コンテンツ(イラスト,映像,原稿,ウェブサイト)の制作を依頼したり受けたりする場合,著作権の取扱いをきちんと決めておかないと,トラブルの種になります。
コンテンツ制作委託契約書のひな型を紹介します。作成に関するご相談は当事務所までお問い合わせください

【注意事項】
・ 自己又は自社内でのビジネスのための利用は問題ありませんが、それ以外の利用及び第三者への転送を禁止します。
・ 契約書雛型についてSTORIAはいかなる保証もおこなわず、雛型の利用に関し一切の責任を負いません。
・ 雛型に関する著作権その他の一切の権利はSTORIAに帰属しており、雛型の利用の許諾はかかる権利の移転を意味するものではありません。


コンテンツ制作委託契約書

______を甲、_____を乙とし、甲乙間において、●●(仮称)制作に関し,以下の通り契約する。

第1条(コンテンツ制作及び引渡)

乙は、別紙構成素案記載のコンテンツ(以下「本作品」という)を制作し、契約期限(以下「納期」という)までに甲に引き渡す。

甲が乙に対して委託する業務を明確にしています。
この契約では「制作」を目的としていますので,このように本文中に委託業務の内容を記載していますが,委託業務が多岐にわたる場合には「別紙」で業務の内容を記載することもあります。

第2条(仕様)

乙は、甲が作成・交付する別紙構成素案及び甲の指示に基づいて本コンテンツを制作する。

コンテンツ制作に関しては「何を」「どのように」制作するかについても,このように「仕様書」のような形で合意するのが通常です。

第3条(納期及び制作代金)

本コンテンツの納期及及び制作代金は次のとおりとする。
(1) 納期   平成  年  月  日
(2) 制作代金    万     円(消費税込み)

第4条(制作代金に包含されるもの)

前項の制作代金は,以下の対価を全て含むものとする。
(1) 本コンテンツの制作に関する対価(制作に関する実費等も全て含む)
(2) 本コンテンツの著作権譲渡及び著作者人格権不行使に関する対価

制作代金に何が含まれているのかという点も明記する必要があります。
基本的には「制作」「著作権譲渡」「著作者人格権の不行使」に対する対価ということになります。
ちなみに,制作委託契約の場合には独禁法・下請法との関係についても注意する必要があります。この点については公正取引委員会がガイドライン(「役務の委託契約における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」)を出しています。
詳細はガイドラインを参照して頂きたいのですが,この中でも「成果物等に係る権利の譲渡又は二次利用の制限に対する対価を別途支払」う,あるいは「当該対価を含む形で対価に係る交渉を行っていると認められるとき」には原則として優越的地位の濫用の問題とはならないとされています。
独禁法や下請法が適用されるような取引の場合には注意が必要ということです。

第5条(受領検査)

 甲は,乙が持ち込んだ本コンテンツについて受領前に検査(以下「受領検査」という)を行う。
2 前項の受領検査に合格しなかったときは,乙は遅滞なく代品を納入し,若くは無償で修正するものとする。

第6条(制作代金の支払方法)

第3条に定める制作代金について,本コンテンツが受領検査に合格した後,甲は乙に対し,10日以内に乙の指定する銀行口座に対して振込む方法で支払う。

第7条(著作権の帰属)

乙は甲に本件コンテンツに関する一切の著作権(著作権法27条及び28条の権利を含む)を譲渡する。
2 乙は甲または甲が指定する第三者に対し著作者人格権を行使しないものとする。
3 前項に定める著作権譲渡の効果は,第6条に定める金員の支払い時点に発生するものとする。

1 1項について

著作権法上,お金を支払った人が当然に著作権者となる訳ではありません。
基本的には「創作者=著作者=著作権者」です。
したがって,発注者がお金を支払っただけでは著作権は当然に発注者に移転するわけではありません。そのお金は成果物の所有権移転や,著作物の創作作業に対する対価に過ぎない,と解釈される可能性があるためです。
したがって,契約書上,明確に「著作権は発注者に譲渡されるものとする。」と記載しておかなければなりません。この時にさらに注意すべきポイントが2つあります。
1つは「著作権法第27条及び第28条に規定する権利」を明記することと,もう1つは、どこの権利までを移転するかを明確にする,ということです。

ア 「著作権法第27条及び第28条に規定する権利」を明記すること

まず,譲渡に関する条項を記載する際には「著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)は発注者に譲渡されるものとする」とする必要があります。このように「(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)」とわざわざ記載しなければならないのは,著作権法61条2項という条文があるからです。
 これは「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」という条文です。つまり「「(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)」と契約書に記載しておかないと,著作権法第27条及び28条の権利は移転しない,ということを意味しています。
著作権法第27条及び28条の権利というのは,「翻案権」と,「二次的著作物の利用に関する権利」です。要するに二次的な著作物の創作や利用に関する権利ですから,この権利が移転しないと,発注者のビジネスとしては相当な制約を受けることになります。くれぐれも注意してください。

