立てられています。「同じアルゴリズムを実現するためにはこのコード(表現)によらざるを得ない」とは到底言えず、指令の表現・組合せ・順序の選択に作成者の個性が十分に発揮されていると評価できます。
したがって、上記基準のもとで著作物性が肯定されると考えます。
GitHubで星を多く集めているスキル集(antigravity-awesome-skills ★38,000超など)や、有償販売されているスキル(PromptBase等)の中身を覗いてみても、相当な規模・構造を備えているものが多く、これらも同様に著作物性が肯定される余地が高いと言えます。
④ 保護範囲
もっとも、仮にCLAUDE.mdやSKILL.mdに著作物性が認められるとしても、保護されるのはあくまで具体的な表現、指令の具体的な組合せ・順序・構成であり、そこから抽出されるアイデア、ノウハウ、処理手順、設計思想そのものではありません。
したがって、例えば、以下は自由に利用したり、実行することが可能です。
・「テストを実行してから完了報告させる」という運用手順
・「禁止事項・出力形式・レビュー手順を分けて書く」という構成思想
・同じ機能を別表現で実装した独自のCLAUDE.mdを作成・利用・公開すること
⑤ 小括(公開する側から見た著作権による保護)
以上のとおり、CLAUDE.mdやスキルの著作物性は、短いもの・汎用的な指示にとどまるものは否定/長文・構造化・独自配列のものは肯定ということになります。
(2)結論:複雑なものであれば著作権で保護される
以上をまとめると、CLAUDE.mdやスキルを公開する側から見た著作権保護の状況は以下のように整理できます。
| 公開物の性質 | 著作権による保護 |
|---|---|
| 単純な指示の羅列にとどまるもの | 否定方向(保護なし) |
| 長文・構造化・独自配列を持つもの | 肯定方向(保護あり) |
そして、現実に注目を集めている公開物(GitHub上の著名なスキル集・Anthropic公式スキル・有償販売されているスキル等)の多くは、後者に該当します。
つまり、「CLAUDE.md・スキルだから保護されない」と一括りに考えるのは正確ではなく、個別の作り込みのレベルによって判断すべきであり、現実に流通している主要なものについては、多くが著作物として保護されるレベルに達している、というのが本記事の結論です(ただし、保護範囲が限定的であることは前述の通り)。
なお、著作権法以外の保護手段(営業秘密としての保護・限定提供データとしての保護)は、いずれも「非公知性」「無償で公衆に利用可能でない」といった要件を満たさないため、公開されたCLAUDE.md・スキルには適用されません。したがって、公開後の保護は、もっぱら著作権法と契約(利用規約・ライセンス)で考えることになります。
5 【利用する側の視点】どう扱えばいいか?
公開されたCLAUDE.mdやスキルを利用する側から見ると、状況によって判断が分かれます。
以下、著作物に該当するCLAUDE.mdやスキルを対象に検討します。
(1)特段の条件なく公開されているもの(ライセンス無記載)
QiitaやnoteでCLAUDE.mdが「全公開」されていたり、企業ブログでテンプレートが配布されていたりしますが、これらの多くはライセンスが記載されていません。
このようなskill等を利用する場合、利用する側は以下のように考えれば良いのではないかと思います。
・ 営利企業の従業員が業務で使うことについても、通常は著作権者の黙示の許諾があると考えて良いと思われるが、確実に適法とするためには、配布元に個別にコメントやDM等で許諾をもらうのが最も安全。
・ それ以外の利用(自分のnote等にskillの全文を記載したり、販売したりすること)については、許諾の範囲外であり、場合によっては著作権侵害になる可能性がある。
(2)ライセンス付公開のもの(MIT・Apache 2.0・CC等)
GitHubの人気スキル集(前述の antigravity-awesome-skills 等)は、ほとんどがMITまたはApache 2.0ライセンスで公開されています。Anthropic公式スキルもほぼApache 2.0です。
この場合、これらのライセンスに従って利用すれば問題ないということになります。
(3)有償販売されているもの
海外のGumroad、PromptBase、KissMySkills等で販売されているスキル($7〜10程度)を購入して使う場合、販売プラットフォームまたは販売者の利用規約が適用されます。
たとえば、プロンプト・スキルの代表的な販売プラットフォームであるPromptBaseでは、販売者・購入者の関係について概ね以下のような構成がとられています。
– 購入者は、購入したプロンプト/スキルを「使用する権利」と、「その出力物を商用利用する権利」を取得する
– 一方で、購入者が、購入したプロンプト/スキルそれ自体を第三者に転売したり、再配布したりすることは禁止される(いわゆる「no-resale clause」)
– 販売プラットフォーム経由の取引には販売額の20%が手数料として徴収される(販売者ごとの直接リンク経由は0%)
このように、有償販売スキルの利用規約は、典型的には「個人利用・商用利用は認める/ただしスキル自体の転売・再配布は禁止する」という構成をとっています7PromptBase「Sell your Prompts」ページ、解説記事 Medium「Prompt Bazaar, explained by someone who actually sells there」 等参照。。
