よくある法律相談事例一覧

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よくある法律相談事例一覧

Q

妻と息子が交通事故に遭い、息子は死亡、妻は頭部挫傷で入院しました。入院中、妻は自分も死ぬと言って輸液を抜いたり夜間に暴れたため、病院から付き添いを頼まれ、私が付き添いました。この間、私は1人で営む設計事務所を休業せざるを得ず収入(1日あたり2万円程)が減ったのですが、加害者に対し、付添費用や休業分を請求できませんか。

A

請求が認められる可能性が高いでしょう。

(1)入院付添費
入院中の被害者に職業付添人(ヘルパー)や近親者が付き添った場合、入院付添費を加害者に請求することが考えられます。ただし、付添費は必ず認められるわけではなく、医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢等により必要性のある場合に限り請求できます。
金額は、職業付添人の場合は実費が認められます。近親者の場合は、一般には、1日6500円を一応の基準とし、病状の程度や被害者の年齢等諸事情を考慮して日額を決め、その額に付添日数を掛けて計算します。過去の裁判例を挙げておきます。

[1]記憶障害・見当識障害等の高次脳機能障害(2級)の13歳女子中学生歳につき、当初は死の危険があり、病状と年齢から家族の声掛け・看視が必要だったとして日額8000円、症状固定まで786日間の近親者付添費を認めた(鹿児島地判平成21年6月3日自保ジ1822・18)。
[2]追突により妊娠36週で胎児死亡の被害者につき、精神状態不安定を理由に、夫の入院付添費日額6000円を認めた(東京地判平成11年6月1日交民32・3・856)。
[3]高次脳機能障害(後遺障害1級)の69歳女性につき夜間不穏が強く看護師への暴行があり24時間付き添いが必要だったと認定し、日額8500円を入院全期間(44日間)につき認めた(福岡地判平成17年7月12日自保ジ1612・14)。

(2)付添費用と休業損害
被害者に付き添うため、家族が休業を余儀なくされる場合があります。その休業による減収が一般的な付添費の基準額を超える場合、そのマイナス分はやはり事故による損害といえるでしょう。裁判所も、こうした場合、付添費算出のひとつの基準として休業損害額を採用しています。ただし、その計算方法は、付添費とは別にさらに休業損害を認める、1日あたりの休業損害額を付添費日額として算出する、など事案によって違いがあります。

[1]植物状態(1級)の被害者(男・17歳)つき、症状固定日まで両親の付添介護費日額6000円を認めたほか、付添介護等のために勤務先を欠勤した父親の66万円余の休業損害を被害者の損害として認めた(大阪地判平成15.4.18交民36・2・526)。
[2]右足二指切断、三指機能喪失等(8級)の7歳女子小学生につき、ホステスである母親の収入日額1万6410円を付添費日額とし、入院98日分を認めた(大阪地判平成14.5.31交民35・3・738)。

(3)ご質問について
ご質問によると被害者は事故で息子を失い、死を企図したり暴行を振るうなど極めて不安定な状態にあります。病院からの付添要請もあることから、付添の必要性は認められるでしょう。そして、付添のため休業した夫の減収分も事故による損害と考えられますので、加害者への請求を検討すべきです。もっとも、その計算には定まった方式がなく、諸事情を検討する必要がありますので、専門家に相談のうえ交渉を進めることをお勧めします。

Q

夫が交通事故で亡くなりました。夫とは30年以上夫婦として暮らしてきましたが、実は籍を入れていない事実婚関係です。私は体が弱く、ずっと夫から扶養されてきたので、夫が亡くなり生活費に困る状況です。法律上の妻であれば、加害者の保険会社に損害賠償請求ができると聞きましたが、私にも何か請求権がありますか。

A

内縁の妻は、相続人として損害賠償請求権を行使することはできませんが、夫から扶養を受けていた場合、将来の扶養利益分を請求することができます。

(1)事実婚夫婦と相続権
事実婚とは、夫婦としての実態を有しながら婚姻届を出しておらず、法律上(戸籍上)の婚姻関係にない夫婦関係を指し、内縁関係とも呼ばれます。その生活状況は法律婚となんら変わらないため、事実婚は、法律婚に準ずるものとして一定の法的保護を受けるとされています。たとえば、婚姻中の同居・協力・扶助義務(民法752条)、生活費分担義務(同760条)、婚姻関係終了時の財産分与(民法768条、771条)、婚姻関係破綻による慰謝料請求権(同709条、710条)などの法律婚に関する規定は、事実婚についても準用されます。
ただし、事実婚は、相続に関しては法律婚同様の保護を受けることはできません。相続権はあくまで戸籍上の関係に従って発生するものですが、上記のとおり、事実婚夫婦は、籍を入れていませんから、戸籍上はあくまで他人です。戸籍上他人に過ぎない事実婚の配偶者は、他方配偶者の遺産を相続人として受け取る権利はないのです。
そして、交通事故で被害者が死亡した場合に発生する損害賠償請求権も、被害者の遺産に含まれます。したがって、事実婚夫婦は、夫が事故で死亡しても、妻が相続人として夫の損害賠償請求権を承継することはできません。

(2)自動車保険・自賠責保険の取り扱い
しかし、妻を扶養していた夫が事故によって死亡すると、その後の妻の生活が経済的に立ち行かなくなる恐れがあり、その点で事実婚と法律婚とに違いはありません。夫が死亡しなければ、妻はその後も夫から扶養を受けられたはずであり、その利益を事故で奪われた以上、一定の保護は必要と考えられます。
そこで、一般に自動車保険・自賠責保険では、事実婚夫婦の一方が死亡した場合、事実婚関係・扶養関係が証明されれば、残された事実婚配偶者からの扶養利益の請求に応じて保険金の支払いを行っています。
最高裁も、事実婚の夫が交通事故で死亡した事案において、次のように述べて、妻の扶養利益請求権を認めました。
「内縁の配偶者が他方の配偶者の扶養を受けている場合において、その他方の配偶者が自動車の運行によって死亡したときは、内縁の配偶者は、自己が他方の配偶者から受けることができた将来の扶養利益の喪失を損害として、自動車保有者に対してその賠償を請求することができるものというべきである。」(最判平成5.4.6判時1477・46)

(3)他の相続人との関係
なお、上記最高裁判例は、扶養を受けていた事実婚配偶者が、相続人よりも先に扶養利益分を保険会社から受けとった場合、保険会社は、相続人からの保険金請求に対し、妻に支払った分を差し引いた残額を支払えばよいという判断も同時に示しました。

(4)ご質問について
ご質問者と死亡した夫とは事実婚関係ですので、質問者は夫の相続人として損害賠償請求権を行使することはできません。しかし、保険会社に対し、将来、自分が夫から受けるはずであった扶養利益分を請求することは可能ですので、その手続きを進めてください。

Q

交通事故でむち打ち症(後遺障害等級14級)と診断され、加害者の保険会社から賠償額の提示を受けている段階です。内容を見ると、後遺障害による労働能力喪失期間が1年となっていますが、後遺障害とは一生残るからこそ後遺障害というのではないでしょうか。1年という限定は妥当なものなのか、教えてください。

A

むち打ち症の場合の労働能力喪失期間は、他の後遺障害に比して短く認定されることが多いのは事実ですが、提示案では短すぎる可能性があります。

(1)むち打ち症とは
むち打ち症とは、急激な衝撃により頸部に生じた損傷のうち、他覚的所見に乏しい病態を指します。診断名は、頸椎捻挫、頸部挫傷、外傷性頸部症候群などが多く、その症状は、頸部・背部痛、頭痛、めまい、眼精疲労、耳鳴り、しびれ、頸部運動制限等と多彩です。

(2)むち打ち症と後遺障害等級認定
むち打ち症による後遺障害は、一般には、神経系統の異常が医学的に証明される場合は後遺障害等級第12級12号に、医学的に証明しうる程度ではないが、自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定される場合には、第14級10号に該当します。いずれにもあたらなければ、後遺障害等級は非該当と判断されます。
後遺障害等級の認定を受けると、級数に応じた慰謝料や逸失利益(後遺障害による労働能力低下のために生じた将来の減収分)を請求できます。
他方、後遺障害として認定されなければ、後遺障害に基づく慰謝料や逸失利益等を請求することはできません。

(3)逸失利益における労働能力喪失期間の期間制限
逸失利益の計算の基礎となる労働能力喪失期間は、原則として、症状固定時から67歳までの期間、ただし症状固定時から67歳までの期間が、症状固定時から平均余命の2分の1の期間よりも短くなる場合は、平均余命の2分の1の期間とされています。
もっとも、軽い後遺障害では、労働能力喪失期間を上記基準よりも短縮して認定する場合があり、特にむち打ち症では、12級で5年から10年、14級で5年以下に制限する例が多く見られます。その理由としては、むち打ちによる後遺障害は、時間の経過やその後の日常生活によって緩和・消失する場合が多いこと、つまり、むち打ち症はその障害状態が永遠に残存するとは考えにくい点が指摘されています。
もっとも、一言でむち打ち症といっても、その症状や程度は様々ですから、あくまで被害者の状態に応じた適切な労働能力喪失期間を算出しなければなりません。

(4)ご質問について
上記のように、現在の交通事故損害賠償実務では、むち打ち症の場合の労働能力喪失期間を限定的に扱う例が多数を占めており、14級の場合は5年以下の認定もあり得ます。 もっとも、むち打ちの症状や程度は多様ですし、そもそも保険会社の提示額は、裁判で認められる金額よりも低廉である場合が多いものです。1年という期間がご質問者の状態からして相当かどうか、専門家に相談のうえ十分に検討されることをお勧めします。

Q

後続車に追突され、同乗中の息子が死亡し、娘には後遺障害が残りました。息子は来春から私立中学校に入学予定で、既に入学金や1学期分の学費を納付済みでした。娘は高校生ですが、入院のため1年も休学したうえ、記憶障害の後遺症が残り学業についていけなったことから、家庭教師をつけざるを得ません。息子の入学金や学費、娘の家庭教師代を加害者に請求できますか。

A

いずれについても、請求可能と考えられます。

(1)交通事故による損害
交通事故による損害は様々ですが、原則として、被害者に発生した損害のうち事故との因果関係が認められるものについては、加害者が賠償責任を負うことになります。たとえば、ケガの治療費や慰謝料、車両の修理代、仕事を休んで減収があった場合の休業損害、そして、後遺障害が残った場合の逸失利益(将来の収入の減収分)などが考えられます。

(2)学生・生徒の損害
学生・生徒が交通事故被害者となった場合、死亡やケガによる治療のため、既に学費等を納めていた学校に通えなくなる場合があります。また、学校には通えるものの、後遺障害等により今までどおりの学業がこなせず、特別の出費を強いられる場合があります。 こうした場合について、判例は、被害者の年齢、被害の程度、内容、家庭状況等を考慮して、必要性のある範囲で加害者への賠償請求を認めています。具体例を見てみましょう。

【支払い済みの学費等】
[1]死亡した男児(6歳)につき、小学校の入学金、整備拡充費及び寄付金、制服その他備品購入費合計100万円を認めた(東京地判平成6年10月6日交民27 ・ 5 ・ 1378) 。
[2]死亡した男子大学1年生(20歳)につき、入学金は相当因果関係がないとして否定したが、大学入学の2週間後の事故であったことから、前期授業料等60万円を認めた(名古屋地判平成17年11月30日交民38 ・ 6 ・ 1634)。
[3]事故のため1年間留年した大学生につき、学費97万円余及び1年分のアパート賃借料55万円余を認めた(岡山地判平成9年5月29日交民30・3・796)。

