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「仙台初売りは特別ですごい」のか?――SNSで広がる言説を、景品表示法の仕組みから整理する

アバター画像 齋藤直樹

 はじめに

皆さんはじめまして。STORIA法律事務所弁護士の齋藤直樹と申します。
現在は神戸オフィスで勤務しておりますが、私の地元は宮城県仙台市です。

さて、皆さんは「仙台初売り」をご存知でしょうか。

仙台初売りとは、毎年1月2日~4日にかけて仙台市を中心に行われる、新年恒例の商業イベントです。いわゆる「初売り」ですが、単なるセールではなく、商品に加えて豪華な「おまけ」や来店特典が付く点に大きな特徴があります。
起源は江戸時代ともいわれ、旧年の感謝と新年の挨拶を兼ねた商慣習として長く続いてきました。特に仙台では、商品そのものよりも「どんな景品が付くか」が話題になるほどで、茶箱や日用品の詰め合わせなど、ボリュームのある景品が並ぶ光景は、正月の風物詩となっています。
現在では、開店前から行列ができる店舗も珍しくなく、地域全体が一体となって盛り上がるイベントとなっております。

私は年始には仙台に帰省することが多く、子どもの頃から親しんできた仙台初売りを、今でも毎年の楽しみの一つとしております。
子供の頃は単純にこれらの「おまけ」に喜んでいたのですが、弁護士になって改めて考えてみると、「仙台初売りって、景品表示法(以下「景表法」といいます。)に抵触していないのかな」という疑問が湧いてきました。

改めて調べてみたところ、色々と面白いことがわかったので記事にさせていただきました。

「おまけ」や「来店特典」(景品類1「景品類」とは、①顧客を誘引するための手段として(顧客誘引性)、②事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引に付随して(取引付随性)、③取引の相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益(経済上の利益)をいい、④値引・アフターサービス・附属物は除かれます(例外要件)。詳しくは、消費者庁「景品に関するQ&A1番」をご参照ください。)の提供は景表法に基づく景品規制の対象となり得るため、企画設計にあたって景品規制を踏まえる必要があります。

一方、仙台初売りについては、公正取引委員会(東北事務所)が「仙台初売り特例」(以下「仙台初売り特例」といいます。)を公表しており、一定の条件の下で、総付景品に関する運用上の特例が示されています。
※総付景品とは2「総付景品」の定義について、消費者庁「景品に関するQ&A109番」をご参照ください。なお、「総付」という言葉から、商品の購入者全員や来店者全員にもれなく提供する景品のことを指すようにも思えますが、必ずしもそのような場合に限られません(植村幸也『製造も広告担当も知っておきたい 景品表示法対応ガイドブック〔改訂版〕(第一法規、2024年)180頁)。例えば、商品若しくは役務の購入の申込み順又は来店の先着順により提供する景品類も、原則として総付景品に該当します。、一般消費者に対して、懸賞(抽選等)によらないで提供する景品類(例えば、商品購入者や来店者に提供する景品類)をいいます。

もっとも、X(旧Twitter)等のSNSでは、この「特例」という言葉だけが独り歩きし、「仙台初売りは景表法の例外だからおまけを無制限に付けてよい」等の誤った理解が拡散しているように見受けられます。

そこで本稿では、景品表示法の総付景品規制(全国共通ルール)、仙台初売り特例の内容等を解説し、SNSで広がりがちな理解と実際の法制度との違いを明らかにしたいと思います。

 SNSでよく見かける3つの誤解

仙台の初売りについては、SNS上で次のような声がよく見受けられます。

 誤解①「仙台初売りは景表法の例外だから、おまけ(総付景品)は無制限に付けてよい」

これは誤りです。
仙台初売り特例では、特例の内容を示すと同時に「なお、下記の範囲を超えて景品類を提供すると景品表示法に違反することになりますので、御注意ください。」と明確に注意喚起がなされています。
仙台初売り特例は、景品表示法の無制限の「例外」ではありません。

 誤解②「仙台初売りは景品5万円までOK」

これも現在では誤りです。
仙台初売り特例には、「景品類の限度額は5万円とする」という文言が記載されていますが、注6で、この限度額(5万円)は平成8年4月に撤廃されていることが明示されています。
なお、「景品類の限度額は5万円とする」というのは、平成8年の総付制限告示3一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年3月1日公取委告示第5号)(以下「告示」といいます。)改正までの間、告示で定められていた制限であり、仙台初売り特例の上記文言は、平成8年改正以前の規制の名残りであると思われます4告示改正の歴史について、村上政博他編『条解 景品表示法』(弘文堂、2025年)225頁

 誤解③「仙台初売りは取引価額の20%まで景品を付けられる(仙台初売りだけ特別)」

これも現在では誤りです。
平成19年の告示改正までの間は、総付景品の上限は原則として「取引の価額の10%」でした。この改正前における仙台初売り特例であれば、「仙台初売りは取引価額の20%まで景品を付けられる」という点は誤りではありません。
もっとも、平成19年告示改正により、総付景品の上限は原則として「取引の価額の20%」に引き上げられましたので、現在においては、仙台初売りだけが特別であるとする上記③は、誤りであるということになります。