イ どこの権利までを移転するかを明確にする

 実際に締結されるのは,創作された著作物の全ての権利を制作者から発注者に移転するというパターンの契約ばかりではありません。
 制作者が著作物を制作する場合,もともと制作者が著作権を持っていたオリジナルコンテンツや,第三者から利用許諾を受けているコンテンツを利用して制作をすることもあります。
 制作者側としては,自社のオリジナルコンテンツの著作権は自社に留保しておきたい,と考えるところですし,第三者が著作権者であるコンテンツについてはそもそも著作権譲渡が出来ません。そこで,著作物のうち,一定の著作物の権利は譲渡しない,それ以外は譲渡する,など,「著作物のどの部分,どこの権利が移転するか」を明確にしておく必要があるのです。

2 2項について

 これは,「著作者人格権の不行使条項」と言われる条項です。著作者に与えられる権利には「著作(財産)権」と「著作者人格権」の2種類があることはご存じだと思います。そして,このうち「著作者人格権」については,一般的に譲渡も出来ないし,相続も出来ない,放棄も出来ない,とされています。とすると,仮に契約書でバチッと「著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)は発注者に譲渡されるものとする」と規定したとしても,著作者人格権は著作者のもとに残ってしまう,ということになります。
 そこで「著作者人格権の不行使条項」を設けることが必要となるのです。

第8条(下請の禁止)

 乙は,本契約に定める義務の履行を乙以外の第三者に請け負わせることはできない。

第9条(第三者の権利侵害)

乙は,本契約書に定める業務の遂行により第三者の著作権,知的財産権その他の権利(以下「著作権等」という)を侵害しないことを甲に保証するものとする。
2 乙は本著作物に含まれるその他の各権利者(出演者,作家,監督,主催者など)の権利処理を,自らの責任と負担において行うものとする。万が一それら権利者と甲との間での法的紛争が生じた場合には,乙は,第3条に定める制作代金を甲に返還すると共に,甲に生じた損害を賠償し,それに加えて当該紛争解決に要する費用を負担する。

制作者が著作物を創作して発注者に納品する場合,当該著作物が制作者の完全オリジナルであればよいのですが,第三者の著作物を無断で利用している場合があります。
それを知らずに発注者側が納品を受け,当該著作物を利用しはじめたところ,「著作権侵害だ」としてクレームを受けるというケースはよくあります。
私が関与したケースでも,ある地方公共団体がイラスト制作会社のイラストを無断利用して観光用の資料等を制作・配布していたというケースがありました。私がイラスト制作会社の代理人として警告書を発したところ,当該地方公共団体は,ある旅行代理店に資料作成を委託し,当該旅行代理店はさらに下請業者に資料作成を委託していた,ということがわかりました。
もともとは,無断利用していた下請業者が一番悪いのですが,この場合でも,資料を複製して納品したあ旅行代理店や,資料を複製してHPに公開したり各所に配布した地方公共団体が著作権侵害の責任を問われることになります。
それを完全に防ぐ方法はなかなか難しいのですが,制作者に「第三者の著作権等の権利を侵害しないことを保証する」旨契約書で明確にして貰うのが一つの方法です。また,同じく,第三者からクレームがあったときの処理責任や費用負担についても,制作者負担としておくことが実務では多いです。ちなみに,先ほどの地方公共団体の事件,地方公共団体ではなく,旅行代理店が全面的に責任を認めて賠償金を支払いましたが,地方公共団体と旅行代理店との契約書にこのような条項があったのでしょうね。

第11条(相殺)

甲は,乙が甲に支払うべき金銭債務がある場合には,乙に支払うべき代金と相殺することが出来る。

第12条(解除)

甲は、他の当事者が次の各号の一つに該当したときは、本契約の全部又は一部を解除することができる。
① 乙の責に帰する事由(乙の資産信用が著しく低下した場合も含む)により,納期までに乙がこの契約の全部又は一部を履行する見込みがないとき
② 乙が本契約上の義務に違反したとき
③ 乙の資産信用が著しく低下したとき
④ 乙が差押、仮差押又は仮処分を受けたとき
⑤ 乙の振出、裏書、保証にかかる手形又は小切手が不渡になったとき
⑥ 乙につき、破産、民事再生、特別清算、会社更生手続開始のいずれかの申立があったとき
2 前項の各解除事由が生じ,甲が解除権を行使した場合には,乙は受領済の金員について直ちに甲に返還する。

第13条(秘密保持)

甲及び乙は、本契約に関連して知り得た他の当事者の技術上・経営上の一切の秘密を、他の当事者の書面による承諾がない限り、第三者に漏洩又は開示してはならない。

第14条(その他)

本契約について定めのない事項及び甲乙間に紛争又は疑義が生じた事項については,その都度甲乙協議して定めるものとする。

第15条(裁判管轄)

甲及び乙は、本契約に関して紛争が生じた場合には、被告の本店所在地を管轄する裁判所を第1審の専属合意管轄裁判所とすることを合意する。

本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙それぞれ各1通を保管する。

平成●●年●●月●●日
(甲)所在地 ●●
社名  株式会社A
代表者 甲野乙男
(乙)所在地
社名  B株式会社
代表者 丁原一夫