【特別の出費】
[1]高次脳機能障害(5級2号)等(併合3級)の女子小学生(固定時13歳)につき、退院後、通学を再開したが、傷害・入院および後遺障害のため、学校の勉強に十分についていくことができなくなった場合に、退院直後から4年6カ月間、家庭教師謝礼、及び特別に使用しなければならなくなった教科書等の購入費合計272万円余を認めた(大阪高判平成19年4月26日判時1988・16)。
[2]受傷により自宅からの通学が困難となった大学生(20歳)につき、大学近くに借りたマンションの卒業まで2年分の賃料、保証金等140万円余を認めた(神戸地判平成7年2月22日交民28・ 1 ・ 241) 。

(3)ご質問について
ご質問では、亡くなった息子さんの入学予定先に支払っていた入学金と学費、及び長期の入院および後遺障害のために娘さんに必要となった家庭教師代が問題となっています。これらの費用は、いずれも交通事故に起因して発生した損害と評価できるため、加害者に賠償請求が可能でしょう。

Q

大学生の息子が交通事故に遭い、治療のために卒業が遅れ、就職も1年遅れました。加害者に就職が遅れたことによる1年分の給料を請求したいのですが、認められますか。

A

請求は可能と考えられます。

(1)休業損害とは
交通事故によるケガのためにやむを得ず休業し、その間収入を得ることができなかったことによる損害を休業損害といいます。休業損害が認められるためには、原則として、ケガのために実際に休業をした期間があり、その休業期間に現実の減収があったことが必要です。具体的な請求金額は、事故当時の収入から一日当たりの基礎収入を算出し、その額に減収のあった休業日数を乗じて算出します。
学生・生徒が交通事故でケガをした場合、現実の収入がなければ休業損害は発生しませんが、アルバイト等で収入を得ており、かつ、事故による休業を理由に減収がある場合には、休業損害の請求が認められます。

(2)就職の遅れによる損害
就職を控えた学生が、事故によるケガのために就職が遅れた場合、この遅れがなければ得ていたであろう賃金相当額を、休業損害として請求できます。判例は、事故のために卒業が遅れた学生や、治療のために入学が遅れた大学浪人生について、就職が遅れた期間の賃金相当額を、交通事故と因果関係のある損害と認定し、請求を認めています。
[1]男子大学浪人生が、事故の翌年に大学に入学した場合、事故がなければ事故の年に入学していたと認定し、賃金センサス大卒男性20~24歳の平均年収を基礎に、1年分を休業損害として認めた(東京地判平成13年3月28日交民34・2・468)。
[2]就職内定済みの男子大学院生(事故時27歳)が事故により内定を取り消され症状固定まで就業できなかった事案で、就職予定日から症状固定までの全期間につき就職内定先の給与推定額を基礎として約955万円を認めた(名古屋地判平成14年9月20日交民35・5・1225)。

(3)ご質問について
ご質問では、大学生の息子さんが事故によるケガの治療のために留年し、卒業が1年遅れています。通常、事故がなければ留年することなく卒業・就職していたと考えられますから、遅れた1年分の見込賃金額(賃金センサスで算出)を休業損害として加害者に請求できると思われます。ただし、卒業間際にもかかわらず単位がほとんど揃っていないなど、事故がなくても留年する可能性が高い場合は請求できないこともあるでしょう。

Q

会社の部下と一緒に飲酒した帰り、車で送ってくれるという当該部下の言葉についつい甘え、部下のろれつが回らず、足元もふらふらでまっすぐ歩けないほどひどく酔っ払っているとわかっていながら、助手席に乗ってしまいました。ところが、その途中、部下は酔いのために運転を誤って歩道に突っ込み、歩行者に重傷を負わせてしまいました。私は運転していませんが、被害者に対して損害賠償責任を負うのでしょうか。

A

助手席同乗者も運転者とともに被害者への損害賠償責任及び刑事責任を負うと思われます。

1.交通事故加害者の助手席同乗者の責任

自動車の助手席に同乗していて自動車事故が発生した場合、運転者に過失があれば当然に運転者自身は被害者に対して損害賠償責任を負います。

それでは、あなたのような運転助手(自動車の助手席に同乗し、助手席側の安全を確認したり、運転中に車両から降りて運転者のために後方確認を行う等の行為をする者)はどうでしょうか。
運転自体はしていないのだから、責任は負わないように思われます。

しかし、運転助手でも、その助手行為に過失があり、事故の発生がこの過失に起因する場合は被害者に対して損害賠償責任を負います(民法709条)。

具体的には、
(1) 運転を妨害するような過度の話しかけなどにより運転者の前方不注意を誘発した場合、
(2) 暴走運転をことさら煽ったような場合、
(3) また、運転前に運転者とともに飲酒したうえで車両に同乗した場合
などがあります。

2.質問の場合
ご質問では、同乗者が運転者とともに運転直前まで一緒に飲酒しており、運転者が相当酔っぱらった状態にあること、つまり運転によって危険を惹起する可能性が十分にあることを認識していたといえます。この時点で、同乗者は運転者の運転を制止すべき義務があるにもかかわらず制止することなく自宅へ送ってもらうために同乗し、その途上で運転者は被害者に衝突し大けがを負わせています。

この事情からすると、助手席同乗者は運転者の運転を制止すべき義務を怠った過失があり、それにより事故が発生したといえるため、運転者とともに被害者に対する損害賠償責任を負うと解されます。 なお、飲酒運転の同乗者は、飲酒運転に関与した者として道交法上の処罰対象となります。処罰内容は、運転者が酒酔い運転(血中アルコール濃度と無関係に、アルコール等の影響により正常な運転が困難な状態)の場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金、酒気帯び運転(アルコール濃度呼気中1Lあたり0.15mg以上)の場合、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です(道交法117条2の2第4号)。

ご質問の場合も、運転者が酒酔い運転と認定された場合、同乗者であるあなたは、3年以下の懲役または50万円以下の罰金の処罰を受けることになります。

Q

夫婦で飲食店を経営していましたが、夫が信号無視のトラックに追突され突然亡くなりました。加害者は不誠実で損害賠償請求は難航しています。私は、心身ともに疲れ切ってしまい加害者との交渉を続ける気力がありません。夫の加入していた損保会社に交渉を依頼しようとしたのですが、夫に過失がないため交渉できないと言われました。かといって、弁護士に依頼すれば、弁護士費用が払えるかどうか心配です。加害者に弁護士費用を請求できないのでしょうか。

A

裁判で勝訴した場合は、裁判所が認める限度で、弁護士費用を加害者に請求できます。

任意加入の自動車保険には、当事者に代わり相手方と示談交渉を行うサービス(いわゆる「示談交渉サービス」)がよく付帯しています。このサービスにより、当事者は相手方と直接交渉する必要がなくなり、損保会社の担当者同士で交渉が進められるのです。

もっとも、損保会社が契約者に代わって相手方と示談交渉を行うためには、契約者にも事故発生に関する法律上の損害賠償責任があることが必要です。したがって、事故発生に全く過失がない被害者(相手方が100%責任を負うケース)は、示談交渉サービスを利用して相手方との交渉を委任することができません。

しかし、交通事故の被害者が、自分で加害者と交渉することは予想以上に大きな負担です。時には、事故で生活が一変し示談交渉どころではないという場合もあります。このような事情で、やむなく弁護士に事件を委任した場合、その弁護士費用も加害者に請求したいというのは当然の感情です。そこで、交通事故による損害賠償の裁判においては、被害者が弁護士に事件処理を委任したために発生した弁護士費用は、加害者の加害行為(不法行為)によって生じた損害であると評価し、弁護士費用を加害者側に請求することが認められています。

もっとも、裁判で認められる弁護士費用は、請求認容額の1割程度というのが一般的です。実際にかかる弁護士費用には着手金と成功報酬とがあり、その金額は個々の弁護士によって、また、事件内容によっても異なるため、弁護士費用の全額を相手方に支払ってもらえるという保証はありません。また、裁判以外の方法で加害者と示談を行う場合には、弁護士費用を加害者側に請求することは実務上困難とされています。

このような弁護士費用の負担を軽減するための一策として、最近の自動車損保には、弁護士費用保障の特約を設定したものが増えています。これは、自動車保険の加入者が交通事故に関する損害賠償請求事件等の処理を弁護士に依頼する場合の弁護士費用を、一定の限度額まで(一事故につき300万円を上限とするものが一般的)保険会社が負担する制度です。また、事件を委任する前に、とりあえず法律相談を受けたいという場合には、法律相談費用補償特約を利用することも有益です。これは、上限額に達するまで(一事故あたり10万円とするものが一般的)、弁護士の法律相談費用を保険会社が負担する特約です。

これらの特約のメリットとしては、
(1) 加害者・被害者といった立場に関係なく特約付きの損保に加入していれば誰でも利用できること
(2) 自動車保険契約の当事者だけでなくその家族も保障の対象となる場合が多いこと
(3) この特約のみを利用した場合には、保険特約利用の実績が保険事故として加算されることはなく、次年度からの保険料が上がるといった不利益はないこと(いわゆるノーカウント扱い)が挙げられます。

ご質問の事案では、まず、ご自身やご家族加入の自動車損保に弁護士費用特約・法律相談費用特約が付帯していないかをご確認いただき、付いている場合は当該損保会社に特約利用を希望する旨をご連絡ください。特に指定される弁護士がなければ、保険会社を通じて弁護士の紹介を受けることができます。知人等で委任を希望される弁護士がある場合は、直接その弁護士に相談され、弁護士特約を用いる希望があることを弁護士・損保会社双方にお伝えいただくとよいでしょう。

「参考文献」
永塚良知編『交通事故事件処理マニュアル』新日本法規出版
日本弁護士連合会『自由と正義vol.63』

Q

バイクで車両通行量の多い県道を夜間に走行中、車道上の大きな穴にタイヤをとられ転倒し大けがをしました。穴は直径1m、深さ30cmもある危険なもので事故の2日前から放置されていたようです。前方確認が足りなかった点で私にも責任があるものの、県道上の大きな穴を2日も放置していた県にも責任があると思います。県に対し損害賠償を求めることはできますか。

A

過失割合に応じて過失相殺がなされる可能性はありますが、県に損害賠償を求めることができると考えられます。

交通事故の中には、運転者や車両の問題ではなく通行していた道路の状態に問題があるために惹起される事故もあり、こうした場合には道路管理者である国・地方公共団体の責任が問題となります。

国家賠償法(国賠法)2条1項は「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる」と定めています。ここにいう道路等の設置管理瑕疵とは「営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」を指します(最判昭和45・8・20民集24・9・1268)。また、近年は、営造物の構造不備など営造物そのものに安全性を欠く場合のみならず、営造物を安全に維持するという管理者としての義務に違反がある場合にも瑕疵を認めるケースが多数見られます。

そして、道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持・修繕し、交通に支障を及ぼさないように努める義務があります(道路法42条)。したがって、道路管理者たる国や公共団体は、管理対象道路に何らかの危険が生じた場合、その危険を速やかに除去し、また、一般交通者に危険を回避させる手段を講じなければなりません。こうした処置・手段を怠ったことで交通事故が発生して損害が発生した場合、道路管理者は国賠法2条1項に基づく道路の設置管理責任を問われることになります。

道路管理の瑕疵が問題となるケースとしては、路上の穴、段差、障害物の放置、道路標識・ガードレール等交通施設の不備、路上への落石・土砂崩壊、路面凍結等様々な類型があります。瑕疵に該当するか否かは、穴や障害物の大きさ、形状、位置、落石等の過去の発生状況、道路の利用状況、交通量、危険発生から事故までの時間的経過等の具体的事情により個別的に判断されます。具体的な裁判例を見てみましょう。

