ブログ/ BLOG

  1. ホーム
  2. ブログ
  3. インターネット
  4. mixiやユニクロの炎上例から学ぶ、賢い利用規約の定め方とは | STORIA法律事務所

インターネット 著作権

mixiやユニクロの炎上例から学ぶ、賢い利用規約の定め方とは

柿沼太一

サイト利用者が投稿するコンテンツ(UGC=User-Generated Contents)で構成されるサイトのことをCGM(Consumer-Generated Media)と呼びます。口コミサイト、SNS、動画共有サービス、キュレーションサービスなどですね。
このようなCGMサイトでは、ユーザーからコンテンツ(文章、画像、写真、動画など)の提供を受けるわけですが、これらのコンテンツの著作権をどう扱うかを必ず利用規約において定めなければなりません。その定め方はサービスによって色々なパターンがあるのですが、一歩間違うと炎上につながります。

■1 過去に炎上したmixiやユニクロ

古い例ではmixi炎上事件があります。2008年3月3日、mixiが以下のように利用規約の内容を変更しました。

「本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします

この発表直後よりネット上では「mixiはユーザーの投稿を利用して金儲けしようとしている!」と炎上し,翌日に広報が記者会見を開かざるを得なくなる事態にまで発展しました。
最近ではユニクロが2014年5月19日に開始した「UTme!(ユーティーミー)」というTシャツ作成サービスでも同じような炎上騒ぎがありました。
キャプチャ
スマホで絵を描きシェイクするだけで、だれでも簡単にオリジナルデザインのTシャツをつくることができるというサービスですが,サービス開始時点においては利用規約に「著作物に関する全ての権利を株式会社ユニクロに無償譲渡する」とされた項目がありました。
しかしサービス開始直後から、ネット上で激しい批判を浴び,わずか2日後の5月21日にユニクロは当該規約を「投稿データの著作権はユーザーに帰属します」と変更しました。

■2 著作権で縛るとかえってビジネスが広がらない

このようにユーザーから提供を受けたコンテンツの著作権をどう扱うかは、一歩間違うと炎上の危険性のあるデリケートな問題なのですが、炎上するかどうかとは別に、ビジネスの広がり自体にも大きく影響します。
SKETというトップクリエイターが資料・コンテンツを作成代行してくれるクラウドサービスがあります。
キャプチャ2
ユーザーから元資料の提供を受けて営業資料、広告媒体資料、ホワイトペーパー、IR資料、ビジネスシーンで必要となる資料を短期間で作成するというもの。資料作成に特化したクラウドソーシングという感じでしょうか。
なかなか魅力的なサービスで今度使ってみようかなと思いつつ、弁護士の立場でこのサービスの利用規約を見てみると残念な部分が。「(著作権等)第10条」の部分です。

1 利用者より提供された機密情報を除く全ての作成データ及び当サイトで提供されている全ての文章、画像・データ・デザイン等(以下「弊社著作物」といいます。)についての著作権は、すべて弊社に帰属するものとします。
2 利用者は、個人的または内部的に限られた範囲内においての弊社著作物の複製や保存等する場合その他著作権法により認められる場合を除き、弊社の許諾なくして使用(複製、改変、送信、譲渡及び再販等二次利用並びに利用者のウェブサイトへの転載等を含みます。)する行為は著作権法により禁止されています。

この「作成データ」というのは「ユーザーから提供を受けた資料を元にSKETが作成した資料データ」ですから(規約5条)、この規約を素直に読むと

1 ユーザーから提供を受けた資料を元にSKETが作成した資料データの著作権は、ユーザーから提供を受けた資料の著作権も含め、すべてSKETが有する。
2 ユーザーは、SKETから受領した資料データを個人的または内部的に限られた範囲内でしか利用できない

ということになります。
しかしそもそも、SKETは「営業資料、広告媒体資料、ホワイトペーパー、IR資料」を作成すると謳っているのですから、ユーザーとしては、顧客へのプレゼンや自社製品の広告資料(紙の媒体やサイトなど)に使うためにSKETに依頼しているはずです。にもかかわらず「個人的または内部的に限られた範囲内でしか利用できない」んじゃあ、SKETに依頼した意味がほとんどなくなってしまいます。
また、「作成データ」とは簡単に言うと「ユーザーが提供した資料データ」+「SKETの創作したデザイン等」です。
ですので、規約上「作成データの著作権がすべてSKETに移転する」ということは、「ユーザーが提供した資料データ」の著作権も移転してしまうと言うことになりますが、それはユーザーとしても意図していないはずです。
さらにSKETとしても、作成データの著作権を自社で取得しても、利用価値はほとんどないと思われます。

■私ならSKETさんにこうアドバイスする!

以上より、もし私がSKETさんから相談を受けたとすれば以下のように規約を変更するようアドバイスします。

1 作成データの著作権(SKETが創作したデザイン等を含む)はすべてユーザーに移転することとする。
2 その代わり、SKETのサービスの宣伝広告のために、作成データを利用することについてユーザーから許諾してもらう。

この規約であれば、ユーザーとしては作成データを自由に利用できるので、利便性は飛躍的に高まりますし、当然リピートやユーザー層の拡大につながります。
さらにSKETとしても、作成データについて、自社サービスの宣伝広告のために使うことができるようになります。
利用規約を少し変えるだけでサービス提供者、ユーザー両者ともにハッピーになれるはずです。
なぜSKETが現在のような利用規約にしているのかは分かりませんが、今の規約ではユーザーの立場からすれば使い勝手は必ずしもよくないのでは。大きく広がる可能性を秘めたサービスだけに、もったいないと思います。
是非ご検討を!