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ベンチャー必読!15分でわかる著作権の基礎

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ベンチャーやスタートアップなら必ず身につけておきたい著作権の基礎について説明します。「著作権侵害をしない」という守りの姿勢から「著作権で保護されるラインを知り、積極的に活用して新事業を構築する」という攻めの姿勢に転じるために,まずは15分で著作権の基礎を押さえましょう。


1「著作権」の定義は条文に定められていない

著作権は「著作権法」という法律が定めています。この法律は頻繁に改正されており、124条(平成26年6月現在)からなる複雑な法律です。
ではこの著作権法に「著作権とは・・・・・という権利である。」という定義規定はあるでしょうか。
著作権法には2条に「定義」という条項がありまして、たとえば著作=「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とか著作=「著作物を創作する者」などと定めています。

著作についても当然に定義規定があるように思いますが、実は定められていません。「第二章 著作者の権利」「第三節 権利の内容」というところには著作権に含まれる権利が列挙されていますが、端的な定義規定はないのです。


2 著作権の定義

そこで私たちが普段から用いており、セミナーなどで「わかりやすい」と評価を頂いている著作権の定義をご紹介します。
著作権とは
ア 一定の情報(著作)について
イ それを創作した人(著作)が
ウ 一定期間独占できる権利
を言います。

図で示すとこんな感じですね。
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つまり著作が著作を創作することで、著作が発生し、当該著作者が当該著作物に関する一定の権利を独占する、ということです。
もっとも後で説明しますが、著作権は著作者が著作物を創作した瞬間に何の手続も必要なく発生します。この図では一応矢印を付していますが、実際には「創作」「発生」「独占」は同時に発生すると考えてください。
先ほどの定義をもういちど記載します。
ア 一定の情報(著作)について
イ それを創作した人(著作)が
ウ 一定期間独占できる権利

著作権の定義をこのように3つに分けて押さえ、「何について」「誰が」「どのような権利を持っているか」という視点=「著作権を考える際の3つの視点」で考える癖を付けておくことはとても重要です。
新規事業を考えるとき、自社のサービスが他社の著作権侵害をしていないか検討するとき、うちのコンテンツのパクられたんじゃないかと思ったときなど、どのような場合にも必ず使える視点ですので、是非マスターしましょう。

⇒著作権を考える際は、「何について」「誰が」「どのような権利を持っているか」という3つの視点から考える癖をつける。


3 「著作者じゃない人」「著作物でないもの」「著作権ではない権利」

このように著作権の定義を「一定の情報(著作物)について」「それを創作した人(著作者)が」「一定期間独占できる権利」と考えると、当然「著作者じゃない人」「著作物じゃないモノ」「著作権じゃない権利」があるということがわかりますよね。
この図の赤い丸のところです。

2015y08m25d_223638888

「著作者じゃない人」から著作権利用の許可を貰っても仕方ないですし、「著作物でないもの」であれば誰の許しも得ずに自由に利用できる。「著作権でない権利」であれば自由に行使できる、ということになります。

ですので「著作者」「著作物」「著作権の具体的内容」を押さえるのはとても大事なのですが、それ以上に大事なのは「著作者と著作者じゃない人の境界」「著作物とそうでないモノの境界」「著作権と著作権ではない権利の境界」という「境界線」なのです(上記の図の実線部分です)。

⇒「著作者と著作者じゃない人」「著作物とそうでないモノ」「著作権と著作権ではない権利」の「境界線」を押さえる意識を持つ。

 

以下「著作者」「著作物」「著作権の具体的内容」の順序で説明します。


4 「お金を出した人」は著作者ではない!

誰かにお金を支払ってコンテンツ(写真やイラスト、動画など)を作成して貰った場合、お金を支払った人に著作権が発生すると誤解されている人が多いのではないでしょうか。

実は法律上は違います。著作権法では「著作者」とは「著作物を創作する者」と定義されています(法2条1項2号) 。お金を出した人は、どう考えても著作物を「創作」しているわけではありませんから著作者ではありません。著作者は実際に当該コンテンツを制作したクリエイターです。
ですからお金を出した人が著作権を取得しようと思えば、ちゃんと著作者(クリエイター)との間で「著作権譲渡契約」を締結しなければならないのです。
もちろん契約書がなければ著作権譲渡の合意が成立しないというわけではありませんから、口頭やメールのやりとりで合意が成立することもありえますが、どうしても内容が不明確になります。


5 著作物でないものについては誰の了解を得ずに使って良い

著作物でないものについては、原則として誰の了解を得ずに使ってよいことになります(ただし、著作権以外の権利(商標権など)が存在する場合があるので注意しなければなりません)。
これはWEBビジネスを考える上で非常に大事なことです。たとえば私たちがよく相談を受ける事例として「ニュースキューレーションサービスを立ち上げたい」というものがあります。
キュレーションサービスは、他社の著作物をキュレートして利用するというものですから、サービス内容によっては著作権侵害のリスクがあります。
ただ、たとえば「他社のニュースサイトから事実だけを抽出して表示する」「抽出した事実を別の表現で表示する」サービスの場合には著作権侵害にはなりません。なぜなら「事実は著作物ではない」からです。
あくまで一例ですが、著作物でない物のうち、WEBビジネスでよく活用されるのは「事実」「データ」「実用品のデザイン」「アイデア」「企画」「ありふれた表現」などです。
なぜこれらは著作物ではないのか?それは著作権法で著作物が「思想または感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(法2条1項2号)とされているからです。
この定義からわかるように「思想または感情でないもの」「創作的でないもの」「表現されていないもの」「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属さないもの」はいずれも著作物ではないということになります。
「事実」「データ」「実用品のデザイン」は「思想または感情ではない」ですし、「アイデア」「企画」は「表現されていない」ために著作物とはならないのです。
詳細は「著作物でないもの」を知っておくとビジネスで必ず役に立つをご参照ください。


6 著作権は「権利の束」

最後は著作権の権利内容です。「著作者で具体的にどんなことができるか」「著作権に基づき第三者に対して何を禁止できるのか」という問題です。
これは著作権法17条に規定があります。簡単に言うと、著作者は「著作者人格権」と「著作(財産)権」を享有する、とあって、以下の条項でその具体的内容が列挙されています。全体像をざっくり示すとこんな感じですね。

スライド9

下のほうに見慣れない「著作隣接権」という言葉が出てきていますが、ここではとりあえず無視してください。
「著作権」には「著作(財産)権」と「著作者人格権」という2種類の権利があること、それはさらに「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」「複製権「公衆送信権」等々いろいろな権利が含まれている、ということを押さえておければよいです。
このように著作権にはいろいろな権利が含まれているため、「権利の束(bundle of rights)」と呼ばれます。


7 著作権は第三者に対して禁止を請求できる権利でもある

ちなみに「著作権」というと一般的に「著作者が~できる権利」と説明されます。もちろん間違いではないのですが、加えて「第三者に対して侵害行為を禁止できる権利」でもあるのです。
一例を挙げると、「複製権」は「著作者が複製できる権利」を意味しますが、同時に「著作者でなければ複製できない」「著作者には第三者が無断で複製することを禁止できる権利がある」ということを意味しています。


8 まとめ

▼著作権とは

ア 一定の情報(著作)について(対象)
イ それを創作した人(著作)が(主体)
ウ 一定期間独占できる権利(具体的権利内容)

▼「著作者と著作者じゃない人」「著作物とそうでないモノ」「著作権と著作権ではない権利」それぞれの「境界線」を押さえる意識を持つ