[路上の穴ぼこ・段差]
交通量の多い市道上の直径1m、深さ10~15㎝の穴ぼこに原動機付自転車が乗り入れ運転者が転倒、死亡した事故について、市が穴の修繕や危険回避措置を怠った点で道路管理の瑕疵を認めたうえで、運転者が酒気帯びであった点等を考慮し市に全損害の80%の賠償請求を認めた(最判昭和40・4・16判時405・9)。

[路上障害物]
[1]県が管理する国道の中央線上よりに87時間放置されていた駐車車両に原動機付自転車が衝突し原付運転者が死亡した事案において、県が道路を常時巡視せず放置車両に気づかないまま危険回避措置を全く講じなかった点を管理上の瑕疵と認定し、県に損害賠償責任を認めた(原付運転者の過失25%、県が75%賠償。最判決昭和50・7・25民集29・6・1136)。
[2]県道上の掘穿工事中の標識版・赤色柱が夜間、先行車に倒され路上に放置されていたところ、通行車両が道路から転落し乗員が死亡した事案において、標識版や赤色柱の転倒・放置は事故直前に起きており県が安全な状態を復帰することは時間的に不可能であったとして県の管理瑕疵・賠償責任を否定(最判昭和50・6・26民集29・6・851)。

[交通施設の不備]
高速道路上に野生のエゾシカが飛び出し車両が破損した事案について、管理者にとってエゾシカの出現は予見可能であったこと、運転者が侵入した動物との衝突を運転中に回避することは困難であること、および交通量の多寡を勘案すると防護フェンス等が設置されていない点は高速道路上の瑕疵にあたるとして賠償責任を認めた(札幌地判平成10・12・14判時1680・109)。

[落石]
山間部の国道で土砂崩れが発生、通行車両助手席に直径1m重さ400㎏の岩石が直撃し助手席乗員が死亡した事案で、過去の幾度もの落石にもかかわらず国が防護柵・金網設置等の措置を講じず、崩土の可能性を常時調査し危険時に通行止めとする等の措置をとったことがない点を指摘し、国の道路管理瑕疵を認めた(最判昭和45・8・20民集24・9・1268)。

ご質問の事案では、交通量の多い県道上に直径1m、深さ30㎝もの大きな穴があったというのですから、道路交通上の危険が生じていたことは明らかです。道路管理者である県は速やかに穴を補修し、補修完了までは標識や囲い等で通行の安全のための措置ををとるべきであったところ、2日間もこれを放置した点で道路管理者の安全維持義務を怠り、そのために事故が発生したものと解されます。運転者の前方注視義務違反による過失分はその割合に応じた過失相殺がなされますが、県にも国賠法上の賠償責任が認められる可能性が高いと考えられます。

「参考文献」
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談 全訂版』学陽書房
羽成守・溝辺克己『交通事故の法律相談』青林書院
宮原守男・森島昭夫・野村好弘『別冊ジュリストNo、152 交通事故判例百選第四版』有斐閣

Q

私は、叔父の経営する小さな印刷会社で役員(専務取締役)をしている40歳の男性です。先日、交通事故で肩を骨折し後遺障害認定を受けました。加害者に対し、前年度の収入である500万円を基礎に計算した後遺障害による逸失利益を請求したところ、会社役員の場合は逸失利益は発生せず請求には応じられないと回答されました。確かに私は役員の地位にありますが、たまたま社長の甥であるために2年前に専務の肩書を持たされただけで、役員就任前後で仕事内容も収入も変わっていません。仕事内容は、工場での印刷業務や営業回りなど他の2名の従業員と同じで、収入もこの従業員達と変わりません。このような場合でも役員に逸失利益は認められないのでしょうか。

A

前年度収入の全額または大部分を基礎とした逸失利益が認められる可能性が高いでしょう。

交通事故により後遺障害が残った場合、後遺障害のために労働能力が低下し将来にわたって収入が減少することが予想されます。この将来の減収分を後遺障害逸失利益といい、加害者に対して賠償を求めることができます。

逸失利益の計算の基礎としては、給与所得者(いわゆるサラリーマン)の場合は事故前の収入額、事業所得者の場合は申告所得額、専業主婦や学生等の無職者については賃金センサスを用いることが一般的です。

ご質問に関係する会社役員の報酬については、労務提供の対価部分(給与にあたる部分)と、利益配当の実質を持つ部分(役員の地位自体を根拠に支給される部分)とに分けて考える必要があります。前者の労務提供対価部分は、いわゆるサラリーマンの給与と同様に位置づけられ基礎収入として認められます。他方、後者の利益配当部分は基礎収入として認められないのが一般的です。これは、利益配当とは役員の地位を根拠とする不労所得であり、労働能力を喪失しても役員の地位にとどまる限りは減少しないと解されるためです。

もっとも、役員報酬の名目で支給された金員が実質的に給与にあたるのか、利益配当にあたるのか、その性質の判断にはしばしば困難が伴います。

実務上、役員報酬の性質の判断は、会社の規模・形態(同族会社か否か)、当該役員の職務内容、報酬の額、他の役員や従業員との職務内容や収入額の差異、事故後の報酬支払額の推移、類似業種の役員報酬支給状況等、様々な事情を考慮して判断されています。

ご質問に類似するケースについては、次のような判例があります。

[1]建物解体工事・建材卸業等を目的とする会社代表者(報酬月額100万円)につき、個人会社で職務内容に肉体労働が多い点をとらえ、役員報酬全額を労務の対価と認めた(千葉地判平6・2・22交民27・1・212)。
[2]症状固定時41歳の男性会社役員(収入年額806万円余)につき、名目的取締役であったこと、従業員として労働に従事していたこと、事故後役員報酬部分の全額(月額4万5000円)が支給されていないことから収入全額を基礎収入とした(東京地判平11・6・24交民32・3・925)。
[3]症状固定時72歳の男性会社役員(事故前3年間の平均年収額743万円)につき、特殊車両の設計・制作技術者として高度な能力を有していたこと、会社には当該役員の労務を代替し得る社員がおらず同人がもっぱら実務を担当していたことから、役員報酬額全額を労務の対価とした(大阪地判平13・10・11交民34・5・1732)。
[4]症状固定時36歳の男性会社取締役(役員報酬年額810万円)につき、取締役就任前と同様に作業現場に出て現場監督やクレーン操作等の作業を行い従業員として勤務していたことから、報酬はすべて労務の対価であるとした(名古屋地判平成16・4・23交民37・2・557)。
[5]代表取締役兼部長(役員報酬年額1500万円)につき、会社の規模(資本金3千万、従業員数48名)、業務内容が新規顧客の決済、値引き交渉、人事、主要仕入れ先との交渉等幅広いものであった点、事故後も従前通りの額の報酬が支給されていた点を考慮し、報酬の60%(900万円)を労務の対価と認定した(東京地判61・5・27判タ621・162)。

ご質問者の仕事内容は他の一般従業員と何ら異なる点がなく、収入額もほぼ同じであること、その金額も印刷会社の50歳一般従業員給与として不相当に高いとは言えないこと、会社は小規模会社であり、専務取締役の地位はたまたま代表者が親族であるために与えられたものであり、役員就任の前後で職務内容や収入額に変化がないこと等を考慮すると、ご質問者はいわゆる名目的取締役に過ぎないと思われます。

したがって、ご質問内容に表れる事情からすると、会社から支給される金員はその全額または大部分が労務の対価と評価されるべきであり、それを基礎とした逸失利益を加害者に賠償請求できると考えられます。もっとも、実際の請求にあたっては各事実の具体的な主張・立証が不可欠となりますので、弁護士等の専門家にご相談のうえ請求・交渉されることをお勧めします。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』弘文堂
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談 全訂版』学陽書房
羽成守・溝辺克己『交通事故の法律相談』青林書院
『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)平成23年版』財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部

Q

急用のため3歳の娘を2時間ほどお隣の奥さんに預けていたところ、奥さんが目を離したすきに、娘が路上に飛び出してバイクに跳ねられ大けがをしました。加害者は、飛び出した娘や、目を離した奥さんの不注意で事故が起きたのだから過失相殺すべきだと主張し、全額の損害賠償請求に応じません。娘や隣の奥さんの過失を根拠にして加害者の損害賠償額は減額されるのでしょうか。

A

過失相殺による損害賠償額の減額は認められないでしょう。

過失相殺とは、当事者間の公平を図ることを目的として、被害者に事故の発生や損害の拡大に落ち度がある場合に加害者の損害賠償額を減額する制度をいいます(民法722条2項)。例えば、歩行者が携帯電話に夢中で赤信号に気付かず道路を横断した結果、車にはねられたような場合、運転者が100%の賠償責任を負うとすれば明らかに公平を欠きます。こうした場合に被害者(歩行者)の過失を認め、損害額から被害者の過失分を差し引いた額が加害者の損害賠償額として認められるのです。

もっとも、過失相殺をするためには、そもそも自らの行為(たとえば信号無視の横断行為)が自分に損害を与えるかどうかを理解する能力(事理弁識能力)があることが前提となります。したがって、かかる事理弁識能力を有しない乳幼児等の行為は過失相殺の対象となりません。なお、過去の判例によると、事案によって多少のばらつきはあるものの概ね5、6歳から事理弁識能力が認められています。

ご質問のケースを見ると、飛び出し事故の被害者は3歳のお子さんですから、事理弁識能力が無い点に争いはありません。確かに路上に飛び出した点は好ましくないとしても3歳の子供にその点の責任を問うのは適切ではなく、娘さんの行為について過失相殺の対象となることはありません。

もっとも、お子さんは隣の奥さんという大人と一緒にいたのですから、加害者側からすると、飛び出したのはきちんとお子さんを見ていなかった大人の責任ではないかという疑問も生じるところです。最高裁は、こうした事案における公平性の維持を志向し、「被害者側の過失」という理論を用いて事案の解決を図っています。最高裁の示した主要な点は以下の3点です(最判昭和42・6・27判時490・47)。

[1]民法722条2項に定める被害者の過失とは被害者本人の過失のみでなく、広く「被害者側の過失」を含む。
[2]「被害者側の過失」とは、たとえば被害者の父母または父母に雇用されている家事使用人のように被害者と身分上ないし生活関係上一体をなすような関係にある者の過失をいう。
[3]被害者と身分・生活関係上一体でない者に過失があっても、「被害者側の過失」には該当しない。

この理論によれば、被害者と「身分上・生活関係上一体の関係」にある者の過失により事故が生じた場合に限って過失相殺が許され損害賠償額が減額されることになります。また、「身分上・生活関係上一体の関係」とは、親族のような関係の近さに加え経済的一体性も重要視されており、具体的には、次のような間柄で「身分上・生活関係上一体の関係」が認められています。

[肯定例]
[1]被害乳幼児の親(最判昭和34・11・26民集13・12・1573)
[2]3歳の弟が飛び出して被害者となった事案で合図を送った7歳の兄(東京地八王子支判昭和48・6・22交民6・3・1042)
[3]夫婦間(最判昭和51・3・25民集30・2・160)
[4]内縁の夫婦間(最判平成19・4・24判タ1240・118)
[5]内縁とまではいえないが約20年間同棲する男女間(東京地判昭和37・7・27交民11・4・1096)

[否定例]
[1]独立して別の世帯を持つ兄弟姉妹間(名古屋地判昭和47・6・14)
[2]2時間ほど子守を頼まれた近所の主婦(札幌地判昭和44・1・31判時558・80)
[3]3歳の園児と引率中の保母(最判昭和42・6・27判時490・47)
[4]結婚を前提に3年間交際中の男女(最判平成9・9・9判タ955・139)

