ウェブ利用規約のせいで起きる炎上を防ぐためにこれだけは知っておこう(1)
Webサービス事業者が利用規約をなぜ作った方がいいか、という点については
「利用規約を適当に作ろうとしているベンチャーに贈る「利用規約をきちんと作った方がいい2つの理由」
の記事で書きました。
しかし、せっかく利用規約を定めていても利用規約が原因で炎上が発生するという事例は事欠きません。
ただ、これまでの炎上例を見ると、実はそのほとんどが「投稿系サービスで投稿されたコンテンツの著作権を巡っての炎上」です。
そこで今回と次回の2回にわたって
・ 利用規約が原因で炎上した著名な事例
・ 投稿系サービスの利用規約の3つのパターン
・ 炎上事例に学ぶ教訓
について説明します。
今回はまず「利用規約が原因で炎上した著名な事例」を2つ紹介します。
■ ユニクロのTシャツ作成サービス「UTme!(ユーティーミー)」
少し古い話になりますが、ユニクロが2014年5月19日に「UTme!(ユーティーミー)」というTシャツ作成サービスを開始しました。
これは,スマホで絵を描き、シェイクするだけで、だれでも簡単にオリジナルデザインのTシャツをつくることができるというサービスですが,サービス開始時点においては,このサービスの利用規約に「著作物に関する全ての権利を株式会社ユニクロに無償譲渡する」とされた項目がありました。
問題となった当初の規約の該当部分は,以下の3点です。
- ユーザーは,投稿データについて,その著作物に関する全ての権利(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含みます)を,投稿その他送信時に,当社に対し,無償で譲渡します。
- ユーザーは,当社及び当社から権利を承継しまたは許諾された者に対して著作者人格権を行使しないことに同意するものとします。
- ユーザーは,当社が実施する各種キャンペーン等に投稿データが使用されることに同意するものとします。
この規定を見たユーザーからは非難が相次ぎました。
https://twitter.com/tatuya_kannagi/status/468299546670276608?ref_src=twsrc%5Etfw
著作権の中には、財産権と人格権と呼ばれる二種類の性格のものが入っている。前者の財産権に関するものは全て無償譲渡させ、後者の人格権に関しては行使しない事を同意させている。ユニクロのこのサービスは、悪質な契約の見本といっていいレベル。
— kato takeaki (@katot1970) May 19, 2014
結局、そのような批判の高まりを踏まえ、ユニクロは利用規約を改定しました。
ユニクロでTシャツ作成すると全著作権を譲渡 UTme!利用規約を警告する声
(Huffington Post Japan 2014/5/19)
■ テレビ朝日の動画投稿サイト「みんながカメラマン」
このユニクロの騒動の少し後に、テレビ朝日の動画投稿サイトである「みんながカメラマン」においても利用規約が原因で炎上が発生しました。
問題となった当初の規約の該当部分は以下の点です(当初の規約はすでに削除されていますが、ウェブ魚拓には残っているようです)- テレビ朝日は投稿データを、地域・期間・回数・利用目的・利用方法(放送、モバイルを含むインターネット配信、出版、ビデオグラム化、その他現存し、または将来開発されるあらゆる媒体による利用)・利用態様を問わず、自由に利用し、またテレビ朝日が指定する第三者に利用させることができるものとします。当該利用にかかる対価は無償とします。
- テレビ朝日は、投稿データの利用に関して投稿者に何らかの損害が生じた場合でも、一切の責任を負いません。また投稿者は、投稿データの利用に関して第三者からテレビ朝日に何らかの異議・請求等があった場合、テレビ朝日からの要求に従い、投稿者の責任と費用において解決します。また、投稿データの利用が第三者の権利を侵害したとして、テレビ朝日が損害を被った場合は、これを賠償します。
この規定を見たユーザーからは先ほどのユニクロの事例と同様激しい批判が相次ぎました。
採用してもテレ朝側は対価は一切払わないが、かかる費用・リスク・賠償責任はすべて投稿者が負うというブラック利用規約 / “みんながカメラマン|スクープ映像募集” http://t.co/QR9CiHZjov
— nots™ (@call_me_nots) August 11, 2014
テレ朝の映像投稿サイト、利用規約にくそワロタ(いや、実際は笑えないレベルだが。
使う・使わないはテレ朝側の責任なのに、問題起きたら投稿者の責任で、さらにテレ朝にも損害賠償しろとかw個人でも、全世界に向けて公開出来る時代で、メディア側がこのレベルかぁ…。
— sandava (@san_dava) August 12, 2014
すげーなテレ朝。ユニクロ騒動知らんのか。
— たろ (@ne_taro) August 12, 2014
で、これまた利用規約の改定に追い込まれました。
テレ朝投稿サイト「みんながカメラマン」規約、批判受け改訂へ
(ITmedia 14/8/12)
■ まとめ
このように、投稿系サービスにおいては、投稿されたコンテンツの著作権を巡って、しばしば利用規約を理由とした炎上が発生しています。
なぜそのような炎上が繰り返し発生してしまうのでしょうか。
炎上を防ぐためには
・ 投稿系サービスの利用規約の3つのパターンをまず知った上で、
・ 利用規約でどのように定めておけば炎上を防げるのかについての知識を身につけておく必要があります。
次回記事に続く。