なお、規約違反は、それ自体としてはあくまで「契約違反」にとどまります。もっとも、有償販売スキルの利用規約は、その実態として「販売者から購入者への著作権の利用許諾(ライセンス契約)」として構成されています。すなわち、購入者は、規約に定められた範囲(個人利用・出力物の商用利用)でのみ著作物を利用する権利を与えられている、という建付けです。そうすると、規約条件に反する利用(第三者への転売・再配布など)は、ライセンスの範囲を超えた無許諾利用となり、対象が著作物に該当する限り著作権侵害にも該当しうる、ということになります。
「仮にCLAUDE.mdやスキルが著作物に該当するとしても、これらをAIに入力する(読み込ませる)行為については、著作権法30条の4(情報解析のための利用等)が適用されて適法となるのではないか」という点です。
しかし、結論として、CLAUDE.mdやスキルを著作権者に無許諾でAIに入力する行為には30条の4は適用されないと考えます。
30条の4は、簡単にいうと著作物の非享受目的利用については権利制限の対象とする(著作権侵害に該当しない)という条文です。そして、プログラムの著作物については「電子計算機で実行して機能を発揮させること」自体が、その著作物の本来の用途に従った利用=享受目的の利用と考えられます8前田健「柔軟な権利制限規定の設計思想と著作権者の利益の意義」田村善之編『知財とパブリックドメイン 第2巻 著作権法篇』勁草書房・2023年・205-207頁は、3号のこのカッコ書きの存在自体が、「機能的著作物にとっては機能の享受こそが著作物の享受だと理解できることを裏付けている」と整理しています。。
この点を反映して、著作権法30条の4第3号は、非享受目的利用の一類型として「電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用」を挙げていますが、そこにカッコ書きで(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)と規定しています。
そうすると、本記事の整理(CLAUDE.mdやスキルは著作権法上のプログラムの著作物に該当する)を前提とする限り、これらをAIに入力して実行させる行為に30条の4は適用されず、他の権利制限規定の適用がない限り著作権侵害になる、ということになります。
6 おわりに
以上をまとめます。
(1)公開する側にとってのポイント
・短い・汎用的な指示にとどまるものについては、著作権法による保護は受けにくいです。この場合は「公開すること自体の意味(コミュニティ貢献・認知獲得・OSS文化への参画)を割り切る」のが現実的な対応になります。
・公開する際は、ライセンスを明示するのが望ましいです。アンソロピックのように独自のライセンスを付しても良いですし、Apache 2.0・MIT・CC等のOSSライセンスを付すことも可能です。これにより、利用者に対して権利関係を明確にし、無断利用への抑止が働きます。
(2)利用する側にとってのポイント
・ライセンス無記載で公開されているものについては、入手者自身が個人的に使用することは黙示の許諾の範囲内と考えられます。業務で社内利用することについても許諾の範囲内と解釈できると考えますが、安全サイドを取るのであれば個別に許諾を取得するようにしましょう。第三者に対して再配布する・販売する・自分のnote等で全文転載するといった行為は許諾範囲外となる可能性が高く、注意が必要です。
・MIT・Apache 2.0等のOSSライセンス付きのものは、ライセンス条件(著作権表示等)に従えば自由に使えます。
・有償販売スキルを購入した場合、利用規約(個人利用・商用利用は認める/転売・再配布は禁止)に従う必要があります。違反すれば契約違反であり、加えて多くの場合著作権侵害も成立する可能性が高い点に留意が必要です。
- 1「ハーネス(harness)」は本来「馬具」を意味し、暴れ馬であるAIを御するための仕掛け、というイメージです。
- 2anthropics/skills README.md より引用(2026-05時点)。
- 3skills/docx/LICENSE.txt より。pdf・pptx・xlsx の各サブフォルダにも同様の LICENSE.txt が配置されています。
- 4奥邨弘司教授も、自然言語のプロンプトを「電子計算機への指令の組合せ」としてプログラムの著作物に該当しうると整理しています(上野達弘=奥邨弘司編『AIと著作権』勁草書房・2024年・座談会発言部分317頁)。
- 5髙部眞規子編著『知的財産権訴訟Ⅱ 最新裁判実務大系』(青林書院、2018年)611頁
- 6プロンプトについてではありますが、文化庁も、令和6年7月の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(文化庁著作権課)において、プロンプトについて「プロンプトが『思想又は感情を創作的に表現したもの』と評価できるのであれば著作物となりうる。もっとも、多くの場合は単語の羅列や指示にとどまり、著作物とならない。」と整理しています。
- 7
- 8前田健「柔軟な権利制限規定の設計思想と著作権者の利益の意義」田村善之編『知財とパブリックドメイン 第2巻 著作権法篇』勁草書房・2023年・205-207頁は、3号のこのカッコ書きの存在自体が、「機能的著作物にとっては機能の享受こそが著作物の享受だと理解できることを裏付けている」と整理しています。