ご相談のケースを見ると、3歳のお子さんと、急用でたまたま2時間ほど預かっていた隣の奥さんと間には親族関係や経済的な一体性が無く、「身分上・生活関係上一体の関係」は認められません。したがって、隣の奥さんの不注意をもって過失相殺による損害賠償額が減じられることはなく、加害者に対し、お子さんの損害について全額の損害賠償を求めることができるでしょう。

Q

私の夫は3年半前にひき逃げ事故に遭い、治療の甲斐なく事故の翌日に死亡しました。ひき逃げ犯人は未だに捕まらず、加害車両は盗難車だったようです。事故直後から、加害車両の保有者を相手に自賠責上の損害賠償を行ってきましたが、3年にわたる裁判の結果、車両保有者に自賠責上の責任は認められず、加害者側への損害賠償請求の道は絶たれてしまいました。このような場合、政府による保障制度があると聞きましたが、事故から3年半が経過した現時点でも請求は可能でしょうか。

A

請求は可能と考えられます。

自動車損害賠償責任保険法(自賠法)は、自動車事故の被害者救済を目的とし、自動車保有者に重い責任を課すとともに、加害自動車側に自賠責保険への加入を強制することで最小限の賠償能力の確保を目指しています。しかし、残念ながら、加害車両に自賠責が付帯されていない場合や、ひき逃げや盗難車による事故のため自賠責請求の相手方が不明の場合もあり、実際には自賠責上の損害賠償制度による被害者救済制度は万全とはいえません。

政府保障事業とは、このように自賠責上の損害賠償請求の対象とならない事件の被害者に対し、国(国土交通省)が被害救済を行う制度であり、支給される金員は損害賠償金ではなく保障金と呼ばれています。 なお、政府保障事業は被害者救済の最終手段ですので、被害者に健康保険制度や労災制度による給付がある場合には、その給付額を控除した額が支払われます。

政府保障事業制度に基づく保障金請求権(以下「保障金請求権」といいます)は、平成22年3月31日以前に発生した事故については2年、平成22年4月1日以降に発生した事故については3年の経過により時効消滅します(自賠法75条)。時効の起算点(時効計算の開始時点)は、傷害による損害については事故発生日、死亡による損害の場合は死亡日、後遺障害による損害については症状固定時と解されています。

ご相談のケースでは、ご主人が事故により死亡されてから3年半が経過しています。通常であれば、保障金請求権は亡くなった日から起算して2年(平成22年4月1日以降発生事故の場合は3年)の経過により消滅時効が成立しますので、一見、ご主人の事故についても保障金請求権は時効消滅しているかのように思われます。

もっとも、ご相談者が政府保障事業制度に基づく保障金請求を事故後3年半も経過するまで行わなかったのは、加害車両の保有者に自賠法上の損害賠償責任を問える可能性があったため車両保有者への損害賠償請求を先行させたことを理由としています。

上記のとおり、政府保障事業に基づく保障金請求は、加害者に対し自賠責に基づく損害賠償請求ができない被害者を対象とする救済制度ですから、被害者が加害者側に自賠責上の損害賠償請求を行っている場合は、原則として政府保障事業に基づく保障金請求はできません。この間に、保障金請求権の時効が成立し、かつ、最終的に加害者側の自賠責法上の損害賠償責任が認められなかった場合、被害者は、加害者側・政府のいずれからも損害の補てんを受けることができないという非常に不合理な結果となり、被害者救済という自賠法の存在意義自体が失われてしまいます。

この問題に関し、最高裁は、ご質問のケース類似の事案において次のように述べ、事案の妥当な解決を導き出しました。

「ある者が交通事故の加害自動車の保有者であるか否かをめぐって、右の者と当該交通事故の被害者との間で自賠法3条による請求権(損害賠償請求権)の存否が争われている場合においては、自賠法3条による請求権が存在しないことが確定した時から被害者の有する本件規定による請求権(政府保障事業に基づく保障金請求権)の消滅時効が進行するというべきである。」(最判平成8・3・5民集50・3・383)

最高裁の考え方によれば、加害者(加害車両保有者)と思われる人物へ自賠法上の損害賠償請求を行った場合、その賠償請求権が存在しないことが確定した時点で初めて保障金請求権の時効が進行を開始し、その時点から3年(または2年)が経過するまで保障金請求権は時効消滅しないということになります。

ご質問のケースでは、加害車両保有者への損害賠償請求が認められなかった裁判の判決の確定時期は今から半年ほど前と思われますので、いまだ保障金請求権の消滅時効は完成していません。お早目に、最寄りの損害保険会社(共済)の窓口で保障金の請求手続きをとられることをお勧めします。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』弘文堂
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談 全訂版』学陽書房

Q

建設作業員だった私の夫は、自転車で帰宅途中、歩道に突っ込んできた自動車に衝突され、右足骨折、頸部捻挫等の負傷をしました。2年半ほど入通院で治療をしましたが、頭痛や視力低下、肩が十分に動かないといった後遺障害が残りました。後遺障害のため十分に仕事ができず夫は会社を解雇され、加害者との示談交渉は難航し、元来、やや悲観的な性格だった夫はうつ病になり事故の3年後に自殺しました。加害者は、事故による後遺障害や休業の損害は賠償するが自殺は事故とは無関係であり死亡に関する損害の賠償には応じられないの一点張りですが、事故がなければ夫が死ぬことはなかったのです。加害者に、夫の死亡による損害賠償を求めることはできませんか。

A

賠償額は減額される可能性がありますが、ご主人の死亡に関する損害の賠償を加害者に請求できると考えられます。

交通事故の被害者にとって、不慮の事故に遭遇すること自体が大きな衝撃である上に、結果として後遺障害が残存した場合に受ける心痛はさらに甚大です。また、事故を契機とする失職、減収といった生活の変化や、時には加害者との示談交渉の難航も被害者にとって大きな負担となります。このように、交通事故の被害者が事故前の平穏な生活を取り戻すことはなかなか困難であるのが現状です。中には、事故による不遇な事情が重なり精神的安定を失い、うつ病などの精神疾患に罹患することもまれではなく、ご質問のケースのように自殺に至った事例も過去に多数報告されています。
自殺は、あくまで被害者本人の意思による行為であり、交通事故により直接惹起される結果ではないこと、また、事故や後遺症の態様が同じであっても自殺に至らないケースもあることから、被害者の自殺を事故の加害者の責任として問えるかは問題となります。
裁判所も、かつては、事故後の自殺と事故との因果関係を否定し、死亡に関する加害者の賠償責任を認めない傾向にありました。

[否定例]
事故により脳挫傷等の傷害を受け、記銘力減退、知的水準低下等の後遺症を残した被害者が事故の約1年後に自殺した事案で、自殺しなければならないほどの切迫した状態になく、自殺に至った性格の変化が事故により通常生じうるとは認めがたく自殺の予見可能性もなかったとして、事故と自殺との因果関係を否定し賠償責任を認めなかった(ただし、被害者の受傷は重篤であったが被害者が職場復帰し会社に泊まり込むまでに精神的に回復していたうえ、事故と自殺との精神医学的関係の立証がされなかった事案)(最判昭和50・10・3 交民8・5・1221)。
その後、学説において事故後に精神疾患を経て自殺に至るケースへの柔軟な救済が強く叫ばれるようになり、平成5年には最高裁が次のような事案において事故と自殺との因果関係を認め、被害者の死亡に関する損害の一部の賠償を加害者の責任として認めるに至りました(最判平成5・9・9 交民26・5・1129)。

[事案]
被害者(事故当時43歳、工場勤務男性)は乗用車運転中、前方不注意でセンターラインを越えてきた車両に衝突され、頭部打撲、左膝骨折、頸部捻挫等の傷害を負った。治療により運動機能は回復し、2年後に頭痛、めまい、眼精疲労等の後遺症を残して症状固定した。被害者は相手方の一方的な過失による事故で大きな衝撃を受け、補償交渉は進展せず、勤めを退職し再就職も叶わず、事故後は家庭不和に至ったという状況のもとでうつ病にり患し、事故の約3年半後に自殺した。

[裁判所の判断概要]
本件事故により被害者が被った傷害は、身体に重大な器質的障害を伴う後遺症を残すようなものでないが、本件事故の態様が被害者に大きな精神的衝撃を与え、しかもその衝撃が長年残るようなものであったこと、その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって、被害者が災害神経症状態に陥り、うつ病にり患し自殺に至ったこと、自らに責任のない事故で傷害を受けた場合には災害神経症状態を経てうつ病に発展しやすく、うつ病にり患した者の自殺率は全人口の自殺率と比較してはるかに高いなどの事実関係を総合すると、本件事故と被害者の自殺との間に相当因果関係がある。

上記のような判断のもと、最高裁は事故後の自殺について事故との因果関係を認め、事故の加害者に対する死亡による損害の賠償責任を認めたのです。 同時に、自殺には被害者本人の心因的要因も寄与しているとして損害額の8割を減額した原審の判断を正当と判断しています。

ご質問の事案も、事故発生に関してご主人に落ち度はなく、後遺症によって稼働が困難になり解雇され、示談交渉も難航するなど、うつ病に罹患する事情としては十分に理解できるものです。したがって、最高裁判例によれば事故と自殺との因果関係は肯定され、ご質問者は加害者に対し、ご主人の死亡に関する損害の賠償を求めることができると考えられます。もっとも、自殺にはご主人のやや悲観的な性格も寄与していると考えられるため、裁判所の判断により、何割かの賠償額の減額がなされる可能性が高いでしょう。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』弘文堂
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房
宮原守男・森島昭夫・野村好弘『別冊ジュリスト交通事故判例百選第四版』有斐閣

Q

7歳の息子が青信号で横断歩道を歩行中、信号無視の車両に衝突され転倒しました。救急車で運ばれた病院で、足の骨折はあるが他は特に問題はないと言われ骨折治療のため入院しました。その数時間後、息子は病院で容体が急変し大きな病院に転送されましたが、交通事故による脳出血と診断され手遅れでその晩に亡くなりました。息子の死には、運転手だけでなく、最初に診断を受けた病院の医師にも大きな責任があると思いますが、病院側はあくまで交通事故による死亡で治療は関係ない、仮に医療ミスがあるとしても責任は5割程度に過ぎず、全額の損害賠償はできないと主張しています。病院に対して全額の賠償を求めることはできないのでしょうか。

A

病院に対して全額の損害賠償を請求できると考えられます。

自動車の運転者は、自動車の運行により人または物に衝突・接触の危険を生じさせ、人の死傷、物の損壊等の損害を惹起しないよう十分な注意を払うべき義務があり、これに反して他人の生命・身体・財産に損害を与えた場合には、民法上の不法行為責任を負います(民法709条)。
また、医療機関も、当該医療機関に求められる医療水準にかなった適切な医療を行うべき義務があり、これを怠ったために患者に死傷の結果を生じさせた場合には不法行為責任を負います(同条)。
本来、これらの責任は別個独立のものですが、時として同一の被害者に対し交通事故による受傷とその後の医療的処置における過誤が不幸にも競合した結果、被害者に深刻な結果をもたらすことがあります。こうした場合、被害者側としては、運転者と医療機関の双方が加害者であり、二つの加害行為が相まって深刻な結果を惹起した以上、双方に責任を追及したいと思うのは当然の感情です。裁判所も、こうした事案において加害運転者と医療機関の双方に責任を認める判断を行っています。
もっとも、具体的な請求内容として、運転者と医療機関それぞれの責任割合によって賠償範囲(責任限度)を限定すべきか(ご質問における病院側の5割の主張)、あるいは運転者・医療機関双方に対し全額の損害賠償請求が可能かという問題については学説も多岐に分かれていました。
この点に関し、最高裁は、平成13年、ご質問のケース同様小さい子供が被害者となった事案において次のように判断しました。前提となる事実は次のとおりです。