 景品表示法の総付規制(全国共通ルール)

 はじめに

誤解①から③をより詳しく理解できるように、まず景表法の規制(総付景品についての総付規制)について簡単に解説します。その後、仙台初売り特例が、景表法の総付規制と比べて、どのような特例なのかを解説します。

 景表法の総付規制

景表法第4条に基づく告示5一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年3月1日公取委告示第5号)、改正平成28年4月1日内閣府告示第123号。によって、以下のとおり、取引価額6取引価額は、景品類の提供者が小売業者又はサービス業者である場合は対象商品又は役務の実際の取引価格を、製造業者又は卸売業者である場合は景品類提供の実施地域における対象商品又は役務の通常の取引価格を基準とします(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について(昭和52年4月 1日事務局長通達第6号)、改正 平成 8年2月16日事務局長通達第1号)。に応じて総付景品の最高額7景品類の価額は、景品類と同じものが市販されている場合は、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格によります。景品類と同じものが市販されていない場合は、景品類を提供する者がそれを入手した価格、類似品の市価等を勘案して、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入することとしたときの価格を算定し、その価格によります(景品類の価額の算定基準について(昭和53年11月30日事務局長通達第9号))。詳しくは、消費者庁「景品に関するQ&A76番以下」をご参照ください。の限度額が設けられています。

 総付景品規制の改正経緯

「仙台初売りは取引価額の20%までおまけ(総付景品)を付けられる」「5万円までなら問題ない」といった誤解が残りやすい背景には、景品表示法における総付景品規制が、これまで複数回にわたり改正されてきた経緯があります。
まず、かつては、総付景品の最高額について「取引価額の一定割合」による制限に加え、絶対額としての最高限度額(5万円)が設けられていました。この点が「景品は5万円まで」といった理解が現在でも散見される要因となっているものと思われます。
しかし、この5万円という最高限度額の制限は、平成8年の告示改正により撤廃されています。現在の景品規制は、原則として取引価額との関係で整理されており、総付景品について一律に「5万円まで」とするルールは存在しません。
また、かつての総付景品の最高額は、原則として「取引価額の10%」とされていました。そのため、当時においては、「取引価額の20%」まで景品類の提供を認める仙台初売り特例は、全国ルールと比較して相対的に緩やかな内容であったといえます。
その後、平成19年の告示改正により、総付景品の最高額は、原則として「取引価額の20%」に引き上げられました(併せて、取引価額が1,000円未満の場合の最高額についても、200円と整理されています)。
この改正により、現在では、「取引価額の20%」という基準自体は、仙台初売りに限らず、全国共通のルールとなっています。
したがって、現行法の下では、「仙台初売りだけが20%まで景品を付けられる」という理解は、正確ではありません。

 仙台初売り特例:何が「特例」なのか

 適用条件(地域・期間・対象)

仙台初売り特例が適用される場合、総付景品について、景表法上の総付規制とは一部異なるルールのもとで提供できるとされています。
仙台初売り特例の適用条件についてまとめると、以下のとおりです8なお、仙台初売り特例は店頭販売にのみ適用され、オンラインでの取引には適用されません(旧仙台藩の地域等以外の場所でも特例に基づいて商品を購入できてしまい、特例の趣旨を没却するため)。

 仙台初売り特例の内容

仙台初売り特例では、景品類の最高額について以下のとおり示されています。
そして、以下の(1)ただし書のみが、現行景表法との違いとなります。

(1) 取引価額の10分の2
ただし、500円以内の価額の景品類を提供する場合は、取引価額の10分の2を超えることとなっても、この限りではない。
(2) 景品類の限度額は5万円とする。
(注6)景品類の限度額については、総付制限告示の改正(平成8年公正取引委員会告示第2号)により、平成8年4月に撤廃されています。

 結局、景表法と仙台初売り特例との差はどこにあるか

上記(1)ただし書の存在により、現行法と仙台初売り特例との差が実質的に生じるのは、取引価額が2,500円未満の場合に限られます。具体的には、次の表及びグラフのとおりとなります。

現行法では、取引価額が1,000円以上の場合、総付景品の上限は取引価額の20%とされています。この20%の上限が500円に達するのは、取引価額が2,500円の場合です。
そのため、取引価額が2,500円以上の取引では、景表法と仙台初売り特例との間に差は生じません。
一方、取引価額が2,500円未満の場合には、景表法の上限額は500円に満たないため、仙台初売り特例の「500円以内の価額の景品類を提供する場合は、取引価額の10分の2を超えることとなっても、この限りではない。」というルールが、意味を持つことになります。

