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神戸ポートタワーを無許可で撮影・利用したら著作権侵害になるのか

私たちの事務所は神戸にあるのですが、有名なランドマークとして神戸ポートタワーがあります。

神戸ポートタワー

神戸ポートタワー

このような著名な建造物の撮影については、映像制作会社やイラスト作成会社などからよく質問を受けます。
「番組や素材制作に際して,著名な建物・建造物を撮影することがあります。もちろん建物等の中に入って撮影する際には許可を得て撮影するのですが,公道からそれらの建物・建造物を撮影したり,撮影した映像を使用する場合にも許可が必要なのでしょうか。」というような趣旨の質問です。
建築物などの著作権については結論としては以下の3点にまとめられるのですが、今回はそのあたりを詳しく説明していきたいと思います。

1 著作物でないか、保護期間が満了していれば利用は自由。
2 保護期間内にある著作物だとしても著作権法46条により利用は原則として自由。
3 ただし,美術作品の複製物(絵はがきやカレンダーなど)の販売を目的とする場合などは撮影・利用不可。


■ 著作物でないか、保護期間が満了していれば利用は自由

まず,撮影対象となっている建物や建造物が著作物かどうかを検討する必要があります。
著作物でなければ,公道からの撮影は自由になるからです。
著作権法10条1項には,著作物の例示として

四  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五  建築の著作物

が掲げられています。

このうち「五  建築の著作物」は,全ての建築物が該当するわけではなく,いわゆる建築芸術と言いえるような創作性を備えた場合に限られるとされています。したがって,通常の建売住宅などはこれに該当しません。
したがって,有名な建物や建造物についても,全てが著作物に該当するわけではないということになります。その場合は、当然のことながら撮影などは自由に行うことが出来ます。
また,著作物であったとしても,歴史的建造物(たとえば金閣寺や銀閣寺)については,通常著作権の存続期間が満了していますので、これまた自由に利用できます。

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■ 保護期間内にある著作物だとしても著作権法46条により利用は原則として自由

次に、仮に保護期間内にある建築の著作物についても、建物や屋外に恒常的に存在する建造物については,原則として自由に撮影したり放送したりすることが出来ます。
根拠は,著作権法46条という条文にあります。

(公開の美術の著作物等の利用)
第四十六条  美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一  彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三  前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四  専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

ちょっと読みにくいですが
1 美術の著作物でその原作品が屋外の場所(注:街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所のこと)に恒常的に設置されているもの
2 建築の著作物
については4つの例外を除き、原則として自由に利用できるという条文です。

簡単なフローチャートに落とし込むとこんな感じですね。

スライド1

このフローチャートを見ていただければわかるように「建築の著作物」と「美術の著作物」とで扱いが分かれています。
具体的に考えてみましょう。

▼ 神戸ポートタワー

たとえば神戸ポートタワーは「建築の著作物」に該当する可能性があります(著作権は期間満了により切れているかもしれませんが,そこはちょっと置いておいて。)。
そのように解した場合、著作権法46条1項が適用され原則として自由に利用できるということになります。

神戸ポートタワー

神戸ポートタワー

ただし、先ほどのフローチャートにあるように
1 同じ建築物の建築
2 屋外恒常設置のための複製
はできません。
神戸ポートタワーに即して言うと,たとえば

1 実物大の大阪ポートタワーを制作して道頓堀に設置する場合(2号)
2 50分の1のミニポートタワーを制作して,公園に設置する場合(3号)
はアウト

ということになります(ま,大阪ポートタワーはおそらく誰も作ろうと思わないでしょうけど。。。。)
逆に、

1 神戸ポートタワーを撮影したり,撮影した映像や写真を番組などで利用したりすること
2 神戸ポートタワーのミニチュアやポストカードを作って販売する行為
は著作権法上は自由に出来る

ということになります。
これは4号が「美術の著作物」に限定されており,「建築の著作物」には適用されないからです。

▼ 神戸ルミナリエは自由利用できない可能性が高い

神戸ルミナリエについてはどうでしょうか。
神戸ルミナリエは,「美術の著作物」に該当すると思われます。

神戸公式観光サイト(http://www.feel-kobe.jp/feature/luminarie/)より

神戸公式観光サイト(http://www.feel-kobe.jp/feature/luminarie/)より

したがって,この場合に問題になるのは46条1項の「美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの」のうちの「恒常的に設置されている」といえるかどうか、です。
・ 「恒常的に設置されている」

→著作権法46条1項の適用があり原則自由利用できる

・ 「恒常的に設置されている」と言えない

→著作権法46条1項の適用がないので、原則として許可を得ないと撮影や撮影した写真の販売などはできない

ということになります。
この「恒常的に設置されている」という要件は,常時継続して公衆の観覧に供するような状態に置くことをいうとされており,時期によって作品の付け替えが出来るような場合は該当しないとされています。
とすると、神戸ルミナリエは期間限定ですし,毎年内容が変わりますので,この「恒常的に設置されているもの」の要件を満たすのは難しいと思われます。
したがって,神戸ルミナリエについては著作権法46条の適用がないので自由利用が出来ない可能性が高い,ということになります。
結論としては、神戸ルミナリエのポートレイトを販売したり、ミニチュアを販売することは著作権侵害になる可能性が高いということです。

ちなみに、いつも使っている写真素材サイトで「神戸 ルミナリエ」で検索しても1つも写真が出てきませんでした。「神戸ポートタワー」で検索すると沢山出てくるのに。

これは、このような著作権法上の問題も影響しているのかもしれません。

 

■ まとめ

  • 美術作品や建築物であっても著作物で無かったり,著作権存続期間が満了しているものは撮影・利用自由
  • 著作物であっても,建築物や屋外に恒常的に設置されている美術作品は原則として撮影・利用自由
  • ただし,美術作品の複製物(絵はがきやカレンダーなど)の販売を目的とする場合などは撮影・利用不可。