[事案]
被害児童(6歳男児)が自転車走行中にタクシーと接触、転倒し病院に搬送されたところ(事故発生時刻午後3時40分頃)、医師は軽微な事故であると判断してCT検査や院内経過観察をせず、「明日も来るように」といった一般的な指示のみを両親に伝え帰宅させた。その数時間後、男児の容体は悪化し救急搬送先の別病院で、翌日午前0時45分死亡した。死因は頭蓋外面線状骨折による硬膜外血腫であった。
硬膜外血腫は早期に血腫の除去を行えば高い確率で救命可能性があり、医師には院内で経過観察をするか、脳出血の可能性に配慮し、両親に十分な説明・教示指導義務があるのにこれを怠った過失がある。

[裁判所の判断概要]
交通事故により被害児童は放置すれば死に至る傷害を負ったものの、病院において通常期待されるべき適切な治療が施されていれば高度の蓋然性をもって救命できた。つまり、交通事故と医療事故とのいずれもが、児童の死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって、運転行為と医療行為とは共同不法行為(民法719条)に該当し、各不法行為者(運転者と医療機関)は被害者の損害全額について連帯して責任を負うべきである。各不法行為者が賠償すべき損害額を按分・限定することは、共同不法行為者のいずれからも全額の賠償を受けられるとする民法719条の明文に反し、これにより被害者保護を図る同条の趣旨を没却し許されない。

この最高裁判決は、原審である東京高裁が行った「男児死亡に対する交通事故と医療過誤との寄与度(責任範囲)はそれぞれ5割であるから、医療機関が負う賠償責任は5割を限度とする」という判断を覆して破棄し、上記のとおり全額の賠償責任を認める判断を下したもので、この点に関するリーディングケースとなっています。
不法行為責任とは、被害者救済と損害の公平な分担を趣旨としています。加害者間では責任割合が問題になるとしても(一方加害者が全額賠償を行えば、他方加害者に対し他方の責任分を請求できます(これを「求償」といいます))、被害者との関係では加害者双方が共同不法行為ないし共同不法行為に準じた全責任を負うのが公平であり、被害者救済の理念に最も合致する判断でしょう。
ご質問のケースは、交通事故により重篤な傷害を負った後に医療過誤が重なり不幸にも亡くなったという事案です。運転者と医療機関にはいわゆる共同不法行為が成立し、双方が被害者に対して全額賠償の責任を負う結果、ご質問者は医療機関に対して損害全額の賠償を求めることができると考えられます。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』弘文堂
潮見佳男『基本講義債権各論Ⅱ不法行為法』新世社
羽成守・溝部克己『交通事故の法律相談』青林書院
宮原守男・森島昭夫・野村好弘『別冊ジュリスト交通事故判例百選第四版』有斐閣

Q

妻が運転中に信号無視の車両に追突され腰椎を捻挫しました。レントゲン検査や投薬などの治療を受けてしばらく後、妻の妊娠が発覚しました。産婦人科の医師によれば事故当時に妊娠していたかどうかははっきりしないとのことですが、妻は妊娠初期時におけるレントゲンや投薬による胎児への悪影響を心配し、悩んだ結果、人工妊娠中絶をしました。妻はとても苦しんでいますが、加害者は、中絶自体は事故とは無関係であり、そもそも事故当時に妊娠していなかった可能性もある以上、中絶費用や中絶に関する慰謝料は払わないと言っています。中絶による胎児の死亡に関し、加害者に賠償を求めることはできないのでしょうか。

A

中絶手術費用、中絶に伴う慰謝料を請求できると思われます。

妊婦が交通事故により胎児を死産または死産させてしまう事件は、残念ながらよくみられるケースであり、いずれの場合も、妊婦の精神的・肉体的苦痛は大変大きなものであると考えられます。この観点から、自動車賠償責任保険(自賠責)においても、通常のケガの治療に対する慰謝料(傷害慰謝料)とは別に、「妊婦が胎児を死産又は流産した場合は、上記(傷害慰謝料)のほかに慰謝料を認める」と定め、妊娠週数が増えるに伴い慰謝料額を増加させる支払基準を設けています。また、諸事情によっては、母親に比して少額ではありますが父親にも慰謝料が認められるケースもあります。これは、流産に伴う生理的病理的苦痛は父と母で異なるが、胎児を失ったということ自体の苦痛は(出生後の子供を失った場合と同様に)父と母を区別する理由がないという点に論拠しています(高松高裁判昭和57・6・16 判タ474・221)。
以下は、事故による受傷に起因して胎児が死亡(流産・死産)した事案の慰謝料に関する判例です。

[1]出産予定日の4日前の事故により死産したとして、慰謝料800万円を認めた(高松高判平成4・9・17 自保ジ994・2)。
[2]妊娠36週の胎児死亡につき、母700万円、父300万円の慰謝料を認めた(東京地判平成11・6・1 交民32・3・856)。
[3]妊娠2か月の胎児死亡につき150万円を認めた(大阪地判平成8・5・31 交民29・3・830)。

そして、事故により流産・死産といった胎児の直接の死亡には至らなかったものの、受傷による検査・治療の影響を懸念して中絶に至った事案においても、中絶に関する費用が損害として認定され、中絶を余儀なくされたことに対する精神的苦痛が慰謝料の増額事由として考慮される判例が多く見られます。

[中絶費用]
[1] 事故により胎児に悪影響を及ぼす可能性のある治療を継続している際に妊娠した主婦に、胎児の妊娠中絶費用4万9000円を認めた事案(大阪地裁判平元・3・31 自保ジ821)。
[2] 23歳女性が事故の受傷により3日間通院し、レントゲン検査、投薬を受けたが、検査時妊娠初期であったため中絶を余儀なくされた場合の妊娠中絶関係費用11万5000円を認めた事案(静岡地沼津支判平7・10・27 自保ジ1131)。

[中絶の慰謝料]
[3] 追突事故で頸椎捻挫の治療を受けた後に妊娠3か月の診断を受け、治療の影響を懸念して中絶した女性につき、事故の傷害による慰謝料と別に、中絶費用・妊娠中絶に対する慰謝料10万円を認めた事案(東京高裁判昭和56・3・25 交民14・2・343)。
[4] 追突事故後に妊娠に気づかずレントゲン検査を受け中絶を余儀なくされた精神的打撃が大きかったとして、通院期間55日(この場合の通常の傷害慰謝料額25万~50万程度)に対し、慰謝料100万円を認めた事案(大阪地判平成6・1・19 交民27・1・62)。
なお、ご質問のケースのように妊娠の時期が事故の前か後かがはっきりしない場合もありますが、同様に妊娠時期が問題となった上記③の事案において裁判所は次のように判示しました。

「仮に事故後早い時期に懐胎したものであるとしても、元来妊娠は夫婦間の自然の営みにより日常おこりうる出来事であり(中略)事故前に妊娠していた場合はもちろんのこと、事故後に妊娠したと仮定しても、なお、妊娠中絶による被害者の損害が本件事故により通常生ずべき損害の範囲内にあることを否定し得ない」(東京高裁判昭和56・3・25 交民14・2・343)。
これは、妊娠時期が特定できず事故後の妊娠である可能性がある場合でも、中絶が事故に起因する以上、中絶費用を事故による損害であると認め中絶の苦痛に対する慰謝料請求も認容したものです。
ご質問者の奥様も大変にご心痛のこととお察ししますが、この判例によれば、ご質問のケースのように、事故時に妊娠していなかった可能性があるケースでも、奥様の人工妊娠中絶費用とそれに伴う慰謝料を請求できると考えられます。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』弘文堂
宮原守男・森島昭夫・野村好弘『別冊ジュリスト交通事故判例百選第四版』有斐閣
『民事交通事故訴損害賠償額算定基準(上巻)平成23年版』財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部

Q

私が所有する高級外車を運転中に、居眠り運転のトラックに追突されました。幸い私には怪我はありませんでしたが、車両の後部が大破しました。この車は亡くなった父から譲り受けたクラシックカーで、毎日整備を欠かすことなくきれいに磨き上げ特別に手をかけてきました。この大事な車に居眠り運転で大きな傷をつけられ大変ショックを受けています。車の修理費以外に、私の精神的苦痛に対する慰謝料を請求することはできないでしょうか。

A

請求は難しいと思われます。

交通事故などの不法行為によって生命や身体に損害を受けた場合、相当額の慰謝料を請求できることに争いはありません。これに対し、損害が車両の損傷など物的損害にとどまる場合は、損害の補てんを超えて、別途慰謝料を請求することは原則としては認められていません。物的損害の場合は、損害が填補されて回復すれば同時に精神的損害も回復するものと解されているためです。
もっとも、ごくまれではありますが、交通物損事故において慰謝料を認めた判例もあります。

[肯定例]
駐車中の被害車両(ベンツ・特殊装備車)に、飲酒運転の加害車両が追突し逃走したところ、被害者が事故現場付近を探索して加害車両を発見した事案において、「事故発生前後の加害者の態度の悪質性」により被害者は一定程度の心痛を受けたと認め、10万円の慰謝料を認めた(京都地判平15・2・28 自保ジャーナル1409)。
この事案では、被害者にけが等の身体的損害はなくもっぱら物的損害にとどまりますが、飲酒運転のうえ当て逃げを図った加害者の悪質さにかんがみ、やや例外的に慰謝料が認定されたものと解されます。
他方、こうした事情がない場合には、下記のとおり、被害車両がいわゆる高級車である場合や被害者が車両に特に愛着を抱いている場合でも、慰謝料の請求は認められていません。

[否定例]
[1] 被害車両がクラシックカー(ホンダS800オープン42年式)であり、被害者が車を日々丹念に手入れし磨き上げており特別の愛着を抱いていたことを認定したうえで、こうした事情は慰謝料を認めるべき特段の事情には該当しないとして慰謝料請求を排斥した(神戸地判平成3・5・28交民23・6・1393)。
[2] 被害車両は新車で購入したBMWであり、被害者の社会的地位や財力およびそれに伴う自負から、事故車両をそのまま使用することがそぐわず、心情的に穏やかではなかったと認定。しかし、事故の違法性が高いとは言えないこと、被害者に精神的苦痛を加える意図がなかったことを理由に、被害者の心情的に穏やかでないという事情は、慰謝料を認めるべき特段の事情にあたらないとして慰謝料請求を排斥した(広島地判平成元・12・17自保ジャーナル854)。
[3] 被害者が被害車両を用いて事業を開始した当日に事故に遭いショックを受けたうえ、事故後に新車調達のため金策に四苦八苦した事案で、被害者が受けた精神的苦痛は慰謝料を認める特段の事情にはあたらないとして慰謝料請求を排斥した(名古屋地判平成3・11・27 交民24・6・1495)。

ご相談の事案では、ご相談者が亡きお父様から譲られた被害車両を大事にされ特に愛着を抱いておられたものとお察ししますが、加害者の悪質性や事故の違法性が特に高いといった特別の事情は見当たらず、過去の判例に照らすと、慰謝料請求は困難であると思われます。

「参考文献」
羽成守・溝辺克己『交通事故の法律相談』青林書院
財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻 平成23年版』