 具体例で確認

以下、具体例で仙台初売り特例の適用について確認していきます。

 商品(900円)の購入で500円相当のおまけがつくケース

取引価額が900円の場合、景表法上の景品価額の上限は200円です(取引価格が1000円未満の場合の景品類の最高額は200円であるため)。したがって、仙台初売り特例が適用されない場合、このケースは景品表示法違反となります。
一方、仙台初売り特例が適用される場合、「500円以内の価額の景品類を提供する場合は、取引価額の10分の2を超えることとなっても、この限りではない。」というルールにより、このケースにおける500円相当のおまけの提供は、景表法違反とはなりません。

 商品(2000円)の購入で500円相当のおまけがつくケース

取引価額が2,000円の場合、景表法上の景品の上限は400円です(取引価格が1000円以上の場合の景品類の最高額は、取引価格の10分の2であるため)。したがって、仙台初売り特例が適用されない場合、このケースは景品表示法違反となります。
一方、仙台初売り特例が適用される場合、「500円以内の価額の景品類を提供する場合は、取引価額の10分の2を超えることとなっても、この限りではない。」というルールにより、このケースにおける500円相当のおまけの提供は、景表法違反とはなりません。

 福袋(10,000円)の購入で1,500円のおまけがつくケース

取引価額が10,000円の場合、景表法上、総付景品の最高額は取引価額の10分の2である2,000円となります。したがって、市価(税込)で2,000円以内のおまけであれば、景表法違反とはなりません。
このケースは1,500円のおまけを提供するケースであるため、景表法違反ではなく、また、仙台初売り特例における「ただし、500円以内の価額の景品類を提供する場合は、取引価額の10分の2を超えることとなっても、この限りではない。」という部分の適用はありません。
以上より、このケースだと、景表法の総付規制と仙台初売り特例との間に差異はなくなります。

 まとめ:仙台の盛り上がりは、特例の存在よりも、積み重なった土壌によるところが大きい

ここまでの整理を踏まえると、仙台初売り特例は、景表法における無制限の例外ではなく、取引価額が2,500円未満の範囲において総付景品の上限を実質的に引き上げる「500円ルール」としての意味を持つにとどまることが分かります。
しかし、それにもかかわらず、仙台初売りが例年これほどの盛況を誇っていることは、この制度的特例だけでは十分に説明し尽くせません。長い年月を通じて、「人が集い、店が工夫を凝らし、地域がそれを受け止める」という循環が形成され、地域行事としての厚みが培われてきたのであり、制度論を超えたこうした歴史的蓄積こそが、仙台初売りを支える基盤なのでしょう。

なお、法的な仕組みに着目すれば、景表法の枠組みを正確に理解し、総付規制の範囲内(20%/200円以内のルール)で企画を設計することにより、他の地域においても、仙台初売りに近い内容のイベントを実施できる可能性があります。当事務所の本店所在地である神戸市の商店街でも、仙台初売りのような企画が実現するのであれば、お手伝いしてみたいところです。

  • 1
    「景品類」とは、①顧客を誘引するための手段として(顧客誘引性)、②事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引に付随して(取引付随性)、③取引の相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益(経済上の利益)をいい、④値引・アフターサービス・附属物は除かれます(例外要件)。詳しくは、消費者庁「景品に関するQ&A1番」をご参照ください。
  • 2
    「総付景品」の定義について、消費者庁「景品に関するQ&A109番」をご参照ください。なお、「総付」という言葉から、商品の購入者全員や来店者全員にもれなく提供する景品のことを指すようにも思えますが、必ずしもそのような場合に限られません(植村幸也『製造も広告担当も知っておきたい 景品表示法対応ガイドブック〔改訂版〕(第一法規、2024年)180頁)。例えば、商品若しくは役務の購入の申込み順又は来店の先着順により提供する景品類も、原則として総付景品に該当します。
  • 3
    一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年3月1日公取委告示第5号)
  • 4
    告示改正の歴史について、村上政博他編『条解 景品表示法』(弘文堂、2025年)225頁
  • 5
    一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年3月1日公取委告示第5号)、改正平成28年4月1日内閣府告示第123号。
  • 6
    取引価額は、景品類の提供者が小売業者又はサービス業者である場合は対象商品又は役務の実際の取引価格を、製造業者又は卸売業者である場合は景品類提供の実施地域における対象商品又は役務の通常の取引価格を基準とします(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について(昭和52年4月 1日事務局長通達第6号)、改正 平成 8年2月16日事務局長通達第1号)。
  • 7
    景品類の価額は、景品類と同じものが市販されている場合は、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格によります。景品類と同じものが市販されていない場合は、景品類を提供する者がそれを入手した価格、類似品の市価等を勘案して、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入することとしたときの価格を算定し、その価格によります(景品類の価額の算定基準について(昭和53年11月30日事務局長通達第9号))。詳しくは、消費者庁「景品に関するQ&A76番以下」をご参照ください。
  • 8
    なお、仙台初売り特例は店頭販売にのみ適用され、オンラインでの取引には適用されません(旧仙台藩の地域等以外の場所でも特例に基づいて商品を購入できてしまい、特例の趣旨を没却するため)。