マーケティング活動の一環として宣伝広告活動を行うことは企業にとって日常茶飯事だと思います。
テレビ広告、WEB上のリスティング広告、SEO活動、ブログ更新等々様々な手法で自社や自社の商品について宣伝広告をすることになります。
しかし広告は売上向上や認知向上に大きな効果があるだけに、その使い方に気をつけないと企業にとって致命傷となることがあります。

先日こんな記事を読みました。
「脳力トレーニング」の効果が認められずサービス提供企業に約2億円の罰金処分が下される

記事のタイトルを読んだときには一瞬、日本でもこんなに消費者行政が進歩したのかとびっくりしたのですが、アメリカの話でした。

脳の能力を高めるとして提供されている脳力トレーニング関連のゲームは数多くあり、人気を集めているのですが、アメリカ連邦取引委員会はあるサービスを提供していた企業に対して「科学的裏付けがない」として200万ドル(約2億4000万円)の罰金処分を下しました。処分が下された企業は、罰金の支払いに応じる姿勢を見せています。(http://gigazine.net/news/20160106-lumosity-charged-for-brain-training-program/より)

http://gigazine.net/news/20160106-lumosity-charged-for-brain-training-program/より

http://gigazine.net/news/20160106-lumosity-charged-for-brain-training-program/より

この記事によると

1 処分を下されたのは、能力トレーニングプログラム「Lumosity」を提供しているLumos Labs(今もサービスは提供しているようですね)。
2 連邦取引委員会が処分を下した理由は「科学的に認められた効果が存在しないにもかかわらず、Lumosityにはユーザーの仕事や学習を向上させ、年齢に伴う脳の認知能力の低下およびその他の重大な健康上の問題の発生を遅らせる効果があると広告でうたい消費者を欺いた」というもの。

もし日本で企業が同じような広告をした場合には「不当景品類及び不当表示防止法」(景表法)違反該当性が問題になります。
今回は、企業(特にオーバーな広告をしてしまいがちなベンチャー企業)が景表法について必ず知っておいて欲しいことについて記事にしました。

■ 景表法とは

先ほど述べたように、もし日本でLumos Labsのような広告を打った企業がいた場合には「不当景品類及び不当表示防止法」(景表法)違反に該当するかどうかの問題となります。
景表法が対象としているのは大きく分けると
1 景品規制
2 表示規制
の2つです。
このうち1の「景品規制」は今回は関係なくて、問題は2の「表示規制」。
これは簡単に言うと「実際のもの等より著しく優良又は有利であると誤認される表示(不当表示)を禁止する」という規制です。
平成25年の食品偽装問題などが記憶に新しいと思います。
そしてこの「不当表示」には3つのパターンがあるのですが、今回問題になるのは「優良誤認表示」です。

先ほどの脳トレは、記事を前提とすると「Lumosityにはユーザーの仕事や学習を向上させ、年齢に伴う脳の認知能力の低下およびその他の重大な健康上の問題の発生を遅らせる効果がある」という広告をしていたようです。
ですので、当然この広告の裏付けがなければ「実際のもの等より著しく優良であると誤認される表示」(優良誤認表示)に該当し、景表法違反ということになります。

■ 消費者庁からある日突然来る「合理的根拠根拠を示す資料を提出せよ」

で、消費者庁が「これは不当表示の可能性がある」と判断した場合、当該企業に対して「この表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出せよ」という要請をすることになります(景表法4条2項)。
驚くのは企業に求められる回答期限です。
なんと「表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出期限は、公正取引委員会が当該資料の提出を求めた日から、原則として十五日後とする。」とされているのです(不当景不実証広告規制に関する指針(平成15年10月28日 公正取引委員会)
15日以内に提出しなければアウト。
わずか15日間ですから、資料の提出を要請されてから調査をするというのでは全然間に合いません。
なぜこのように短期間に設定されているかというと「一定の効能効果を謳う広告をする以上は、当然それに先だってその効能効果の裏付資料は確認しているはず。であれば、すぐに資料を提出できなければおかしい。」と考えられているためです。

■ 資料を提出できないとどうなるか

で、消費者庁からの資料提出要請に応じなかったり、あるいは応じたはいいが消費者庁から「これは合理的な資料とは言えない」と言われてしまった場合にどうなるかですが、景表法違反に基づく措置が消費者庁からなされることになります。
措置の具体的内容は悪質度合に応じて異なるのですが、最も重い措置は「排除措置命令」です。
消費者庁により排除措置命令が出された場合、その具体的内容は消費者庁のページに「景品表示法関連報道発表資料」としてさらされて掲載されてしまいます。

たとえば、平成27年12月11日には、株式会社ダスキンに対して排除措置命令が出されているようです。
この命令の内容を見てみましょう。

要は、「室温の上昇を抑える!最大-5.4℃空調効率アップ!」などの宣伝文句で、遮熱・UVカット性能をうたう窓用フィルムの施行サービスを提供していたが、実際にはフィルムにはそのような断熱機能がなかった、というものです。

消費者庁資料(http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/151211premiums_1.pdf)より

消費者庁資料(http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/151211premiums_1.pdf)より

消費者庁の該当資料によると、このケースでも消費者庁はダスキンに合理的な根拠を示す資料資料の提出を求めています。そしてダスキンはそれに応じて資料を提出したようですが「その資料は合理的な根拠を示すものではない」とされてしまったようですね。
このケースでダスキンに命じられた命令の具体的内容なのですが「自社が景表法違反の広告を出していたことを速やかに一般消費者に周知徹底せよ」というものです。
結構きついですね。

実際にダスキンがこの命令に従って出したものがこちら(2016年1月24日には新聞広告にも掲載されているようです)。

国民生活センターの該当ページ(http://www.kokusen.go.jp/recall/data/s-20160124_1.html)より

国民生活センターの該当ページ(http://www.kokusen.go.jp/recall/data/s-20160124_1.html)より

■ 広告を作成するときに必ず守るべきこと

広告については、実は沢山の法規制やガイドライン、自主規制があります。
ここで全てを紹介することはしませんが、今回紹介した景表法は広告に関する法規制の最たるものです。
ある日突然消費者庁から「合理的な根拠を示す資料を提出せよ」という通知が来てから慌てても遅いのです。効能効果を謳う広告をする場合には、かならずその効能効果の裏付け資料を手元に確保するようにしてください。

この「資料」も何でも良いというわけではありません。
たとえば「効果を感じた少数のユーザーからのアンケート結果」などでは全然話になりません。
・ 試験・調査によって得られた結果
・ 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献
のいずれかである必要があります。
詳細は、先ほど紹介した(不当景不実証広告規制に関する指針(平成15年10月28日 公正取引委員会) )を参照してください。
かなりきちんとした資料がなければならないことがわかるはずです。

■ まとめ

・ 広告には様々な法規制や自主規制があることを知る。
・ その中でも景表法の内容については必ず押さえておく必要がある。
・ 一定の性能を謳う広告をする場合には、それに先だって必ず合理的な裏付け資料を確保しておくべき

弁護士柿沼太一

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