Q

私は個人で店舗経営をしています。先日、顧客の送迎用に使っていた私所有のベンツに後方車両から衝突され、修理に出しました。ベンツのほかに軽自動車を保有していますが、高級店舗の顧客送迎に軽自動車は役に立たず、修理期間中は被害車両と同等のベンツを借りて代車として使用しました。相手方の保険会社は、ベンツ以外に車両を持っているのだから代車を借りる必要がなく代車費用を支払わないと言っています。ベンツの代車料は請求できないのでしょうか。

A

国産高級車の代車費用相当額の限度で請求可能と思われます。

交通事故で車両に損害が生じた場合、修理期間中に代車を利用することはよくあることです。そして、利用した代車費用を加害者に請求するには、以下3つの要件を満たす必要があります。

(1)代車の必要性
代車使用料が損害として認められるために必要な要件です。いわゆるマイカー利用のみで土日に乗る程度の場合、事故車両以外に利用可能な車両を保有している場合、車以外の交通機関利用が容易な場合などで問題となります。他方、事業用や通勤・治療通院のため連日利用しており代車以外の代替交通手段がないような場合には必要性が認められています。

関連する判例としては、
[1]事故車両(国産普通自動車)を通勤に用いていたが(通勤距離約3㎞)、事故車両以外に普通乗用車、軽トラック、原付バイク各1台を所有しており、かつ、公共交通機関利用では不十分であるという立証がなされなかったケースで、代車の必要性を否定した事案(大高判平15・4・15 交民26・2.303)。
[2] 事故車両(ロールスロイス)を顧客送迎に用いており、自宅にスポーツ仕様のベンツを所有していが、顧客送迎の利用目的からすればスポーツ仕様のベンツは代替車両にならないとして代車利用の必要性を認めた事案(京都地判平成14・8・29 自保ジ1488・18)
などがあります。

(2)代車使用の相当性
代車を借りる必要が認められた場合に、具体的に、どの程度(グレード・車種)の車で、どれくらいの期間の使用につき損害として認められるかという問題です。
グレード・車種については、被害車両と同等か1ランク下のものを認める場合が一般的です。また、被害車両が高級外車であった場合、国産高級車の代車料の限度で認めるケースが多くみられ、外国車を代車として利用しその使用料を請求するためには、国産高級車ではなくその外国車でなければならない特段の事情が必要とされています。

[否定例]
[1] 被害車両(キャデラックリムジン)を、「安全で、ファックス等の備え付けがあり、多人数の乗車が可能等」という条件と、代車使用期間が短期間である点をふまえ、国産高級車で十分代替できるとしてキャデラックリムジンの代車料金を認めず、日額2万5千円(国産最高級車クラス)の限度で認めた(東京地判平成7・3・17 交民28・2・417)。
[2] 被害車両(ロールスロイス)の代車として日額4万円のベンツリムジン車を用いたが、接待用の社用車という利用目的からするとベンツリムジン車の利用の必要性はなく国産最高級車クラスの日額2万円が相当であるとした(東京地判平成8・5・29 交民29・3・810)。

[肯定例]
被害車両(ベンツ)の代車として同型のベンツを使用した事案で、被害者がベンツ販売会社の契約社員で被害車両に顧客を載せて販売営業を行っていた事実があることから、被害車両と同型の代車利用の必要性があるとして日額3万円のベンツ代車料を認めた(東京地判8・10・30 交民29・5・1582)。

(3)代車の現実の使用
車両が損傷した場合には、現実に修理をしていなくとも修理相当額(修理費査定額)が損害として認められるのに対し、代車の場合は、現実に代車を使用した場合にのみ請求が認められますので注意が必要です。また、仮に被害車両よりもグレードの低い車を使用した場合は、現実の支出額の限度で請求できるにとどまります。

以上からすると、ご質問のケースでは、まず、被害車両のほかに自動車を保有されていることから代車の必要性が問題になります。しかし、高級顧客送迎という車両使用目的からすると、軽自動車ではその目的を達し得ませんので代車の必要性は認められるでしょう。
もっとも、グレード(車種)について過去の判例に照らしてみると、高級顧客送迎の目的は必ずしもベンツでなければならない特段の事情にはあたらず、国産高級車の限度で代車使用料請求が認められる可能性が高いと思われます。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』㈱弘文堂
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房
羽成守・溝辺克己『交通事故の法律相談』青林書院
『民事交通事故訴損害賠償額算定基準(上巻)平成23年版』財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部

Q

飲酒運転で帰宅途中、前の車に追突し相手車両の運転者にケガをさせてしまいました。今後、私はどのような責任を負うのでしょうか。

A

交通事故を起こした運転者が負う責任として、(1)民事上の責任、(2)行政上の責任、(3)刑事上の責任の3つがあります。

(1) 民事上の責任
民事上の責任とは、民法や自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づいて追求されるもので、被害者に生じた損害を賠償する責任を指します。民法709条は「故意または過失によって他人の権利を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる」と定めており、人身・物損事故ともにこの定めを法的根拠として被害者に対する賠償責任が発生します。また、自賠法第3条は「自己の為に自動車の運行の用に供する者は、その運行によって生じた損害を賠償する責めに任ずる」と規定しています。これを運行供用者責任といい、人身事故を起こした自動車の保有者が被害者に対して負う賠償責任です。

(2) 刑事上の責任
刑事上の責任としては、運転や過失の態様によって、自動車運転過失致死傷罪(刑法211条第2項)、危険運転致死傷罪(刑法208条の2)、酒酔い運転(道路交通法117条の2第1号)、酒気帯び運転(道路交通法117条の4第2号)等の罪責を負うことが考えられます。これは、処罰規定に触れる行為を行った者に対し、裁判所が制裁として懲役・禁固・罰金等の刑罰を科すもので、被害者個人との間で生じる民事責任とは異なります。

(3) 行政上の責任
最後に、行政上の責任とは、交通秩序の維持を目的として交通事故を起こした運転者に与えられる免許停止、取り消し等の処分をいい、刑事上・民事上の 責任とは別個に行政庁(公安委員会)が独自に行う処分です。具体的には、道路交通法違反によって違反点数が加算され、一定の点数に達した時点で、免許の停 止や取り消しの処分がなされるという仕組みです。酒酔い運転は、近年厳罰化の傾向にあり、2009年6月の法改正で違反点数が35点となり、直ちに免許が 取り消され免許の欠格期間も3年と長期にわたります。

これら3つの責任はそれぞれ別個の制度に基づく責任ですので、ご質問者は今後いずれの責任も負うことになると考えられます。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』㈱弘文堂
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房

Q

大学生の19歳の息子がバイクで交通事故を起こし、被害者に全治1か月のケガをさせてしまいました。私は息子と同居し扶養しており、バイクは自宅に保管していますが、バイクは息子が自分のバイト代で購入した息子名義のものです。私は息子の事故の責任を負うのでしょうか。

A

一定の条件のもとで責任を負うことが考えられます。
未成年者の不法行為に対する親の責任の根拠としては、以下のものが考えられます。

(1) 民法714条に基づく責任
民法714条は未成年者が責任無能力である場合に監督者たる親が負う責任について規定したものです。しかしながら、もっとも、同条が親に責任を持たせるの は、通常「未成年者」が12~13歳まで場合に限られるため、19歳の息子さんに関するご質問のケースには該当しません。

(2) 民法709条に基づく責任
次に、親(監督義務者)自身に次の1~3の事情があれば、民法709条に基づく責任が発生すると解されています。

  • 1、監督義務者が相当の監督をすれば加害行為(交通事故)の発生を防止できたこと
  • 2、その監督が現実に可能であったこと
  • 3、監督をせずに放置すれば加害行為の発生する蓋然性が一般的にも強い場合であること(東京高判昭和52年3月15日 交民10・2・326)

(3) 自賠法上の運行供用者責任
次に、人身事故の場合、自賠法による責任が生じる可能性があります。
自賠法3条は、自己のために自動車を運行の用に供する者(以下、「運行供用者」といいます)がその運行によって他人の生命又は身体を害した ときは、その損害の賠償責任を負う旨を定め、「運行供用者」とは、一般に、事故車両に関して「運行支配」と「運行管理」を有する者とされています。
未成年者が所有する車両で交通事故を起こした場合、親が運行供用者にあたるか否かという点について、判例は次のように判断しています。

(1) 親の責任が否定される場合
子が親と別居し生計を別にし、車両の購入代金や維持費を自ら負担し、親が子の車両を利用することも無かったような場合には、運行支配・運行管理が無いとして、判例は親の運行供用者責任を否定しています(東京地判昭和63年3月31日交民21・2・389)

(2) 親の責任が認められる場合
他方、(1)生計を親に依存し、購入資金やガソリン代等維持費も親が支出していたケース(最判昭和49年7月16日民集28・5・732)、(2)保管場所を親と同一としていたケース(高松地判昭和54年11月22日交民12・6・1526)で、ともに親の運行供用者責任が認められたほか、(3)未成年者自身の支出でバイクを購入したが、両親と同居し扶養されていたことから親に支配・管理すべき責任があったとして運行供用者責任が認められたケースがあります(名古屋地判平成11年6月18日交民32・3・920)。(3)の判例については、親子間に扶養関係がある場合、子が自分のバイト代などで車両を購入したとしても、親が生活費を出しているからこそ子は自分の収入を車両購入費に充てることができたわけであり、親が車の購入費用を負担する場合と実質的には異ならないという指摘もなされています。 ご質問のケースは、同居・扶養関係がありバイク保管場所も自宅です。とすると、過去の判例によれば、たとえ息子さんが自分の支出でバイクを購入していたとしても、親であるご質問者に運行供用者責任が認められる可能性が高いといえるでしょう。

「参考文献」
潮見佳男『基本講義 債権各論Ⅱ不法行為法』新世社
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房
宮原守男・森島昭夫・野村好弘『交通事故判例百選第四版』有斐閣

Q

深夜にバイクで帰宅途中、無灯火で路上に駐車していたトラックに衝突し、全治6か月の重傷を負いました。トラック運転手は、私の前方不注意が事故の原因だとして一切の責任はないと主張しているようですが納得いきません。私が全面的に責任を負うのでしょうか。

A

事情に応じて駐車車両にも過失が認められる可能性があります。

道路上の駐車車両を原因とする交通事故は現実によく発生しており、特に、駐車車両への衝突事故はもっとも頻繁にみられる事故態様です。追突事故である以上、追突車両側に前方注意義務違反の過失があるとはいえ、駐車車両側にも道路上の危険を誘発した点で非があるといえます。そこで、判例においても、駐車車両側に一定の責任が認められるケースが増えています。
駐車車両が原因で事故が発生した場合の駐車車両側の損害賠償責任の根拠には、民法709条の不法行為責任と自賠法3条の運行供用者責任との二つがあります。
また、駐車車両の過失の判断基準としては、「駐車の場所や方法が不適切であるため、当該道路の交通の危険が著しく増大し、その結果として事故が発生したといえる場合」にあたるかどうかが問題となります。
そして、具体的な事案検討においては、道交法上の駐車違反事実の有無、非常点滅表示義務違反等の法令違反事実の有無に加え、道路の広狭、道路の性質、交通量、駐車時間帯、駐車位置・方法、駐車車両の存在による見通しの悪さ、駐車の理由といった諸事情を総合的に考慮して、駐車車両の過失割合を判断することになります。

判例を見ると、
(1)夜間、交通量の多い国道の駐車禁止場所に駐車灯をつけずに一晩中駐車していた大型クレーン車にバイクが追突した事故につき、路上駐車の理由(本来の保 管場所が遠く停めにいくのが面倒であった)が身勝手であったことも勘案し、駐車車両側に40%の過失を認めたケース(横浜地判平成2年3月27日 交民 23・2・377)

