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民法 著作権

経営者なら押さえておくべき法律10選

杉浦健二 杉浦健二

総務省によると、日本に法律の数は1950個あります(平成27年8月1日時点)。
経営者なら押さえておきたい法律を10個選んでみました。

2015-09-15 15.15.46

■民法

・契約は口約束でも成立する(契約書は契約成立を裏付ける証拠に過ぎない)
・他人の借金を保証するのは自分で借金するのと同じ
・お金を貸しても数年経てば消滅時効にかかる
こういった取引の基本ルールは、すべて民法に書いてあります。

民法は近年中に大改正が予定されてますが、上記の基本ルールは変わりません。特に契約の原則や連帯保証、不法行為あたりは、いっぱしの社会人なら知っておくと大怪我せずに済みますので、優しめの本を一冊読んでおくとよいのでは。

■著作権法

他人のサイトをどこまで真似してよいのか、他人が撮った写真を無断使用していいのか、新聞記事は引用すれば無制限に使用できるのか(無制限ではない)などなど、ネット時代ではもはや必須の法律となりました。15分でわかる著作権の基礎はこちらです。とりあえずの入門書ならこれを読んどきましょう。かなりおすすめです。

■会社法

会社の作り方から、経営権を奪われないためには株式を何%キープしておく必要があるのか(3分の2以上持っていれば安心)、会社が株式を買い取る場合の手続など、会社の経営者なら嫌でも覚えざるを得ない法律。
この本には受験時代にお世話になりました。

■特定商取引法

昔は訪問販売法と呼ばれてました。インターネットで物を売買する場合(通信販売)は、直接会って取引する場合よりもトラブルが多くなる傾向にあるので、事業者が守るべきルールを定めて利用者を守ろうとした法律です。
ネット通販をする場合は、サイト上に必ず「特定商取引法に基づく表記」を設けておく必要があります。あとエステや語学学校、学習塾などの特定の業種についてはクーリングオフ(契約の無条件解除)が認められています。消費者庁のガイドが詳しいです

■労働基準法

労働者は弱者という前提で作られた法律なので、労働者が圧倒的に保護される内容になっています。解雇は極めて限定された場合にのみ認められますし、残業代は平時時間給の125%増し、深夜なら150%増しになる事実を知っていれば、おいそれと従業員の残業を増やそうとは思わなくなります。

労働裁判においては一般に会社が不利な立場となるケースが多いです。その結果、最も働いている経営者の手取りが会社で一番少なかったなんて笑えないケースも出てくる。就業規則などを整備して、労使双方が納得のいく環境づくりは会社成長に欠かせないところ。実務家であれば、この論点体系シリーズはかなり良いです。

■倒産法(破産法,民事再生法,会社更生法)

取引先が危なくなったときに、自社が修めた商品は引き揚げてよいのか?借金のカタに物を持ち帰って(代物弁済)よいのか?取引先が破産したらいくら返ってくるのか?など、取引先の倒産は自社に与える影響が大きいです。
いざというときにうやむやにされないために、倒産法(特に破産法。倒産法という名前の法律はなく、倒産関連法をまとめてこう呼びます)も押さえておくべき法律でしょう。入門だとこれが分かりやすいです。

■刑法(刑事訴訟法)

経営者が痴漢と間違えて逮捕されたら会社が倒産します。
逮捕されて取調べを受けても、黙秘権があるので喋りたくなければ黙っててもOKです。
逮捕された場合、1回だけ、誰でも無料で弁護士を呼ぶことができます(当番弁護士)。
接見禁止がつくと家族や友人は面会できませんが、弁護士なら必ず会うことができます。
何をやると犯罪になるか(刑法)、どういう手続きで取調べや勾留がされるのか(刑事訴訟法)。経営者なら知識教養として押さえておきたいですね。

■景品表示法

ウソ・大げさ・まぎらわしいを規制する法律。
自社の商品をよく見せたいがために、合理的な根拠がない効果・効能を広告などで表示すると、不当表示として景品表示法違反となります(優良誤認表示)。「大学合格実績No.1」「古紙100%」など、広告でうっかり使ってしまう表現には要注意。消費者庁ガイドラインが分かりやすいです。

■不正競争防止法

自社のロゴや商品名とよく似たものを他社が使用していた場合、ロゴや商品名を商標登録していれば、商標権侵害として差止請求ができます。商標登録していなくても、自社のロゴ等に周知性や著名性があれば、同法に基づき使用を差し止めることができます。また不正な方法で営業秘密を奪われた場合にも、この法律に基づけば、民法などによる場合よりも少ない要件で損害賠償請求が認められます。さらに近年のIT化による情報漏えいの多発に鑑み、平成27年7月、罰則が強化されるなどの法改正。懲役10年以下、法人の場合罰金の上限が5億円まで上げられました。

■下請法

下請業者の保護が目的の法律です。一般製造業からIT系まで、下請方式は広く採用されてますが、下請法を知らない経営者の方は意外と多い。
下請法では
・納品日から60日を超えて代金を支払わない
・発注時に決めた代金を後で減額する
などは双方の合意があっても違法になります(下請業者の保護目的)。

違反すると罰金のみならず公表までされるケースもあるため、会社が受けるダメージは大きい。特に将来IPO(株式上場)を考えたい事業者にとっては、下請法違反があると上場の障害となり得ます。中小企業庁のポイント解説下請法が分かりやすいです。

■まとめ

会社を作って株主と役員を誰にするか決めて(会社法)、取引先の未払いに備えて契約書を作っておき(民法)、下請業者には納品日から60日以内に代金支払うように注意する(下請法・自社が親事業者にあたる場合)。
自社サイトには特商法に基づく表示をきちんと定めて(特定商取引法),サイトデザインが無断で使用されてたら警告書を送って(著作権法等)、サイトには過剰な実績書かないように注意する(景品表示法)。
従業員が無断で顧客リストを持ち出さないよう営業秘密を管理して(不正競争防止法)、残業代ルールも整備して(労基法)、万が一従業員が逮捕されたら当番弁護士を無料で呼んで手続の説明してもらう(刑法等)。そして万が一自社が破産した場合でも,個人なら手元に99万円まで残せると知っておく(破産法)。

会社の活動には、常に法律がついてまわります。トラブルになってから弁護士に相談するよりも、最低限の法律は経営者自身が押さえておくのが、最も効果的かつ低コストな予防法務なのでした。