(2)夜間、駐車禁止場所に尾灯をつけずに駐車していた普通貨物自動車に、法定速度を時速10㎞オーバーで走行中の原付バイクが追突した事故につき、 駐車車両が過去にも同様の事故を起こしていたことをも勘案し、駐車車両側に35%の過失を認めたケース(東京地判平成3年9月24日 判時1412・ 130) などがあります。

いずれにおいても、裁判所は、駐車場所や時間帯、駐車にあたって非常灯点火措置をとっていたか、駐車の理由といった諸事情を、事案ごとに丁寧に検討したうえで駐車車両の過失を判断していることがわかります。

ご質問のケースも、夜間に大型トラックが無灯火で路上に駐車していた点で、駐車車両の駐車位置・方法が不適切であるために道路の交通の危険が著しく増大し、結果として本件事故が発生したといえる場合にあたると思われます。
したがって、ご質問者に前方不注意があるとしても、駐車車両側にも一定の過失が認められる可能性が十分にあるでしょう。

「参考文献」
潮見佳男『基本講義 債権各論Ⅱ不法行為法』新世社
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房
宮原守男・森島昭夫・野村好弘『交通事故判例百選第四版』有斐閣

Q

2年前に信号待ちで停車中に追突されケガをしました。事故自体は軽い追突で、ケガは頸椎捻挫とむちうち症候群です。ところが、私は通常より首が長く頸椎が不安定であるため傷害の程度が重くなり治療も長引いています。加害者は、治療が長引いているのは私の首が長いせいなので治療費の全額は支払わないと言っているようです。このような場合、治療費全額の請求はできないのでしょうか。

A

治療費全額を請求できると考えられます。

損害賠償制度とは発生した損害を当事者に公平に分担させることを目的とする制度です。
したがって、被害者側の原因・事情により損害が拡大した場合、これら被害者側の原因・事情を勘案して加害者の賠償範囲を限定することができるとされており、これを「素因減額」といいます。
一言で素因減額といっても様々な事情があるため、具体的な交通事故の事件を検討する上では、被害者側の1、心因的要、2、身体的疾患、3、身体的特徴、の3つの場合に分けて考えることが有効です。

(1)心因的要因によるもの
追突事故の被害者がむちうち症となった後に神経症を発症し、10年以上もの長期にわたって入・通院を繰り返し治療を継続したという事案があります。最高裁は、事故による損害が加害行為(事故)のみによって通常発生する程度、範囲を超え、かつ、損害の拡大に被害者の心因的要因が寄与している場合は、被害者側の事情を斟酌できるとしたうえで加害者の賠償範囲を限定する判断をしました(最判昭和63年4月21日 民集42巻4号243頁)。

(2)身体的素因の場合(事故前から疾患がある場合)
また、身体的素因に関しては、事故前から頸椎後後縦靱帯骨化症という疾患を有する被害者が、追突事故で頸椎捻挫、むちうち症の傷害を負い治療が長期化し、神経症状が残った事案というがあります。最高裁は加害行為(事故)と事故前からの疾患が共に原因となり損害が発生した場合、損害全部を加害者に賠償させるのが公平を失する場合は、賠償範囲を限定できると判断しています(最判平成8年10月29日 交民29巻5号1272頁)。

(3)身体的特徴の場合
これに対し、首が長く頸椎不安定である女性被害者が追突事故で頸椎捻挫となった事案で、最高裁は「被害者が平均的体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしてもそれが疾患に当たらない場合」には特段の事情なき限り加害者の賠償額を限定させるものでないと判断しました(最判平成8年10月29日 民集50巻9号2474頁)。

このように、裁判所は、被害者の心因的要因や事故前から有していた疾患により損害が拡大した場合は相応の賠償額限定を認め、疾患に至らない程度(身体的特徴の範囲内)であれば限定を認めないという判断基準を持っているといえます。ご質問者の「首が長く頸椎が不安定」という事情は標準的な体格からは外れるかもしれませんが、「疾患」ではなく、むしろ身体的特徴の範囲内と考えられるため、賠償額の限定は認められません。
したがって、治療が長引いたことによる増加分も含め、治療費全額の請求が可能と考えられます

「参考文献」
内田貴『民法Ⅲ債権各論』財団法人東京大学出版会
北河隆之『交通事故損害賠償法』(株)弘文堂
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房

Q

運転中に後続車に追突され助手席の妻が骨折し、1か月の入院、6か月の通院治療を余儀なくされ、この間、家事や子育てに従事できませんでした。妻は専業主婦で特に所得はありませんが休業損害を請求できるのでしょうか。

A

専業主婦も休業損害を請求することができます。

交通事故による受傷、治療のために就労できないという事態は現実にしばしば生じることであり、被害者の事故後の生活に大きな支障をもたらすものです。
このように、事故による傷害の治療のため仕事を休むことを余儀なくされ、その間収入を得ることができなかったことによる損害を「休業損害」といい、加害者に対して賠償を求めることができます。
休業損害は原則として、事故当時の収入に実際に休業した日数を乗じて算出されます。
つまり、就労所得者の場合には、年収額を基礎として一日当たりの収入額を算出し(この一日当たりの金額を「基礎収入額」といいます)、基礎収入額に休業日数を乗じて得られる額が休業損害額となります。
被害者が専業主婦など家事従事者の場合、給与や報酬といった現実の手取り収入はありません。しかしながら、家事労働も財産上の利益を生じ金銭的な評価が可 能ですから、受傷のため家事に従事できなかった期間につき、女子の平均賃金を基礎収入として休業損害が認められています(最判昭和50年7月8日・交民8 巻4号905号)。
具体的には、賃金センサス女性学歴計全年齢平均年収または年齢別平均年収を参考に、一日当たりの基礎収入額を算出し、これに休業日数を乗じた額とするのが多くの裁判例です。
ご質問のケースでは、上記賃金センサスを用いて算出される基礎収入額に、奥様の入院日数と通院のために家事に従事できなかった日数を乗じると休業損害額が算出でき、この金額を休業損害として加害者に請求することになります。
なお、奥様が家事従事できなかった期間に家政婦やベビーシッターなどの代替的労働力を利用し、支出があった場合、その支出額も事故による損害となります。 ただし、この場合、原則として奥様の休業損害額と代替的労働力への支出額とを比較し、高い方のみの請求が認められますのでご注意ください。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』㈱弘文堂
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房

Q

横断歩道を青信号で横断中、大量に飲酒したうえ赤信号を無視して突っ込んできた乗用車にひき逃げされ、大腿部骨折で入院・通院治療を行いました。治療後も股関節が十分に動かず、後遺障害等級認定も受けています。事故から半年後に加害者が捕まりましたが、私は事故により大きな精神的苦痛を被りました。加害者に対する慰謝料はどのように計算されるのでしょうか。

A

傷害慰謝料と後遺症慰謝料との2つに分けて計算します。

慰謝料とは、被害者が受けた損害のうち財産的損害を除くものをいい、具体的には精神的・肉体的苦痛による損害に対する金銭的な賠償を指します(民法710条)。
そして、事故のケガによる苦痛に対する慰謝料を「傷害慰謝料」、治療の結果残った後遺症の苦痛に対する慰謝料を「後遺障害慰謝料」と呼び区別しています。なお、事故によって被害者が死亡した場合には死亡慰謝料が発生します。
慰謝料は、苦痛という心の痛みを損害とするため、同じ被害にあっても人により痛みは様々であり慰謝料額には違いが出るはずです。しかし、人の内心を量るの は困難であり、また、事件ごとの不公平を避け、迅速に処理をする必要もあることから、実務では慰謝料の算定基準が目安として利用されています。なお、傷害 慰謝料の基準は、入・通院の期間を基礎として、後遺障害慰謝料の計算は、症状固定後に認定された後遺障害等級数に応じて作成されています。

一般に用いられている具体的な算定基準としては、
(1)自賠責基準、(2)任意保険基準、(3)裁判基準の3つがあります。
加害者側の損害保険会社は(1)または(2)を用いて慰謝料額を提案する場合が多く、(3)裁判基準に比して低廉であることが多いのが実情です。被害者としては (3)裁判基準を用い、具体的には日弁連交通事故相談センター東京支部編・損害賠償額算定基準(通称「赤本」)または、日弁連交通事故相談センター編・交通事 故損害額算定基準(通称「青本」)に記載の慰謝料額算定表を用い慰謝料額を計算するとよいでしょう。

また、傷害の部位や程度、手術による苦痛、被害者の社会・家庭内での地位、収入といった被害者側の事情、および、飲酒、ひき逃げや信号無視、警察での虚偽供述、被害者に対する著しく不誠実な態度といった加害者側の事情を考慮して慰謝料の増額が認められる場合があります。
ご質問の事案に関連する裁判例としては
(1) 加害者の飲酒による一方的過失であること、加害者の救護義務違反による逃走を考慮して慰謝料を増額したケース(東京地判平成15年4月24日交民36・2・563)
(2) 加害者の飲酒と救護義務違反に加え事故後に車両を塗装して事実を隠ぺいしたことを考慮して慰謝料を増額したケース(大阪地判平成19年7月26日自保ジ1723・6)
(3) 加害者が赤信号を無視して交差点に進入した認識がありながら青信号であったと虚偽の供述をしたため、捜査機関が10カ月間にわたり被害者を被疑者として扱い取り調べを行い、10カ月後にようやく加害者が起訴されたという事情を考慮して慰謝料を増額したケース(名古屋地判平成13年9月21日 交民34・5・1303) などがあります。
こうした事案を参考にしつつ専門家と相談して慰謝料額を計算されることをお勧めします。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』㈱弘文堂
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房
財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)2011年版』

Q

7歳の娘が信号無視の車にはねられ、重度の意識障害と四肢完全麻痺の後遺症が残りました。娘はもちろん両親もこの事故で大変苦しんでいます。死亡事故の場合は親も慰謝料請求ができると聞きましたが、このような重傷事故の場合、親は慰謝料を請求できないでしょうか。

A

ご両親も慰謝料を請求できると思われます。

民法上、不法行為の被害者の近親者(父母・配偶者・子など)が慰謝料請求権を取得する場合としては、被害者の死亡時のみが規定されています。したがって、被害者が生存している場合は、原則として近親者の慰謝料請求は認められないということになります(民法711条)。
しかし、たとえ命を取り留めても、通常の生活を失うほどの重度後遺障害を負った場合、家族の精神的苦痛は計り知れず、その痛みは死亡した場合に劣らないと いうのがごく自然な感情だと思われます。にもかかわらず近親者の慰謝料請求権を被害者死亡の場合に限るのはこうした人としての自然な感情に反するもので しょう。
そこで、最高裁は「近親者が、(被害者が)死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛を受けたと認められる」場合には、民法709条、710条にもとづ き、傷害事故の場合でも近親者が固有の慰謝料を請求することができると判断しました(最判昭和33年8月5日 民集12・12・1901)。
この事案は、オート三輪者と衝突した事故当時10歳の女児が顔面に著しい醜状痕を残し生涯にわたり治ることはないと診断された事案であり、被害女児を一人で育てていた戦争未亡人の母親に固有の慰謝料が認められたものです。
この最高裁判例をリーディングケースとして、その後の交通事故判例においても、(死亡事故でない)傷害事故の場合で死亡にも比肩すべき(劣らない程度の) 事情があれば、近親者の慰謝料請求権が認められています。なお、慰謝料額は裁判所の裁量で決められるものですが、過去の判例から、被害者自身の後遺障害が 重篤であるほど、近親者の慰謝料も高く認められる傾向がうかがえます。

(1) 後遺障害等級1級の裁判例
・ 脳挫傷後の後遺症の女子中学生(固定時15歳)・・・父母に各500万円の慰謝料を認める(金沢地判平成18年10月11日 自保ジ1705・2)。
・ 四肢不全麻痺等の兼業主婦(固定時45歳)につき・・・夫400万円、子二人各200万円、父母各100万円の慰謝料を認める(東京地判平成16年5月31日 交民37・3・675)。

(2) 後遺障害等級2級の裁判例
・高次脳機能障害等の男子高校生(固定時20歳)・・・父母各300万円を認める(大阪地判平成18年11月16日 交民39・6・1598)。

(3) 後遺障害等級4級の裁判例
・高次脳機能障害、味覚・嗅覚障害等の男性嘱託職員(固定時45歳)・・・妻に200万円を認める(京都地判 平成17年12月15日 自保ジ1632・5)。

(4) 後遺障害等7級の裁判例
・左下肢短縮による歩行障害等の72歳主婦・・・82歳の夫に100万円を認める(横浜地判平成6年6月6日 交民27・3・744)。

ご質問者は、わずか7歳の娘さんに意識障害・四肢完全麻痺という極めて重い後遺障害が残り、娘さんが死亡された場合に劣らない多大な苦痛を受けておられるものとお察しします。
加害者に対し、ご両親固有の慰謝料が請求できると考えられます。

「参考文献」
潮見佳男『基本講義 債権各論Ⅱ不法行為法』新世社
日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻』
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房

Q

脇見運転の車両に追突され、7年前に購入した国産ワゴン車のフェンダーとミラー、リアガラスが破損しました。ディーラーによれば、修理は可能だが、車を処分する際には事故車と評価され価値が下がるとのことです。事故がなければ価値の低下もなかったのですから、修理費だけでなく価値低下分も加害者に請求したいと思いますが可能でしょうか。

A

請求は難しいでしょう。

交通事故により被害車両に損傷が生じた場合、その修理費用を加害者に請求できる点に争いはありません。もっとも、損傷を完全に修理したとしても、事故歴・ 修復歴があるために車両の取引価格(交換価値)が下落することもあり、この価値下落による損害(事故当時の車両価格と修理後の車両価格との差額)を評価損 (格落ち損)といいます。
この点に関する裁判例は下記のとおり分かれていますが、車両初年度登録時からの経過期間、走行距離、損傷部位、車両の人気(稀有)度、購入価格、中古車市場での通常価格等が考慮要素になるとされています。

具体的な裁判例を見てみると、
(1)ベンツ560SEL、登録後約2年半、走行距離3万6610㎞、リアフレーム修正を要したケース・・・修理費の36%相当の97万1000円の評価損を認定(東京地判平成7年2月21日 交民28・1・223)。
(2)BMW735i、登録後4か月、走行距離5576㎞、本質的構造部分の損傷がないケース・・・修理費の30%相当53万8524円の評価損を認定(東京地判平成18年1月24日 交民39・1・70)。
(3)トヨタ・セルシオ、登録後3年弱、走行距離4万3000㎞、機能上の不具合が残るケース・・・修理費の20%相当33万余の評価損を認定(東京地判平成10年10月14日 交民31・5・1523)。
(4)トヨタ・クラウン、登録後2年以上、走行距離5万3000㎞超、左ドアミラー下等の損傷のケース・・・評価損の発生を否定(東京地判平成12年11月28日 自保ジ1406・6)。
(5)ホンダ・ステップワゴン、登録後2年10か月、走行距離3万8600㎞のケース・・・修理費の約20%相当16万5000円の評価損を認定(平成18年1月19日 交民39・1・40)。
(6)ランボルギーニ・ディアブロSE30(ランボルギーニ社創立30周年記念150台限定生産)、登録後10年以上経過のケース・・・希少性から愛好者間 の需要が高く転売価値があるため修理の30%相当208万2456円の評価損を認定(大阪地判平成19年2月20日 交民40・6・1694)。

これらの判例から、外国車または高級国産人気車種で、初年度登録から5年程度(走行距離6万キロ程度)、一般国産車で3年(走行距離4万キロ)程度を超 え、損傷部がフロントフェンダーやバンパー等一般に修理交換が容易といわれる部位に限られる場合には、特殊な車種(限定生産車)であるなどの特段の事情が ない限り、評価損が認められない傾向が見い出せます。
ご質問のケースでは、確かに事故車となり、取引価格(市場価値)の低下があるものと推察されます。しかしながら、国産ワゴン車で初年度登録から7年経過し ており、損傷部位も交換可能な部位である点を考慮すると、限定車であるため現在でも高額取引の対象車であるといった事情がない限り、評価損分の請求は困難 と考えられます。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』(株)弘文堂
財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)2011年版』

Q

乗用車に追突され右上腕を骨折しました。治療経過は順調だったため2か月で完治するという医師の言葉を信じ、事故の2か月後、2か月分の治療費と慰謝料を受領して示談しました。示談書には「被害者は、その他の請求を放棄する」とあります。ところが、示談の2週間後に突然右肘が動かなくなり再手術をし、事故による後遺障害等級12級相当の診断を受けました。示談の成立後には、再手術費用や後遺症に関する損害賠償を請求できないのでしょうか。

A

加害者に損害賠償を求め得る可能性があります。

交通事故における示談とは、一般に、加害者が被害者に対して一定の損害賠償額の支払いを約し、被害者はその一定額の支払いを受けとることでその他の請求を放棄し、当事者間で事件を解決する裁判外の合意を指し、通常は、民法上の和解契約(民法695条)に該当します。
これは争いを最終的に解決するために締結する契約ですから、いったん示談が成立した以上くつがえすことはできません。
したがって、示談内容に「その他の請求を放棄する」という記載(この記載を「権利放棄条項」といいます)がある以上、示談後に後遺症が発生しても追加請求はできないのが原則です。
しかし、交通事故による受傷で早期に示談をした場合、示談時には想定しなかった身体上のトラブルが事後に発生することもあり得るため、示談をした以上はいかなる場合でも追加請求はできないとするのは被害者にとって厳しい結論です。
そこで、最高裁は、権利放棄条項を含む示談後に予想外に再手術をし後遺症が残った事案において、示談後の追加請求はできないことを原則としつつも、「示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであって、その当時予想できなかった不測の再手術や後 遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない」と判示し、つま り、示談における権利放棄の対象は、示談当時に予想できた損害に限られると述べました(最判昭和43年3月15日 民集22巻3号587頁)。
そのうえで、同判例は「契約当事者の確認し得なかった著しい事態の変化により損害の異常な増加が後日に生じたとき」には増価した損害分に対して示談の効力は及ばず、示談後の賠償請求が可能であると述べ、示談後の賠償請求の途を開きました。
ご質問のケースでは、示談成立の段階では、医師から事故後2か月で完治すると説明されていたわけですから、その後、右ひじが動かなくなり再手術を余儀なくされたことや後遺障害の発生は、まさに示談時点では予想できなかった著しい事態の変化といえるでしょう。
そして、再手術と後遺障害認定により、手術費を含む入・通院治療費、交通費、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益等の発生が考えられるとこ ろ、ご質問者は示談によって事故後2カ月分、再手術前までの損害分しか賠償を受けていません。したがって、事態の変化によって損害が異常に増大したといえ る可能性が十分にあります。
したがって、本件においては示談成立後であっても加害者への請求の途があると考えられます。
もっとも、請求するにあたっては、右肘が動かなくなった原因が今回の交通事故にあること、および示談後の後遺症の発生を示談当時には予想できなかったこと を被害者側が証明しなければなりません。これらは医学的・専門的な内容であり、通常、立証は容易ではありませんので、お早めに専門家にご相談されることを お勧めします。

「参考文献」
瀬川信久・内田貴『民法判例集債権各論第二版』有斐閣
内田貴『民法Ⅱ 債権各論』財団法人東京大学出版会
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房
北河隆之『交通事故損害賠償法』弘文堂

Q

一家の大黒柱である夫が交通事故に遭い、長期入院しています。加害者は夫にも過失があると主張し示談が進みません。収入が途絶え生活にも困る状況ですが、示談成立前に賠償金などの金員を受領する方法はないでしょうか。

A

自賠責保険による仮渡金請求と内払い請求や、その他各種制度による金員受領の可能性があります。

本来、損害賠償とは、加害者の責任の有無や責任の程度、賠償金額が確定してから事後的になされるものです。
しかしながら、加害者が責任内容を争うことも実際によくあることであり、また損害額の認定に時間を要することもあります。したがって、賠償額の確定を待っていると被害者が現実に支払いを受けられるまでの期間が長期化する恐れがあります。
他方で、事故による受傷の場合、治療費、付添費など不時の出費がかさむうえ、大黒柱の入院等により収入が途絶えたちまち一家が困窮するケースも少なくありません。
こうした場合は、まず自賠責保険の「仮渡金請求」や「内払い請求」の利用が考えられます。

(1)仮渡金の請求
仮渡金の請求とは、交通事故の被害者の当座の出費にあてる目的で、自賠責保険に被害者自らが直接に支払いを求めることをいいます(自賠法17条)。
仮渡金の金額は、死亡の場合は290万円、傷害の場合はその程度に応じて 5万円、20万円、40万円のいずれかと一律に定められており、請求は一回限りです。なお、仮渡金を請求権者は被害者のみで、加害者は請求できません。

(2)内払金の請求
また、傷害による損害に限っては、被害者が治療継続中のため損害額の総額が確定しない段階でも、既に発生した損害額が10万円を超える場合に上限額 (120万円)に達するまで、10万円単位で内払い金を請求できます。仮渡金と異なり、上限額に達するまでは何度でも請求できますが、死亡事故には適用が ありません。
なお、内払い金は、加害者が被害者に現実に治療費を支払っている場合に限り、加害者からも請求できます。
仮渡金、内払い金のいずれについても、最終的に損害額が確定した段階で清算が行われます。すなわち、請求により受領した金額が確定した損害額よりも少なけ れば残額が被害者に支払われ、逆に受領金額が確定した損害額を超えていれば、超過分を自賠責保険に返還する必要があります。

(3)その他の請求方法
上記のほか、加害者加入の任意保険会社に対して休業損害分を請求することが考えられます。示談前であっても、休業損害については保険会社が支払いに応じる場合があるため請求を考える価値があります。
また、ご自身が加入されている健康保険による傷病手当制度、さらに、業務上・通勤途上の事故であれば労災保険の休業補償給付や休業特別支給金を受け取れる可能性もあります。
そして、近年では、ご自身または家族が加入する自動車保険に人身傷害補償特約が付帯している場合が増えています。この特約を利用して迅速な支払いを受けることもぜひ検討すべきです。
交通事故の被害者となった場合、相手方の自賠責保険や任意保険への請求がまず思い起こされるところですが、各種の公的給付や、ご自身・ご家族の加入されている自動車損害保険も意外に大きな頼りになるものです。
なお、これらの方法はそれぞれに条件や請求方法が異なり、また、制度間の調整も行われていますので注意が必要です。
ご質問の事案も、当面の生活費を確保する緊急の必要があります。加害者の自賠責保険・任意保険への支払い請求に加え、ご主人やご家族の加入される各種制度内容を調べ、支払い請求をぜひともご検討ください。

「参考文献」
北河隆之『交通事故損害賠償法』㈱弘文堂
加藤了・大嶋芳樹・羽成守『交通事故の法律相談全訂版』学陽書房
永塚良知『交通事故事件処理マニュアル』新日本法規

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